襲来、大剣上裸マン。
道の向こうで待ち構える筋骨隆々の上裸の男、その男の背中には二本の大剣が括り付けられている。
「お兄ちゃん……あれ、なんか怖いよ」
「うん、見るからに強そうだね。でも、その強さをある程度数値化して確かめる手段があるよね?」
「数値化して確かめる……えーと、
辛うじて思い出した様子の実が上裸の男にスキルを行使する。
「どう、実?」
「……ろくじゅうご」
ろくじゅうご……六十五?
「……あの人、レベル65もあるんだけど」
衝撃を受けている様子の実に僕は苦笑を漏らした。
「あぁ、レベル差でびっくりしてたんだね」
「うん……だって、レベル65ってすごい高くない!?」
まぁ、確かに高い方ではあると思うけど。僕の方が高いんだよね。
「取り敢えず……上裸で仁王立ちするのが趣味なだけで案外何も話しかけてこないかも知れないし、ささっと通り抜けちゃおうよ」
「そ、そうだと良いけど……あ、待ってよお兄ちゃん!」
足早に歩き出す僕は、二本の大剣を背中に括り付けた上裸の男を無視し、その隣を素早く通り抜けようとした。
「よぉ、魔王。通れるとでも思ったか?」
しかし、僕の歩みは彼が伸ばした逞しい右腕に遮られてしまった。
「いや、ただの変態かと思ったんだけど……違うみたいだね?」
「当たり前だろッ、誰が変態だよテメェ!」
変態は激昂した様子で僕の胸倉を掴もうとしたが、本気では無かったらしく簡単に避けることができた。
「まぁ良い、俺は寛大だからな。それよりも、よく聞いとけよ……俺はニラヴル。
「へぇ……双大剣士とかいう
本当に色んなジョブがあるね、このゲームは。
「……いや、反応するのそっちかよ。普通、
「あー、確かに聞いたことあるかも。あれだよね、PK集団だよね」
「……まぁ、身も蓋もねぇ言い方をするとそうだが」
変態改めニラヴル改め変態は溜め息を吐いた。
「前に僕に襲いかかってきたドレッドとブレイズもPKだったけど、もしかして君たちのところの人だったりする?」
「あ? アイツらは違えよ。アレはデスペナの奴らだろ」
ニラヴルは少し苛立った様子でそう言い返す。
「へぇ。でも、PKクランなんてどこも似たようなもんじゃないの?」
「……アイツらみたいな負け犬と俺らを一緒にすんじゃねえよ」
剣呑な雰囲気を醸し出しながら、ニラヴルは背中の大剣を紐から解き、一本ずつその手に握った。
「ぶっ殺すって言おうと思ったがよォ……そこのガキはなんだよ」
ニラヴルは片手の大剣で僕の後ろで縮こまっている実を指した。
「ん? あぁ、みのるんのこと? まぁ、レベルを見たら分かると思うけど始めたての初心者だから、手を出さないでね。もし手を出したら……僕も全力を出すことになる」
「みのるん……? ふざけた名前だが、非戦闘員ならどうでも良い。元々、俺は気にいらねぇテメェをボコしたいだけだからなァ」
それは良かった、ただ僕を殺したいだけみたいだね。
「まぁ良い、準備が良いなら早速やんぞ」
「あ、もしかして態々準備を待ってくれるの?」
僕の問いかけにニラヴルは鼻を鳴らし、二つの大剣を地面に突き刺した。
「たりめえだろ。テイマーなんか従魔を出せなきゃ雑魚だからな。その時間くらいは与えてやんねえとボコりがいがねェ」
「まぁ、確かに従魔が居なきゃ雑魚ってのはその通りだね」
うんうん、と僕は頷き、実に離れて置くように伝えると……それ以上は何もせずにニラヴルの目を見続けた。
「……テメェ、舐めてんのか」
「ん? 舐めてないよ。……寧ろ、舐めてるのは君の方でしょ」
僕は言いながら、インベントリから短剣を二つ取り出して構えた。
「テイマーの僕が、本当に何の護衛も無くフラついてると思う?」
僕は影に潜むネルクスを意識しながら言った。
「ッ! ……後悔しても知らねぇぞ」
ニラヴルは言うと、足元の石ころを足だけで巧みに掬い上げ、それを大剣に乗せて天高く打ち上げた。
「あの石ころが落ちたらスタートだ。良いな?」
「うん、オッケーだよ」
僕は言いながら、短剣を握る力を強めた。
「……
「……『
ニラヴルから血のように赤いオーラが立ち上り、今までよりも更に凶暴な雰囲気が感じられる。そして、二本の大剣は青黒い光を鈍く放っている。
だが、対する僕も黄金と炎の力を解放した。これで正面からぶつかり合って即死することは無いだろう。
「行くぜッ、
ニラヴルの速く、そして恐ろしく重たい一撃が僕を襲う。
「……ネルクス」
「────仰せのままに」
しかし、その一撃は僕の体から湧き出る黄金と、僕の影から現れた執事服の男の暗黒を纏う拳によってあっさりと止められていた。
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