再起する闇

 絡み付く黄金の鎖は、ダークオークを拘束しながらも鎖同士でドロドロと溶けながら交わっていき、数秒が時間が過ぎる頃にはダークオークの黒い皮膚を、まるでスライムが獲物を捕食する時のようにべったりと覆い尽くしていた。


「……ブモ(参った)」


 ダークオークは溜め息を吐き、目を閉じた。


「あはは、素直で助かるよ……じゃあ、使役テイム


 術式への抵抗は無く、直ぐに僕の力は受け入れられた。と同時に、エリア踏破の称号が取得される。


「まぁ、必要があったら契約コントラクトに変えるかも知れないけど、今は取り敢えずこっちで」


「ブモ(了解した)」


 頷くダークオークに、僕は覚醒アウェイクを解除し、黄金の拘束を解いた。と、そこで僕は背後から刺さる妹の視線に気付いた。


「……お兄ちゃん、説明してくれるよね?」


 その視線に込められた感情は、間違いなく怒りだった。




 ♢




 約十分後、僕は漸く妹に事情を説明し終えた。


「……分かったけど、今度から説明無しにこんなことしないでね」


「うん。ごめんね、ちょっと実の反応が面白かったから……つい、ね?」


 正直、ここまで焦ってる実は新鮮だったので少しからかってみたくなったのだ。


「まぁ、終わってみれば楽しかったから良いけど……アイス、チョコミント味」


「あはは、分かったよ。実、チョコミント好きだよね」


 スースーするのが嫌いな僕からすれば、全く理解出来ない好みだ。もしかして、歯磨きをしてる時もミントの味で幸福を感じているのだろうか。


「うん。だって、美味しいでしょ」


「残念だけど、それには頷けないなぁ」


 と、そこまで言って僕は周囲の警戒をしているダークオークを見た。


「さて、さっき説明した通り、スキルを振るから……ちょっと待っててね」


「うん。適当に魔物でも狩っとくね」


 妹は木々の間に消えていった。と言っても、見える範囲には居るのだが。


「じゃあ、取り敢えず名前だけど……ドゥールで」


「ブモモ(有り難く頂戴する)」


 ちょっとおどろおどろしい響きになったが、特に理由はない。強いて言うならダークオークだからだ。


「あとは能力だけど……どうしようかな」


 元々、エリアボスでありながらユニークモンスターでもあるダークオークは【闇属性親和】と【再起する闇リバイバル・ダーク】という固有スキルを持っている。

 HPが50%以下になった時、HPを最大まで回復して更にステータスを大きく強化し、自身に闇属性を付与するという超強力な固有スキルだ。勿論、クールタイムはある。


 まぁ、こんな最強スキルを大して強くも無いダークオークが持っているのは宝の持ち腐れと言った感じなのだが……僕が強くすれば、鬼に金棒どころかジャイアントオーガにエクスカリバーって感じになってしまうだろう。


 因みに、エリアボスでユニークモンスターではあるが、アースのようなユニークボスでは無い。


「いや、それよりも……先にステータスを見させてもらうよ」


 僕が解析スキャンを発動すると、目の前に見慣れた画面が表示された。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 Race:ダークオーク Lv.45

 Job:──

 Name:ドゥール

 HP:336

 MP:130

 STR:134

 VIT:198

 INT:81

 MND:238

 AGI:78

 SP:440


 ■スキル

 □パッシブ

【HP自動回復:SLv.4】

【闇属性親和:SLv.3】

【MP自動回復:SLv.2】


 □アクティブ

【槌術:SLv.5】


 □特殊スキル

再起する闇リバイバル・ダーク


 ■状態

【従魔:ネクロ】

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 うん、悪くないステータスだね。STRとかINTは高くないけど、耐久面は結構優秀だね。個人的には耐久力特化型にしてみたいと思う。


「先ずはお馴染みの高速再生」


 50SPが消費され、ドゥールのスキル欄に高速再生が追加された。


「後は……根性とかも良いね」


 SPを120消費し、根性をSLv.3まで取得させる。これはHPが少なければ少ない程ダメージが軽減されるスキルだ。


「無難にこれとかも付けといて……」


 瞬歩と跳躍をそれぞれSLv.2まで取得させ、SPが60消費される。


「あ、これも面白いね」


 次に目を付けたのは【耐受強身】だ。これも結構面白いスキルで、戦闘開始から終了までの間、受けたダメージの1%が全ての基礎ステータスにプラスされるというスキルだ。プラスできる上限は元のステータスと同じ値までだが、耐久力の高いドゥールには結構有用なスキルだと思う。


 勘違いされそうだが、ダメージを受けるとステータスが1%上がるのではなく、受けたダメージの1%分の値だけ上昇するのである。つまり、50ダメージを受けると全ステータスが0.5上昇するということだ。


 これは元々50SPのスキルだが、レベルを一つ上げているので合計110SPの消費である。因みに、SLv.2になったことで上昇値が1%から1.5%に。プラスできる上限は100%から150%になっている。


「良し、余った100は……ドゥール、君ってどのくらい食べる?」


「……ブモモ(人と比べれば数倍は)」


 お、じゃあ悪食で決定かな。


「はい、出来たよ。良い感じだね」


 僕は頷きながらもう一度ステータスを確認した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 Race:ダークオーク Lv.45

 Job:──

 Name:ドゥール

 HP:336

 MP:130

 STR:134

 VIT:198

 INT:81

 MND:238

 AGI:78

 SP:0


 ■スキル

 □パッシブ

【HP自動回復:SLv.4】

【闇属性親和:SLv.3】

【MP自動回復:SLv.2】

【根性:SLv.3】

【高速再生:SLv.1】

【耐受強身:SLv.1】

【悪食:SLv.1】


 □アクティブ

【槌術:SLv.5】

瞬歩ステップ:SLv.2】

跳躍ジャンプ:SLv.2】


 □特殊スキル

再起する闇リバイバル・ダーク


 ■状態

【従魔:ネクロ】

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 うん、結構良いね。やっぱりテーマを一貫すると良い感じになる。


「じゃ、ドゥール。実を連れて帰ろ────」


 僕の言葉は、甲高い叫び声によって遮られた。



「────お兄ちゃんっ、助けてッッ!!!」



 声の方を見ると、そこには人の影。……どうやら、気持ち良く帰らせてくれはしないらしい。

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