※樹海を守ろう!【4】
♦︎……べニール視点
俺はべニール。瞬息万変っていうパーティに所属する魔剣士だ。まぁ、今のところ各種サイトでtier1の魔剣士を使ってるだけあって、俺は結構強いプレイヤーってことになってる。
……が、そんな俺でも今はかなーりマズい状況だと感じてる。
「ハァハァ……いやぁ、お前の相手すんのは疲れるなぁ。熊さん」
「グォオオ……」
俺の言葉に答えるように呻く熊。しかし、俺も熊ももう結構ボロボロだ。
「ていうか、漸くお前らの弱点分かったわ。……お前ら、全員使い魔で素材はこの森にある木材を中心に使われてる……合ってる?」
「グッ、グォッ!!」
俺の雰囲気を察したのか、焦ったように突っ込んでくる熊。だけど、俺はそれを軽く回避し、
「植物が素材、つまり弱点は……
火属性ってことだろ。
「
熊の後ろに一瞬で回り込み、そこから俺の魔剣士としての力によって強化された、赤熱し煮え滾る剣が恐ろしく大きい熊の背中を斬り裂いた。
灼熱の力を帯びた剣に斬られた熊の背中には、一本の切り傷とそこを中心とした火傷の痕が残っており、その切り傷はパチパチと僅かに燃えている。
「グゥッ!? グゥゥォオオオオッッ!!!」
しかし、それで黙っているほどこの熊は甘く無いようだった。
「うっわぁ、これは……やばいなぁ」
熊が咆哮を上げた瞬間、熊の体を緑色の光が包み込んだ。すると、ただでさえ存在感の塊であった巨大熊の存在感が更に増した。恐らく、バフだろう。
「
避ける、避ける……そして、斬りかかる。この繰り返しで理論上は勝てる。だが、あの状態の熊……もし俺が一撃でも喰らえば即死だろう。
つまり、やられる前にやる必要がある。
「……
俺は飛び上がり、木の上へと退避した。そして剣を構え、目を閉じた。
「『紅蓮に滾る灼熱の刃』」
深緑の葉に紛れるもその熊の目は誤魔化せず、木々の間から熊と目が合った。
「『それは散る火の粉すら劫火と化して敵を滅する』」
グラグラと俺が乗る木が揺れ、そしてメギッ、という音と共に足場が傾いていくのを感じる。
「『……
更なる灼熱と紅蓮を帯びる刃、倒れゆく木から落ちる俺、そこにすかさず襲いかかってくる巨大熊。
自由落下する俺に振り下ろされる爪、もはや避けることは叶わず。その圧倒的威力の一撃、もはや防ぐことも叶わず。
「グッ、グ……ォ」
しかし、それでも勝ったのは熊ではなく俺だった。紅蓮に燃え盛った剣が、バフがかかりにかかりまくった魔剣士の特権とも言えるその一撃が、熊の首を一撃で斬り落としたのだ。
「うわ、さっきホワイティやられてたよなぁ……クッソ。じゃあ、これ治せねえじゃん」
だが、あの熊もただやられた訳では無い。空中からゆっくりと落ちる俺に振り下ろされたあの爪は避けられるものでも防げるものでも無かった。
だから、俺はあいつを殺す代わりにあの一撃を食らってしまったのだ。
「片腕ねぇのキッツイなぁ、これ」
首を斬り落とされて狙いがズレたのか、熊の爪は俺の腕をズタズタにぶっ壊した。一応、利き手じゃない方の左腕だが……それでも、戦闘に支障は出る。
「うーん、この程度のポーションじゃ治んないよなぁ……ま、しゃあないか」
ポーションを使ってみたが、等級の低いそれではあまり効果は無く、しょうがないのでこのまま戦うことにした。
♦︎……ブリッツ視点
俺は湧き上がる怒りを纏わり付く嵐に委ね、翠緑の瞳で俺を睨む蛇に突っ込んだ。
「
強風が俺の背中から吹いているかのように、俺の体が直線上に加速する。
「砕けろッ!!」
突風と化した俺と嵐を纏った槍、それが凄まじい勢いで蛇の眉間に直撃する……が、その直前で蛇の頭は結晶化し、俺の槍は火花を散らしながらも弾かれてしまった。
「クソッ、硬え……硬すぎんだろ」
異常だ。異常すぎる。この状態の俺の
わざわざ結晶化してるってことは、俺の攻撃をそれだけ危険だと感じてるってことだろうが、傷一つ付けられないこっちからしたらクソゲーでしか無い。
「ん? そういえば、あの依頼主どこ行きやがった? ……まぁ、どうでも良いか」
今はそれよりも目の前の敵だ。幸い、あいつの視線は俺に釘付けになっている。なんとか凌ぎ切ればどうにかなる……はずだ。
「なッ、なんだこの攻撃ッ!?」
が、その目論見は容易く破れた。四方八方から突如生えた木の枝に迫られ、何とかその場から飛び退くことは出来たが、それらの一本が俺の右足に突き刺さった。
「くッ、足が……」
俺は槍でその枝を断ち切り、突き刺さっている部分から引き抜いたが、ダメージは少なくない。
「────危ないぞ、ブリッツ」
瞬間、俺の体をなにかが掴む感触と共に、俺の体は数メートル先まで運ばれていた。
「ッ!? 何が……シニョンか」
「あぁ、俺だ。あのままあそこに突っ立っていれば、死んでいたぞ」
シニョンに言われてさっきの場所を見ると、地面から何本もの木の枝が生えて、槍のように天に突き出されていた。
「うわ、マジだな……助かった、シニョン」
「気にするな。それよりも……あいつ、突っ込んでくるぞ」
シニョンの言葉が終わるより早く、あの蛇が巨体に似合わない速度で俺たちに迫ってきた。あの異常に硬い体にぶつかられては堪らないので、俺たちは左側に跳んで何とか回避した。
「危なかったな……シニョン、どうする?」
「どうする、か。そういうのはリーダーが決めるもんだろ────ッ!?」
突然、森の奥が銀色に煌めき、シニョンの背中にグサリと短剣が突き刺さった。
「ぐッ……レッドゴブリン、だと?」
それを為したのは、赤い肌を持つ小柄なゴブリン……いや、ゴブリンゾンビだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます