炎熱樹林
チリチリと燃える木々が、降り頻る雨と鬩ぎ合っている。
「ネクロさん、蒸し暑いです」
「そうだね……でもまぁ、そういう場所だし」
ここは炎熱樹林と呼ばれる場所で、熱帯雨林的な性質を持つらしい。そして、目の前で燃え盛っている木々はこのエリアに生息している
まぁ、名前から察することが出来る通り、爆発を操れる魔物という訳だ。
「……ん? あぁ、ウルカ? うん、そうだね。おぉ、凄いね。おめでとう。……うん、アスコル達にも伝えといてね。うん、ありがと……じゃあね」
「急にどうしたんですか? ネクロさん」
突然虚空に向かって話し出した僕だが、勿論独り言ではない。
「ウルカと話してたんだよ。取り敢えず、今はテストとしてアボン荒野に行って貰ってるんだけど……初めてプレイヤー……じゃなくて、次元の旅人を倒したらしくてね。嬉しそうにしてたよ」
話によると、アスコルとかボルドロを助けたって話らしい。ファインプレーだ。
「んー……ウルカって、確かクラーケンでしたよね? アボン荒野なんかに放したら、流石に死にませんか? そもそも、地上ですよ?」
「うん、クラーケンだよ。でも、ゾンビだから地上でも特に問題は無いね。彼らは呼吸を必要としてないから」
だが、それは地上で生存できるかどうかというだけの話だ。
「それに、ウルカには色々スキルを付けてるから……アボン荒野でも問題無く動ける筈だよ。まぁ、それが出来るかのテストって意味もあったんだけどね」
僕の言葉に、エトナはシラっとした目を僕に向けた。
「……どういうスキルを使えばクラーケンがアボン荒野で動けるんですか」
「環境適応」
僕は短く答えた。
「他にも、悪食とか伸縮自在とか幻の霧とか……色々付けてるよ」
御馴染みのステータス増強手段である悪食に、文字通り体を自在に動かせる伸縮自在。
それと、体全体から霧を放出して霧の中の景色を自在に操り、幻を見せることができるスキルだ。また、ウルカは体が大きいので霧の放出量も多いっていうのもある。
ただ、幻の霧は知ってる人は知ってるスキルだし、目の前の敵がいきなり霧を放出し始めたら大体は距離を取るから、普通ならあんまり強力なスキルじゃない。
だけど、ウルカなら地中から伸縮自在で十六本の触手を伸ばして敵を囲むように霧を放出していけば、確実に霧の中に敵を入れることが出来る。
霧の中にさえ入れてしまえば、暗視があっても真っ暗な世界を作り出したり、感触も操れるからまるで壁に囲まれているように錯覚させたり、好きなように敵を屠ることが出来る。
まぁ、プレイヤーの痛覚遮断を超えて痛みを与えることは流石に出来ないけどね。
「……あ、スキルと言えば、私まだSPを使ってもらってません。師匠が来たせいで有耶無耶になったままになってますよ」
「あー、そうだったね。じゃあ、今振ろうか? メトも」
周りを見た感じ、敵は居なそうだし。
「え、今ですか?」
「現在付近に敵対生物は居ませんので、大丈夫かと」
ほら、メトのお墨付きもあるし。
「いや、大丈夫かどうかって言うか、落ち着いた状態で考えたかったんですけど……まぁ良いです。どのくらい溜まってますか?」
えーと……おぉ、結構溜まってるね。
「エトナは110SPで、メトは120SPだね」
レベルで言うと、エトナが71でメトが63なのでそこそこの差はある。
「じゃあ、どういうスキルが良い?」
僕が聞くと、真っ先にメトが手を挙げた。
「私は、あのスキルが欲しいです。次元の旅人の方々が良く使う、一瞬で数歩先に移動するスキルが」
「あぁ、
「それと、明らかに世界の法則を無視して跳び上がるあのスキルも欲しいです」
「はいはい、
僕は二つのスキルを取得し、それぞれSLv.2まで上げた。これで60SP消費だ。
「んー……私は、スキルを強化したいです。闇魔術で分身を出せるようになりたいんですけど……いけますか?」
闇魔術の分身、恐らくSLv.10で使えるようになる
「今のエトナのスキルレベルが8だから……80足りないね」
SLv.8からSLv.10まで上げるのに必要なSPは190、そしてエトナが今持っているSPは110。つまり、後80もSPが居る訳だ。
「まぁ、蒼珠玉使っちゃおうか」
「え」
僕はインベントリから青い綺麗なガラス球を取り出した。
「はい、使うよー」
「ちょ、ちょっと待っ────」
僕は蒼珠玉をエトナの胸に押し付けて取り込ませる。すると、エトナの内側が青く発光した。そして、増えたSPは……45。まぁ、知ってたけど一回じゃ足りないよね。
「じゃあ、もう一回行くよ」
「い、いやだから、待って下さ────」
増えたSPは……35。おぉ、丁度だね。丁度80だ。
「はい、最大まで上げたよ」
「あ、あのですね。緋珠玉も蒼珠玉も貴重品なんですよ? それを、そんな簡単に使っちゃダメですからね? 分かってますか?」
「うん、分かってるよ。それだけの価値があると思ったってだけだよ」
「……そ、そうですか?」
エトナの顔が赤く染まる。うん、これ以上褒めると面倒臭くなりそうだ。僕は視線をメトの方にズラした。
「じゃあ、メトの残りSPは60だけど……結晶化とかにしとこうか」
「はい、ありがとうございます」
10SP余っちゃうけど、しょうがないよね。
「どう? 結晶化、使ってみて」
「……なるほど、ある程度扱い方は分かりました」
メトの右腕が青く透き通った結晶に変化する。それを何度か握ったり、振るったりして、メトは頷いた。
「ありがとうございます。これはかなり、使いやすそうです」
言いながら、メトは地面を金属に変えて、腕輪に吸い込んでいく。すると、メトの腕が黒く染まった。
「……良いですね」
言葉と同時に、メトの黒い腕が結晶化し……真っ黒な結晶の腕に変化した。
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