心狼・スキルポイント

 クレスのスキル振りが終わったので、僕は従魔空間テイムド・ハウスから永久焦土の人狼ハートウルフを呼び出した。

 その姿は、さっきまでの炎や氷が混じり合う混沌としたものではなく、寧ろ最初に会った時のような白い体毛に包まれただけのものに近かった。

 ただし、青かった目は黄金色に染まり、白い体毛の中に水色に近い青色の毛が偶に混ざっている。また、鉤爪は真っ赤に染まっている。


「よォ、さっき振りだな。傷は殆ど治ったぜ。流石に疲れはまだあるけどなァ」


「そっか、それは良かったよ。まぁ、これからやるのは戦闘とかじゃないし、疲れに関しても問題ないね」


 僕は言いつつ、解析スキャンをかけた。


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 Race:永久焦土の人狼ハートウルフ Lv.1

 Job:──

 Name:エクス

 HP:382

 MP:589

 STR:439

 VIT:321

 INT:280

 MND:542

 AGI:629

 SP:700


 ■スキル

 □パッシブ

【HP自動回復:SLv.7】

【MP自動回復:SLv.6】

【温度変化耐性:SLv.Max】

【氷属性親和:SLv.8】

【火属性親和:SLv.5】

【気配察知:SLv.4】

【呪い耐性:SLv.3】


 □アクティブ

【爪術:SLv.4】

【体術:SLv.2】

【咆哮:SLv.2】


 □特殊スキル

心狼ハートウルフ

凍てつきの絆フローズン・ネクサス

神呪の炎熱ゴース・ヒート


 ■称号

『称号:神の呪いを超えし者』

『称号:一族の意思を継ぎし者』


 ■状態

【従魔:ネクロ】

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 色々と凄いけど、まず目に入るのはレベル1……進化した影響かな? まぁ、スキルポイントとステータスは引き継いでいるみたいだから問題はないね。

 次にステータスだけど、軒並み高いね。エトナには及ばないけど、AGIも高いし意外にMNDも高い。

 スキルに関しては特殊スキルが三つもあるね。流石はユニークボスって感じ……いや、アースは一個しか持ってなかったから関係ないかな。まぁ、アースの場合は進化してユニークボス化した訳じゃなさそうだし微妙だけど。


 そして、一番凄いのが称号を二つも持ってることだ。基本的にプレイヤー以外が称号を取得するハードルは凄く高いって聞いたんだけど、彼は二つも持っている。詳細はこうだ。


『称号:神の呪いを超えし者』

 神にかけられた呪いに打ち勝った者に与えられる称号。

 [神、若しくはそれに類する者に与えられる攻撃を20%軽減し、与える攻撃を20%増加させる。また、呪いを無効化する]


『称号:一族の意思を継ぎし者』

 ある人狼の一族の力を完全に受け継いだ者に与えられる称号。

 [狼、若しくはそれに類する者との意思疎通が可能になり、それらの存在から信頼を得やすくなる。また、温度変化による影響を受けない]


 って感じだ、スキルに依存せず称号単体で呪いに対する耐性を得られるのは面白いね。スキル無効っていうのはあるけど、称号は無効化されないからね。


「……さて、エクス。どうしたい? 可能な限り君が望む力を与えるよ」


「あァ? 望む力? そんなのはねェけど……そうだなァ、強い奴と戦いてェなァ」


 強い奴と戦いたい……難しいけど、頑張ってみようか。


「んー、じゃあ先ずは……気配察知を伸ばそうか。あと、解析スキャンも取ろうか」


 取り敢えず、探す力を伸ばしてみよう。気配察知を上げて、解析スキャンを取る。これで80SP消費だ。因みに、僕らプレイヤーの解析スキャン次元の旅人プレイヤーに内包されている。収納インベントリも同じだ。


「後は、魔力視認と幸運フォーチュンとかも良いかもね」


 これで、索敵能力とその敵の情報を得る力、そして強敵に出会えるように幸運も与えておいた。これだけやれば、ある程度は強敵と戦う機会を得やすくなるだろう。一応、幸運はSLv.3まで上げておいた。


「これで更に200SP消費。残りは420SPだね」


 後は……なんか一杯食べそうだし、悪食を取って、高速再生も取ろう。残りは270SPだ。


跳躍ジャンプ瞬歩ステップをSLv.2まで取って……耐受強身もありだね」


 基本的なスキルである二つを取得させる。更に、明らかに粘り強いタイプのエクスには、前にダークオークのドゥールに与えた耐受強身もありだろうと考え、SLv.2まで取得させた。

 耐受強身とは、戦闘開始から終了までの間、受けたダメージの1%が全ての基礎ステータスにプラスされるというスキルだ。


「さて、残りは丁度100だけど……」


 やっぱり、今のところ足りないのは決定力だ。圧倒的なスピードとパワー、耐久力に持久力。どれも充分以上にあるが、大技が無い。

 というか、僕が取得するスキルは基本的にパッシブスキルか直接的なダメージを与えないスキルで、あんまりそういう技を取得させたこと自体が無いのだ。


破壊撃クラッシュ・ブレイク


 これだ。これは有名なネタスキルで、自身のHPを代償に、削ったHPの倍のダメージを十秒以内の次の物理攻撃に上乗せするというものだ。

 一見強力そうなスキルに見えるが、非常に使いづらいのでネタスキル扱いされている。


 使用すると体が特有の赤黒いオーラを放ち始めるので、PvPだと即バレして十秒間逃げ回られ、対モンスターだと敵が複数いることが多いので、数体を一撃で葬れてもHPが少ない状態で残りの敵を相手しなければいけないので、寧ろ不利になる。


 しかし、ピーキーなスキルだが使われていない訳では無く、次に受けるダメージを無効化する系のアイテムや支援スキルでその自傷ダメージを無効化したり、相手が一体だけなら大人数でスキルを発動して自爆特攻を仕掛けることもできる。


 ……とはいえ、このスキルは100SPもかかるので、殆どの人間は取得しない。これを取るなら、時魔術や空間魔術など、もっと便利で強いスキルが無数にあるからだ。


「よし、取得したよ」


 だが、エクスの場合は別だ。エクスはHPが減っても三回まで全回復できるし、そもそもの回復力も高いので、大ダメージを受けても致命的な事態にはなりづらい。更に、耐受強身の効果も乗るのでそれもお得である。


「ふぅ……流石に僕も疲れたよ」


 でも、良い感じだ。ただでさえ厄介なユニークボスが、本気で手を付けられない化け物になった。おまけに悪食の効果で更に成長していく……笑えるね。


 僕は取り敢えずエクスをこの地に残るように伝え、エトナを揺り起した。

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