爆ぜる猿の王

 それから、メトの力を借りて爆猿王をテイムした後、他の爆猿たちも降伏してきた……というか、メトを新たな王と崇めて騒いでいたようだったが、テイムの枠を無闇に埋めるのは賢い選択では無いので、テイムはしないでおいた。


「じゃあ、見てみようか。解析スキャン


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 Race:爆猿王 Lv.57

 Job:──

 Name:ギンキィ・クノム

 HP:312

 MP:389

 STR:357

 VIT:263

 INT:357

 MND:291

 AGI:402

 SP:560


 ■スキル

 □パッシブ

【HP自動回復:SLv.4】

【MP自動回復:SLv.3】

【統率:SLv.2】

【気配察知:SLv.2】


 □アクティブ

【爆発魔術:SLv.4】

【爪術:SLv.3】

【火魔術:SLv.2】


 □特殊スキル

爆ぜる猿王ブラスト・サーンジュ


 ■状態

【従魔:ネクロ】

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 なるほど、AGI以外はそこそこ貧相なステータスだね。ただ、STRとINTが完全に同じっていうのは珍しいね。別のゲームっぽくなるけど、両刀型でも作れば良いんだろうか。


「うーん、そういえば君の戦い方をまだ見てないから……取り敢えず、この子と戦ってみてよ」


 僕が言うと、ギンキィ・クノムは首を傾げた。誰と戦えばいいか分からないからだろう。だが、その相手は今から呼び出される。


召喚サモン・ワイト、召喚サモン・デュラハン」


 僕の目の前に、薄皮が張り付いただけの骸骨が召喚され、その隣に甲冑を着た首の無い騎士が現れた。

 骸骨はボロ切れを身に纏い、骨の杖を持っており、騎士は大きな剣を片手で持ち、ぽっかりと空いた首からは青い炎が噴き出している。

 この召喚呪文は、死霊術のSLv.6とSLv.7で解放されるものだ。


 それと、デュラハンは問題ないがワイトは陽の光でダメージを受けるので、インベントリから帽子を取り出して頭に被せておく。一応、服も着ているので一回の戦闘くらいなら余裕で持つだろう。


「オッケー? この二人が相手だよ。君たちも、この猿の王様が敵だよ。分かったね? じゃあ、行くよ?」


 三体とも頷いたので、僕は少し離れて合図を出すことにした。


「よーい……始め!」


「ウキィィイイイッ!!」


 開始と同時に、爆猿王が二体のアンデッドに飛びかかる。


「ォォォ……」


 それを見たデュラハンが、ワイトの前に出て爆猿王を受け止める。


「ウキィッ!」


 デュラハンの大剣と激突した爆猿王の拳は赤く輝いており……当然、爆発を巻き起こした。


「ォォォ……」


 後ろに仰け反り、爆風に押されるデュラハン。しかし、決して倒れることはなく、ワイトを守るように立ち塞がり、再度剣を構えた。


「カタカタ」


 と、その隙に呪文を完成させていたのか、骨の杖を掲げるワイト。すると、その杖の先から魔法陣が複数展開され、三つの闇の槍が同時に放たれた。


「ウキィッ!」


 しかし、爆猿王はそれを物ともせず、地面を起点に小さめの爆発を起こし、その爆風を利用して飛んで避けた。そのまま、爆猿王は木の上に登る。


「ォォォ……?」


 木々の間に隠れ、姿を消した爆猿王に困惑したような声を出すデュラハン。


「カタカタッ!」


 葉の中に赤く何かが輝いている。それを見て、ワイトが叫びながら杖を掲げた。


「ウキィィイイイッッ!!!」


 木の中から爆風を伴って爆猿王が飛び出してきた。明らかにワイトを狙った軌道で飛んでくるが、その速度は咄嗟に対応できるようなものではなく、デュラハンはワイトを庇おうとするも間に合わない。


「ウキィッ!」


「カタカタッ!」


 飛び出すよりも先に爆猿王を見つけていた甲斐もあり、ギリギリでワイトの前に闇の壁が現れる。眩しい程に赤く輝く爆猿王の拳はその壁に直撃し、凄まじい爆発を巻き起こす。

 当然、壁は破壊され、その向こう側に居たワイトも数メートル離れた木まで吹き飛ばされる。


「ォォォ……ッ!」


 地面を大きく抉り、木々を揺らすような爆発と爆風。しかし、近くにいたデュラハンはそれにも耐えながら一歩踏み出し、剣を振り上げる。


「ウキィッ!」


 振り下ろされる大剣。しかし、爆猿王はそれを両手の爪を伸ばしてクロスさせて受けた。剣が赤く光る爪に触れると同時に爪を起点に爆発が巻き起こり、デュラハンは体勢を崩しながら一歩下がってしまう。


「ウキィィッ!!」


 その隙を逃さぬように突き出された爆猿王の拳が、デュラハンの胸に突き刺さる。


「ォォォォォォッッ!?」


 甲冑に当てられた拳は赤く光っており、それにデュラハンが気付くと同時に、爆ぜた。


「ォォォ……ォォ……」


 甲冑の胸に大きな穴が開き、そこから青い炎が勢い良く吹き出す。


「ウッ、ウキィッ!?」


 その炎に焼かれ、ダメージを負いながらも飛び退く爆猿王は警戒したようにデュラハンを見る。しかし、胸に大穴を開けられたデュラハンはもう限界を迎えており……膝を突き、大剣を抱きながら消えていった。


「ウ、ウキィ……ウキィッ!?」


 安心したように息を吐く爆猿王。しかし、その背中に三本の闇槍ダークランスが迫る。それにギリギリで気付いた爆猿王だったが、足元から生えた無数に生えた闇の腕に足を縛られ、避けられない。


「ウキッ、ウキィ……ウキィッ!」


 上体を反らして避けようとするが、三本の内の一本は肩に深く突き刺さってしまう。怒りの形相でワイトを睨みつける爆猿王は、足元を爆発させて闇の腕を吹き飛ばす。


「ウキィィィィイイイイイイイイッッ!!!」


 怒り狂った様子で爆風を利用してワイトに飛びかかる爆猿王。


「カタカタ」


 しかし、それを読んでいたかのように空中に放たれた闇槍ダークランスは、爆猿王の胸に突き刺さり、貫いた。


「ウキッ! ウッ、ウキィィイイイッ!!!」


 しかし、流石はエリアボスと言ったところか、胸に穴を開けられても怯むことなく、着地と同時にワイトに爆発を叩き込んだ。


「カタ……カタ……」


 デュラハンの消えた場所を見ながら、申し訳無さそうに消えていくワイトと、荒く息を吐きながら胸に空いた穴を忌々しげに見つめる爆猿王。


「……まぁ、あれだね。身体性能は高そうだけど、脳みそが残念」


 全体的に、不注意とか油断が多すぎるし、動きが単純だね。まぁでも、デュラハンとワイトが意外と使えるっていうのは分かったよ。


 僕は溜息を吐き、スキル構成を考えることにした。

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