赤竜の話

 と、イシャシャの紹介を終えた所で、山の方から赤い竜が飛来してきた。隣でオデュロッドが固まっている。


『我を呼んだか、主』


 風を撒き散らしながら、ズドンと轟音を立てて着陸した赤竜はフンスと鼻を鳴らしながら問いかけた。


「うん、呼んだよ。君を強化しようと思ってね」


『強化だと?』


 眉を顰めた赤竜に、僕は頷いた。


「そうだよ」


 短く答えると、赤竜は無言になった。


『……強化出来るならそれに越したことは無い、が。それで我が不利益を被ることは無かろうな?』


「多分無いよ。ていうか、そういうのを一々確認するって、意外と竜ってみみっちいんだね」


『みみっちい訳ではないッ! 貴様は油断ならん男だからな……念の為に確認しているだけだッ!』


 まぁ、別にいいんだけどね。


「じゃあ、早速だけどステータス見るね」


 僕は目の前の赤竜に解析スキャンをかけた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 Race:赤竜レッドドラゴン Lv.91

 Job:──

 Name:ディアンファラ・ルビレリオン

 HP:1540

 MP:1020

 STR:521

 VIT:518

 INT:439

 MND:487

 AGI:353

 SP:900


 ■スキル

 □パッシブ

【HP自動回復:SLv.8】

【MP自動回復:SLv.7】

【威圧:SLv.5】

【気配察知:SLv.5】

【火属性親和:SLv.3】

【状態異常耐性:SLv.3】


 □アクティブ

吐息ブレス:SLv.8】

【爪術:SLv.7】

【火魔術:SLv.5】

【咆哮:SLv.5】

【人化:SLv.3】


 □特殊スキル

赤竜レッドドラゴン

灯火の女神の力イトラ・セルバディエン・フォース


 ■称号

『称号:親愛なる火竜フレンドリー・フレイム

『加護:灯火の女神の加護ブレス・オブ・イトラ・セルバディエン


 ■状態

【従魔:ネクロ】

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 うわぁ……やばいステータスしてるね。HP四桁って、化け物じゃん。


「スキルは思ってた程多くないけど、SPは900か」


 成竜になってからはかなりレベルが上がりにくくなるドラゴンにしては高いレベルだ。流石、長生きしてるだけはあるね。


「取り敢えず、どこから弄ろうかな……ていうか、名前長いね。なんて呼べば良い?」


『む? 何でも良いが、ディアンと呼ぶ者は多かったな』


 オッケー、ディアンね。


「そういえば、人化ってあるけど、ドラゴンはみんな出来るの?」


 もしかしてマグナも出来るのかと思い、聞いてみたが、竜は首を振った。


『古に結ばれた竜と人との盟約。その影響を受けし者は例外無く人化を持っている。我も詳しくは知らぬが、盟約の影響下にある竜は人の姿にも成れるということだ。まぁ、近頃は一切使っておらんがな』


「へぇ、なんか凄いね」


 よく分からなかったので、僕は適当な返事を返した。


『まぁだが、格の高いドラゴンは人化を使えるものは多いな』


「じゃあ、ワイバーンとかは使えないの?」


『少なくとも、ワイバーンが人化したという話を聞いたことは無いな。恐らく自然に人化を習得するのは無理だろう』


 ふうん、なるほどね。


「じゃあ、一回人化してみてよ」


『断る。人化するのは疲れるのだ。それに、人化する理由もないというのに何故態々弱体化せねばならんのだ』


「……どうしても?」


『当たり前だ。貴様の興味の為に何故そこまで付き合ってやらねばならんのだ』


 残念。竜が人化する瞬間ってどんな感じか気になってたのになぁ。


「まぁ、しょうがないから諦めるよ。清くね。清く諦めるから、そろそろ次の話にしようか」


 僕は溜め息を吐いて、話を変えることにした。


「どういう力が欲し……人化するとこ見せてよ」


『話変わっておらんぞ』


 竜が呆れたような声で言った。どうやら、諦めきれない僕のテイマーとしての心が無意識に人化を求めていたらしい。


「あのさ、話が進まないから早く人化してくれないかな」


『騙されんぞ貴様。さっきの流れからして絶対に次の話と人化は関係無かろうが』


 ぐぬぬ、バレてる。


「……主としての力を使うしか、無いのか? でも、僕は無理やり命令するなんて、そんな……ッ!」


『……もう、分かったわ。人化してやるから黙れッ!』


 よし。


「お、ホント? じゃあ、人から竜に戻る姿もセットでお願いね」


『貴様なぁ……』


 竜はまた呆れたように息を吐いた。

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