鉤爪、牙、白い毛。
それから数分後、何とか骸骨を落ち着かせ、話し合いに入った。
「カタ。カタカタカタカタ(まぁ良い。少なくともその力を儂に示したのは事実だからな)」
骸骨は透き通った青い氷のような頭蓋をこちらに向けた。
「カタカタ。カタ、カタカタカタ(契約には条件がある。それを呑めぬなら、そのまま殺すが良い)」
ただのエリアボスとは思えない風格と覚悟を漂わせながら、骸骨は言う。
「カタカタ……カタ、カタカタ。カタ、カタカタ、カタカタカタ(その条件だが……先ず、儂をこの地から離さぬこと。もし、どうしても連れて行く必要があれば、儂の代わりになれる戦力を置いていくこと)」
うーん、グラと同じタイプなのかな? 土地に執着があるみたいな守り神タイプ。
「カタカタ、カタカタカタ(そして、契約後に告げるある場所の守護に協力することだ)」
ある場所? ここじゃないどこかに、何かあるってことかな?
「……うん。まぁ、良いよ。守護の協力は程度にもよるけど、君の代わりになる戦力っていうのは合計値でも良いのかな?」
「カタタ? カタカタ? カタ、カタカタ(合計値? 複数の魔物の合計ということか? まぁ、別にそれでも構わん)」
そっか。それなら適当に死霊術で増やした戦力を強化して配備すれば大丈夫そうだね。
「なら大丈夫そうだね。早速契約しようか」
「カタ、カタカタ(うむ、先ず守護の協力の程度だな)」
僕は少しうずうずとしながら契約を煮詰めていこうとした。
「────ネクロさんッ! 後ろですッ!!」
が、その瞬間。数十メートル先で雑魚狩りをしていたエトナの声が響き、それと同時に僕の背後から冷たく獰猛な気配が迫ってきた。
「ガァァ────」
「────烈風拳。マスター、ご無事ですか?」
振り返ると同時に振り下ろされる青く鋭い鉤爪。しかし、その素早く鋭い一撃は風のように早い拳で弾かれた。
「うん。ありがとね、メト。今のは流石に危なかったよ」
正しく、命の危機だった。幾ら耐毒の指輪などのアクセサリーの力で防御力を水増ししても元のステータスがそこまで高くない僕があの爪を食らえば、一撃で首をチョンパされていたはずだ。
「ガルル……やるじゃねえかァ。このオレノ鉤爪を簡単ニ防ぐとはなァ」
目の前から聞こえた声。それの発生源は、紛れもなくさっきの青い鉤爪の持ち主だ。
「へぇ……話には聞いてたけど、本当に喋れるんだね」
「ガァァ? 当たり前だァ。オレハ人狼、言葉ヲ話す人デ在り、獲物ヲ食らう狼デモ在るんだよ」
そう、この魔物の正体は人狼。真っ白い純白の毛皮に、綺麗な青い眼を持つ化け物。狼の要素を持つ人と言われる狼人族ではなく、人型の狼。それが人狼だ。
「そっか、それは凄いね」
そんな魔物の白い人狼の名は、トゥライス・ウェアウルフ。特徴は真っ白な体毛に、鋭く長い鉤爪、口からはみ出した凶悪な牙。
そして、フロストウルフの十倍以上の身体能力に人間並みの思考能力。更には氷の力を操り、他にも厄介な力を持ち合わせていると言う。
「まァ、御託ハ良いんだよ。さっさトやろうゼ?」
そして、そんな異常なまでの力を持つ彼は……当然、エリアボスだ。
「
僕は指示を能力で全体に出し、メトの後ろに下がりながら二本の短剣を構えた。
「我が主よ、残念ながら私はこの鎖の維持で動けませんので」
「ん? あぁ、そっか。まぁ、しょうがないね」
と、そこで近くで骸骨を拘束していたネルクスが話しかけてきた。
実際、エリアボスを二体と同時に戦い、その両方を捕らえるのは流石に難しい。ここは鎖の維持を任せて骸骨を拘束しておいてもらおう。
「テメェ……女ノ後ろニ隠れて、コソコソしやがってよォ」
「あはは、僕がムカつくなら頑張って殺してみなよ。君じゃ届かないだろうけどね」
僕の言葉に、白い人狼は青い眼で僕を睨み付けると、一瞬で僕に飛びかかってきた。
「ガァァッ!」
「無駄です」
人狼の鉤爪は、またもやメトの拳に止められた。
「メト、さっきから拳で爪を受けてるけど、それって痛くないの?」
「問題ありません。これは確かに皮膚の役目を果たしていますが、素材は人間の皮膚と全く異なります。つまり、あの狼の鉤爪と同程度かそれ以上に硬いと言うことです。そもそも、痛みが問題なのであれば痛覚を切ることもできます」
そうなんだ。手を握った時は人の手みたいに柔らかいんだけどね。……あ、もしかしてあれかな。強い衝撃を与えると固まるみたいなやつかな? そういう素材、地球にはあるよね。
「ガルルゥ……テメェ、やっぱり中々やんじゃねえかよ。使わねェと勝てそうにねェなァ、これ」
頭をぽりぽりと掻く人狼。その背後から斬りかかる影が一つ。
「ハァッ!」
「ガルゥ!?」
エトナの腕が影のように黒い大きな刃となり、寸前で回避が間に合わなかった人狼の背中を切り裂いた。しかし、致命傷は負っていないようだ。
「ネクロさん、怪我してないですか?」
「うん、大丈夫だよ。お陰様でね」
と、話している内にロアとアースも僕らの近くまでやってきた。
「ガルルル……こいつァやべェなァ、オレと互角以上に強ェのが四体も並んでやがるじゃねェか」
そこまで言うと、人狼は溜め息を吐いて鉤爪を天に向けた。
「月が出てねェ今じゃ、このままだとボコられて終わりだろうからなァ……しゃあねェ」
人狼は言いながら、残った片方の手を胸に当てる。
「『心臓解凍(デフロスト・ハート)、
当てられた手の奥、胸の内側が青白く光った。
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