Player vs Player

 二本の蒼い剣を構えるチープ。それに合わせて横のオデュロッドとアクテンも杖を構える。


「んじゃ、試合開始だ」


 誰が動くよりも先に、チープが駆けた。


双斬撃波クロス・スラッシュウェーブ


 チープを双剣をクロスして構え、双剣から斜め十字の光の斬撃を放った。


「……小手調べのつもりか」


 シンが一歩前に出て片手を前に出すと、黒い壁が出現し、斬撃波スラッシュウェーブを防いだ。


「あぁ、小手調べだ。双斬撃クロススラッシュ


「お前のことは知っている。チープ、合刃クロスを使え」


 シンの剣に黒いオーラが纏わり付き、振り下ろされる双刃を受け止めた。


「なんだ、知ってんのか。合刃クロス


「ぐッ」


 チープはがら空きのシンの腹部に蹴りを入れながら飛び退くと、二つの蒼い剣を合わせ……融合した。現れた一つの両手剣は神々しい蒼の輝きを放っている。その輝きは闘技大会の時よりも遥かに強い。




 その戦闘を横目にレヴリスとクロキリはお互いにやるべきことを理解し、実行しようとしていた。


「私とクロキリは先に後衛を潰すのですっ!」


 レヴリスとクロキリの気配が消えた瞬間、地面に現れた魔法陣からわらわらと土と石の混じったゴーレムが出現する。


変地創兵クリエイトゴーレム多重召喚マルチプルサモン雑塊兵ミックスゴーレム


 淡々と詠唱するのは、チープの背後にて控えるアクテンだ。


「……召喚術は厄介ですけど、私には関係ないのです」


 透明化しているレヴリスはゴーレム達の間をすり抜けていき、あっさりと術者のもとまで辿り着く。


「さよならなのです」


 短剣を振り上げるレヴリス。その華奢な腕に緑色の何かが絡み付いた。


「させないですよ、レヴリスさん。貴方のことは聞いていたので……当然対策もしてあります」


 絡み付いたそれは、オデュロッドの手から伸びた蔦のような植物だ。


「……オデュロッドですか」


「おや、僕を知っていますか? それは光栄」


 アクテンを守るように立ったオデュロッドの手から伸びる蔦。それが急激に成長し、レヴリスの全身に絡まろうとする。


「そんなのが通用すると思わないで欲しいのですっ!」


 レヴリスの全身から紫色の炎が噴き上がり、全身に絡み付こうとする蔦を燃やす。


「それは残念……それと、そっちも気付いてますよ」


 オデュロッドが種を取り出して上に弾くと、それは空中で急激に成長し、太い蔦となって背後から迫るクロキリを掴んだ。


「……意外に厄介なのです」


「当たり前ですー、ていうか……舐めすぎですー」


 ここまで黙っていたアクテンが手を振り上げると、地面から巨大な土と石の混じった腕が出現した。


「少なくとも……私が用意した環境で負ける気はないのですー」


 アクテンが手を振り下ろすと、それに連動するように土の腕も振り下ろされた。




 シンがチープと斬り合い、レヴリスとクロキリが戦闘を繰り広げる中、異常な数のゴーレムに囲まれている残りのメンバーの多くは苦い表情を浮かべていた。


「チッ、面倒だな……」


「だるいね……数だけは一丁前だ」


「そうですね〜」


 だが、反対にやる気を見せているものも居た。


「数だけの雑魚は俺に任せろっ!」


「我も対多数は得意だ。護衛さえいればな」


 蛮蛮漬けとヴェルベズだ。異常な持久力を持つ彼と、圧倒的な殲滅力を持つ彼女ならば雑魚の殲滅は確かに簡単だろう。


「じゃあ、護衛は俺がやってやる」


「僕はシンの援護をしようかな。一人じゃ流石にキツそうだし」


「私はバフと応援を頑張りますよ〜」


 ズカラが名乗りを上げたのを皮切りに陣形が出来上がっていく。ヴェルベズとふよよんが後衛、ズカラがそれの護衛。蛮蛮漬けが壁役で、ブレイズはシンの援護だ。


「じゃあ、行くぞおおおおおぉおおおおッッ!!!」


 スイッチが入ったらしい蛮蛮漬けが真っ先にゴーレムの群れに突っ込んでいく。前でそれを抑えていたブレイズは彼と代わり、シンの方へと走っていく。




 各々が自分の役割に沿って行動する中、一対一で斬り合っていたチープはシンの剣を弾くと、フッと一息吐いて剣を斜めに掲げてじっくりと見た。


「そういえば……最近、漸くこの剣の力の根源を知ったんだよ」


「……力の根源?」


 聞き返すシンに、チープは頷く。


「あぁ、根源だ。一応偽装してるが……この剣、神器だからな」


「……神器、だと?」


 問いかけるシンを無視して、チープの体を青い光が包んでいく。


「『蒼神の加護ブレス・オブ・アズール覚醒アウェイク』」


 迸る蒼い光にシンの表情が驚愕に染まる。


「……アズールの加護」


「ん、知ってんのか? 俺だってこの剣について態々調べてから祠を見つけて漸く知ったって程度なのによ。物知りだな」


 神々しい蒼のオーラを放つチープをシンは油断なく睨み、答える。


「……アズールは古き神の一柱だ。それも、滅びた神のはずだ」


「おいおい……マジで知ってんのか」


 素直に驚いた様子を見せるチープに、話を続けるシン。


「あぁ、確かにこの時代にはあまり伝わっていない神だが、それでも知っている。それに……古き蒼の神、その伝説は有名だろう」


「あれですらアズールって名は載ってなかったはずだが……ま、時間稼ぎにはだいぶ付き合ってやったぜ。そろそろ良いだろ?」


 覚醒状態が終了するまでの時間稼ぎ。その目論見は最初からバレていたらしい。


「……随分、余裕だな?」


「あぁ、余裕だぜ? だってこっちには神様が付いてるからな」


 チープの合体した両手剣が蒼く光った。

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