つよいどらごんのつくりかた
諦めた様子の赤竜……ディアンは嫌そうにしながらもグワリと体を起こした。
『では、行くぞ』
僕は即座に頷いた。すると、ディアンの周りから赤い炎が噴き出し、それは彼の巨大な体を包み込んだ。更に続けて、ディアンを隠した巨大な炎の中から真っ赤な光が溢れる。
『……出来たぞ』
炎が吹き飛び、光が収まると、そこには赤い高貴そうな布の服を着た美丈夫が立っていた。身長は二メートル程あり、肌は少し浅黒く、顔立ちは異常なまでに整っている。
また、髪と目の色は綺麗な真紅だ。
「おぉ……なんていうか、イケメンだね」
「イケメンが何かは知らぬが、満足したならもう我は元に戻るぞ」
ダメだけど。
「イケメンは顔が良いってことだよ」
言いながら、僕はディアンをいろんな角度から見て回る。
「……おい、気持ち悪いからやめろ。もう我は戻るぞ」
「あはは、ごめんごめん。この赤い服、高級そうだけど、本物なのかなって見てたんだ。これ、人化すると勝手に現れるの?」
「今はそうだが、最初は服など無かったな。使っていく内にこういうことも出来るようになったのだ」
へぇ、じゃあ、人化のスキルレベルが上がれば出来るようになるって感じかな。
あ、当然だけど僕たちやこの世界の人間は人化を習得出来ないよ。元々人間だからね。
「ついでに言うが、最初の炎も最初は無かった。あれは、最初は何となくやってみたんだが、
「あはは、君も意外と人との関わりがあったんだね……って言っても、称号の時点である程度は察してたけどさ」
赤い服の裾を捲り、腕の筋肉を確かめる。すると、本物同然の立派な筋肉が出来ていることが分かる。
「おい、貴様! さっきからベタベタと触り過ぎだぞッ! もう良い加減に我は元の姿に戻るからな!」
「あはは、ごめんごめん。でもさ、この筋肉って本物なの? 触ってみた感じ、感触に違和感は無かったんだけど」
僕が聞くと、ディアンは律儀に答え始めた。
「この体は虚像ではなく、ただ体が変化したものだ。元の体の強さを元にこの体は作られているからな。この筋肉も本物と言って良いだろう」
「へぇ、凄いね。じゃあ、人化の体って言うのは自分の好きなように作れる訳じゃないんだ」
「当たり前だ。そんなことが出来るならば、巨人にでも変身しておるわ」
確かにね。それに、人間社会に溶け込む上でも好きな姿になれるって結構悪用できそうだし。
「……もう戻るからな」
ディアンが疲れたような顔で言うと、さっきと同じようにディアンの体を炎が包み込み、眩い光が放たれた。
『ふぅ、全く。ろくでもない奴を主にしてしまったな』
「失礼だなぁ」
あっさりと竜の姿に戻ったディアンに僕が心外そうに呟くと、ディアンは僕をギロっと睨んだ。
『……我の体をベタベタ触っておったお前の方が失礼だろう』
触診だよ。触診。
「じゃあ、御託はさておき本題に入ろうか」
『貴様、よくその口で言えたなァ!』
その姿で迫られると怖いからやめてよ。一口でパクっていかれそうだから。
「まぁまぁ、落ち着いてよ。君ってさ、欲しい力とかあるかな?」
『欲しい力? そんなものは無いな。何故なら我は竜。偉大なる赤竜。この世に生まれし時から至高にして最強。既に完成した存在だからだ』
フンス、と鼻息を立てて踏ん反り返る赤竜。
「じゃあ、何で僕たちに負けたのかな? 一度負けた時点で君は至高でもなければ最強でも無いよ」
『ぐぬぬ……あれは、貴様らが圧倒的な数で我を襲ったからだろう』
「そうだね。敗因はそうだ。だけど、それがどうしたの? 数を集めることも、仲間を増やすこともまた一つの力だ。だから、幾ら個として強くてもそれで負けたら最強ではないよ」
まぁ、種族としてドラゴンが最強に近い存在なのは認めるけどね。
『…………パッと思いつくものは無い。ただ、貴様らに負けたのはあの耐久力の異常なオークや巨人を殺せなかったこと、袋叩きに耐えきれなかったことが敗因だと考えている』
「つまり、攻撃力と防御力だね」
単純で良いけど、逆に難しいかも。
「まぁ、君くらい元から強いステータスを持ってる子なら、そこに倍率をかけられるバフが一番良いような気もするよね」
僕が知る限り単体では最もステータス増加の合計倍率が高く、INTなどにも依存しないスキルがある。ただ、それも例の如く巷では割とクソスキル扱いされているものだ。
「巨大化、かな」
それは100SPを消費して取得できるスキルで、効果は単純。その名の通り巨大化することが出来るのだ。その強化倍率もかなり強力で、AGI,MP,INTを除く……つまり、HP,STR,VIT,MNDを全て1.5倍することが出来るのだ。因みに、体の大きさも1.5倍だ。
これだけ聞くと、割と強力なスキルに思えるかも知れないが、残念。このスキルには落とし穴があるのだ。
先ず、体の動かし方に結構な違和感が生じる。これは割と致命的で、近接職なら殆どまともに戦えなくなるレベルらしいが、まぁこれに関しては訓練して慣れさえすれば問題無い。
次に、動きが相対的に遅くなる。上のと少し似ているが、これに関しては実際に動きが鈍くなっている。別にこのスキルはAGIを下げる効果がある訳では無いが、体は大きくなっているのにAGIは変化していない為、相対的に元より動きが遅くなるのだ。
最後に、当たり判定だ。当然のことだが、体が大きくなるので敵の攻撃にも当たりやすくなる。だが、敵からすれば使用者は動きが鈍くなっているので、攻撃を避けやすくなる。あと、体が大きくなるので死角も増える。
「だけど、元から体が大きいドラゴンならあんまり問題無いと思うんだよね」
巨大化は負けフラグなんて言うが、それは元々は小さい奴が大きくなる時が殆どで、元から大きな奴が更に巨大化するのはあまり見たことがない。
というか、巨大化は負けフラグって言うのはそもそも巨大化を使うキャラクターが敵陣営ばっかりだからだろう。主人公陣営で巨大化するようなキャラはかの有名な光の巨人くらいだ。
まぁ、冗談はともかく、元から大きいドラゴンならば更に大きくなったところでそこまで違和感を感じにくいだろうし、あれだけ大きければ攻撃範囲はかなり広くなるので、動きが多少鈍くなっても問題無いだろうと判断した。
「だから、三倍になろうね。ディアン」
『む?』
言い忘れていたが、ディアンに取得させる巨大化はSLv.3だ。330SPも吹っ飛ぶが、大きさもステータス倍率も三倍である。
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