金閃業祓
黄金の弾丸を自身に打ち込んだアルジャバ・グナプーニャ。眼は銀一色のままだが、その体は黄金色に輝いている。
「借りるぜ、ペトラ……貴重品だが、緊急事態だからなぁ?」
打ち込まれた黄金の弾丸。それは、金閃の異名を持つペトラ・アウラディウスの力を弾丸に込めたものだった。
「さぁて、制限時間はきっかり三分……ソッコーで終わらせてやるよッ!」
空から追いかけてきたイシャシャとエフィン。しかし、アルジャバは体から迸る黄金のオーラだけでそれを退けると、魔物達には目もくれずネクロの元へと走った。
「殲滅してる時間はねぇ、頭を潰しゃぁ、それで終いだ」
「ん、速いね?」
背後から迫る黄金のオーラに振り返るネクロ、守るように立つエトナとメト。
「凄い力だね。記憶が正しければ、見たことがある力だけど……それが君の本気なんだね。僕を殺す気かな?」
「あぁ、これはお前が倒したペトラの力だよ。そんで、オレはお前を殺す気だよ」
「元々荒い口調が更に荒くなってるよ」
「ハハハッ、天醒弾の効果だろ? これ使うとハイになるんだよ。ついでにお目目はギンギラギンだ」
そうみたいだね、とネクロは笑う。
「さぁて、時間がねぇんだ。一瞬で終わらせてやるよ」
「あはは、本当に良いのかな? ランタラがどこに行ったか、気にならない?」
アルジャバの笑みが、消えた。
「……何が言いてェ」
ネクロはにこりと微笑む。
「ランタラは、そこだよ。一応言っとくけど、まだ生きてるから安心してね」
「そ、こ……?」
ネクロが示した先には、大きな金属の球体が埋まっていた。メトが作り出したものだ。あの球体の中に、ランタラはいる。
「どうする? やろうと思えばあの球体をグチュっと潰して殺すことも簡単だよ。
ネクロが言うと、メトが手を翳し、球体がざわざわと蠢く。
「……人質かよ」
アルジャバが苦渋の表情で言う。
「あはは、そうだね。でも、いきなり襲いかかってきた君たちに責められる謂れは無いね」
「……分かった。どうすれば、いい?」
問いかけるアルジャバにネクロが答えようとした瞬間、空に浮かぶ天聖騎士団達が目の前の相手を全て無視して無理やりネクロに向かい始めた。
「んー、もう一人の執行官は同僚の命が大事じゃないらしいね」
ネクロが手をあげると、スケルトン達が集合し、ネクロを守るように骨の嵐となって渦巻く。天聖騎士達はそれに阻まれ、ギリギリで動きを止めた。
「────アージャ、全ては任務が優先です。ランタラは諦めて下さい」
天聖騎士の殻を破り、アロマが現れた。
「なっ……お、おいッ、自分が何言ってるのか分かってるのかよッ!?」
「貴方こそ、自分が何を言ってるのか分かっていますか?」
アロマはアルジャバの前までツカツカと歩いた。
「我ら救済執行官は任務が第一。人命はその次です。そもそも、あの球体の中にランタラが居るかすら定かではありませんし、ここで投降したところでランタラも貴方も無事で済む保証はありません。というか、高確率で無事ではすみません」
「……それは、そうかも知れねえが」
アロマはアルジャバに顔を近付ける。
「ランタラは、残念でした。犠牲があったとしても、我々は先に進む義務があります。アージャ、もう時間は少ないのでしょう? 一気に終わらせますよ」
「…………分かった」
アルジャバは頷き、銀色の目をネクロに向けた。
「ランタラの意思は、オレが継ぐ。救済を、執行するッ!」
「えぇ、行きましょう。アージャ!」
ネクロは溜息を吐き、自分の影に視線を落とした。
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