浮かぶ赤色

 ♦︎……レヴリス視点




 カルブデッドと別れたのは良いのですが、どうやらやられてしまったっぽいのです。というか、私の居る班以外は結構やられちゃってるのです。


「リーノさん、まだ気配は無いですか?」


「……無いですね。全く感じません」


 むぅ、不思議ですね。さっきまでは普通に魔物が居たはずなんですけど……どこかに逃げていったみたいに居なくなってしまいました。


「ま、いんじゃね? 敵が居ないならそれに越したことは無いっしょ」


 呑気そうに言ったのはケイルです。聖職者のフリをして突如襲いかかるのが趣味で、ヒールされて感謝を受け取った後に首を刎ねた時の表情が大好きらしいです。


「素直には喜べないのです。いきなり魔物がいなくなるなんて、普通はありえないです。だから、多分なにかの狙いがあるのです」


「考えすぎじゃねーの? 俺みたいな脳カラには分からねー」


 阿呆丸出しで言い放つケイルですが、彼の勘は馬鹿にならない部分があります。


「そうかも知れませんけど……そうじゃないかも知れない以上、警戒はすべきなのです」


「ふーん、そういうもん? ま、難しいことはレヴリスちゃんに任せるわ」


 特に食い下がりもせず、ケイルは納得しました。こういう物分かりの良さも彼の美点の一つでしょう。


「……もうすぐ塔に着くな」


 と、そこまで黙っていたタキンが口を開きました。言われてみれば、今まで遠くにあった塔がもう近くまで迫っています。


「うーん……まさか、ここまで何事もなく来れるとは思っていなかったのです」


「じゃあ、早速行っちゃう?」


 軽いノリで尋ねるケイルですが……どうしましょうか。


「……そう、ですね。行きましょう!」


 迷っていてもしょうがありませんし、塔に入りさえしなければ良いでしょう。


「取り敢えず、塔の近く。出来ればあの壁の内側まで行きます。そこでしばらく待っても増援が来なければ入りましょう。壁の内側に居る敵は処理が可能なら倒します」


 そう提案し、ゆっくりと塔に近付いていきます。


「……れ、レヴリスさん!」


 索敵役のリーノが止まり、私の名前を大声で呼びました。


「竜ですッ!! 竜がッ、ドラゴンが居ますッ!」


 リーノが示した指の先には……赤い赤い、大きな竜が飛んでいました。

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