チープメッセージ
あれからスラム街一歩手前の街を抜けた僕たちは海岸に向かい、人に見つからないようにウルカの背に乗って……というか、僕以外のみんなを
途中、海の魔物や船を見かけたが、魔物はウルカが一瞬で片付けたし、船に関しては霧を出してもらっていたので見つかってはいないと思いたい。まぁ、見つかっても最悪問題無いけど。
「わっ、思ったよりも良い島ですねっ! 中身は魔物の気配で一杯ですけどっ!」
「マスター、多くの魔物に囲まれる危険性がありますので、念の為に他の従魔も出しては如何でしょうか?」
そう、ここは見た目だけは美しい島だ。山を中心とした少し大きめの島であり、鮮やかな緑色の葉が生い茂り、木々が風で騒めき、小鳥の歌がそこら中から聞こえてくる。山からは滝も流れており、そこから川のようになって海へと繋がっている。
「うん、そうだね。
だが、エトナとメトの言う通りここは危険な島だ。美しいだけの島じゃない。なので、僕はロアとアースを呼び出しておくことにした。
「グォ」
「キュウ」
挨拶代わりに鳴き声を上げる二匹に、僕は頷いた。
「良し、じゃあ早速探検しよう……っと、ゴメン。ちょっと待ってね」
突然、システム音が脳内に響いた。メニューから見るとメッセージが届いていた。
『チープ:大丈夫か? 色々、厄介そうなことになってるみたいだが』
チープだ。恐らく、例のPK集団のことを言っているのだろう。
『ネクロ:シルバーブラッドのことかな?』
『チープ:おう、それだそれ。噂に聞いたが、結構ヤバそうじゃねえか。外部からも戦力を集めてるって話もあるしな。アイツらっつーか、あそこのボスのレヴリスは一切油断して無いぞ。寧ろ、慎重すぎるレベルでお前を追い詰めようとしてる』
『ネクロ:あー、うん。そうみたいだね。僕も仲間から聞いたよ。ゴロツキ連中を集めてる、みたいな』
『チープ:よく知ってるな。まぁ、当事者だから当たり前と言えば当たり前か。だが、集めてるのはゴロツキだけじゃねえ。色々とプレイヤーにも声をかけてるみたいだぞ』
『ネクロ:そっか。まぁでも、あんまり多過ぎると島に全員渡ってくるのは難しいと思うけどね』
『チープ:島?』
『ネクロ:うん。僕らは島で籠城戦というか防衛戦というか、まぁ、そうしようかなって思ってるんだ。無人島だから、特に誰にも迷惑はかからないしね』
『チープ:あー、まぁ、守りの手段としては悪くないだろうが、流石にシルバーブラッドが可哀想になるな』
『ネクロ:大丈夫だよ。今日、ちゃんと伝えて来たから』
『チープ:……そうか。因みに、どうやって伝えたんだ?』
『ネクロ:普通に拠点っぽいところまで行って、中に居た人に伝言を頼んで来たよ。襲ってきたけど、勝ったよ』
『チープ:……はい』
『ネクロ:何その反応。まぁ、取り敢えず僕は大丈夫だから、心配しなくて良いよ』
『チープ:助けは要らんか?』
『ネクロ:うん、大丈夫だよ。従魔以外に頼るほど困っては無いからね』
『チープ:あー、言い方を変えるわ』
『ネクロ:ん?』
『チープ:俺も混ぜてくんねぇか?』
あはは、そういうことね。
『ネクロ:うん、勿論良いよ。寧ろ、有り難いね。ただ、島の位置は送るけど、移動手段は自分で用意できそう?』
『チープ:あぁ、それに関しちゃ大丈夫だ。青い旗を目印にしとくから、近付いても攻撃すんなよ』
『ネクロ:おっけー、分かったよ』
『チープ:おう、ありがとな。じゃあ、また島で会おうぜ』
と、そこでチャットは終了した。
「良かったね。味方が増えたよ」
「お、本当ですか? それは良かったですね! まぁ、必要あるかは分かりませんけど」
確かに、既に十分な戦力は整ってるからね。
「まぁ、それはさておき……今度こそ、島の探索と行こうよ」
僕は言いながら、緑に包まれた島の内側へと踏み出した。
「あ、ネクロさん。止まってください」
瞬間、僕は首根っこを掴まれた。
「そこの地面、魔物が居ます」
僕を後ろに戻したエトナがナイフを目の前の地面に向かって投げると、地面から砂と同じ色をしたチンアナゴっぽい魔物が飛び出してきた。頭にはナイフが突き刺さっている。
しかし、サイズは鰐程大きい上に、その頭はチンアナゴのそれではなく、ウツボのように凶悪な口を持っていた。恐らく、自分の上を通ったものをバクリと食ってしまうのだろう。
「……そういうの、先に言って欲しかったかなぁ」
「えへ、すみません。でも、間に合ったからセーフですよねっ!」
うん、なんかもうそれで良いや。
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