魔の島、魔改造。
拠点の設営や島の防衛に関して色々と用事が済んだ僕は、漸くそこを訪れることが出来た。
「と、ここですね。僕は終わるまでここら辺の罠を再調整しておきますので……終わったらチャットで教えて下さい」
「うん、ありがとね。ご苦労様」
いえいえ、と手を振りながら森に消えていくのはオデュロッドだ。彼には、この海岸まで罠を避けるための付き添いとして付いてきてもらっていた。
「さて……調子はどうかな? みんな」
そして、ここに来た目的。それは、この海岸に纏めて放置していた魔物達のスキル振りだ。色々と忙しくて放置してしまっていたが、殆どがアンデッドということもあり特に問題なく過ごせていたようだ。勿論、光耐性くらいは流石に付けてある。
「にしても、凄い数居るね……これは、骨が折れそうだよ」
海岸に置いていた魔物の数は、ぱっと見でも百は下らないだろう。
「まぁでも、その分この島が強くなるってことだからね。パパッとやっちゃおうか」
僕は取り敢えず、一番最初に目に入った明らかに全身が猛毒で出来ている紫色のスライムのステータスを開いた。
♢
そこそこの時間が過ぎた頃、漸く全ての従魔のスキル振りが終わった。
「あー、本当に疲れたよ。でも、結構な戦力増強にはなったね」
海岸には、元の倍は厄介になった魔物達が並んでいる。中々良い感じだ。
「ネクロさん。終わったと聞いて来ましたが」
「あ、うん。終わったよ」
背後から声を掛けたのはオデュロッドだ。
「それは良かったです。因みに、どんな強化を施したんですか?」
「んー、そうだね……」
どんな強化、か。
「まぁ、特に強い子の中から紹介すると……ヴェノムスライムのエノムとか」
この子はスライムであることから想像出来るかも知れないが、アンデッドでは無い。
「この子は、名前の通り猛毒を持ってる……ていうか、体全身が猛毒のスライムなんだ」
「勿論、存じてますよ。ヴェノムスライムの毒液は罠にも使えますから」
流石、罠のスペシャリストだ。なんでこの人、職業罠師じゃないんだろう。
「それで、毒性を除けば基本的にはグリーンスライムと同じ性質を持つヴェノムスライムなんだけど、取り敢えず弱点を消した」
「……えぇと?」
困惑したように眉を顰めるオデュロッドに微笑み、僕は言葉を続けた。
「グリーンスライムは斬撃とか火に弱いでしょ? だから、耐性スキルを取らせたんだ」
「……そういうことも出来ますか」
まぁ、ここら辺はミュウの時と同じだよね。
「うん、出来るよ。それで続きだけど、耐性の他にも跳躍をSLv.3まで上げて機動力を確保して、MPとINTが高めだったから幻術と魔力術に透過魔術を取得させて色々と応用が効くようにしたよ」
「……幻術が使える透明なヴェノムスライムって結構恐ろしいと思うんですけど?」
うん、結構恐ろしいよ。跳躍による一瞬での離脱と元々高い耐久を合わせれば、基本死なないだろうしね。
「幻術に加えて【擬態】も付けてるから、初手は絶対に取れるんじゃないかな」
「猛毒確定の先制攻撃を仕掛けてくるただのスライムって最悪ですね」
そうだね。少なくとも敵にはしたくないよ。
「あと、気配察知と気配遮断も取得させたから更に有利に戦闘を仕掛けられると思うよ。少なくとも、事故ることは無くなると思う」
まぁ、エノムは頭が良いっぽいから幻術も使いこなしてくれるでしょう。
「あと、エノム以外にも勿論強い子は居るけど……面白い性能をしてるのは
僕が言いながら魔物の群れの奥に居た彼を呼び寄せると、オデュロッドは知らないとでも言うように首を傾げた。
「
結構多い例を言えば、敵を斬り足りなくて成仏出来なかったとかだね。
「それで、この子の能力なんだけど……まぁ、基本的には当たり判定が小さくて剣が巧いって感じだね」
布に包まれた体は黒く濃い霧のようなもので出来ており、下半身は無く、鈍い銀色の剣が黒霧の腕に掴まれているだけだ。
一応、眼らしい紫の光はあるものの、その頭部を顔だと判断するのは難しい。
「取り敢えず、僕なんか比にならないくらいの剣術を持ってる彼なんだけど……暗殺者的な感じで不意打ち主体に育成することにしたんだ」
「……えぇ」
だって、カッコいいじゃん。亡霊のアサシンって。それに、気配も希薄で足音も無いしね。
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