レン vs 乱破
喧騒で満ちた闘技場、その中央にあるアリーナでは二人の男が対峙していた。
「よぉ、色男。俺はよ、お前と戦えるのを楽しみにしてたんだわ」
「そうか」
口角を上げる乱破に、レンはいつも通りの素っ気ない返事を返す。
「だからよォ……俺をガッカリさせんじゃねえぞ?」
瞬間、実況席から試合開始が宣言され、合図の喇叭が鳴り響く。
「それについては、心配はいらない」
「へぇ、そうかよ?」
乱破とレンはバフをかけながら話している。
「あぁ、そうだ。勝つのは俺だからな」
乱破はその返答を聞き、ニヤリと笑う。
「やっぱりテメェは普通の奴とはちげえな」
「そうか? ……いや、そうかもな。普通の者がここまで勝ち残れるとは思えない」
と、二人が話し終えたところで瞬間、二人は同時に動き出した。
「
「
炎を纏った拳と剣がぶつかり合い、弾かれる。が、片方の剣から放たれた斬撃が乱破の肩を傷付ける。
「……籠手があるとは言え、ただの拳に弾かれるほど俺の焔剣アルモーフと飛剣ネラキフは甘くないはずだが」
焔剣アルモーフは常に炎を纏っている赤い剣、飛剣ネラキフは振るたびに魔力消費なしで斬撃を飛ばせる白い剣だ。
「はッ、言っとくが俺の籠手だってそこそこ苦労してゲットしたんだぜ?
聞いたこともないが、ここまで自慢するということはそれなりの性能なのだろう。
「ま、武器の自慢大会はここまでだ……さっさとやろうぜ?」
「あぁ、そうだな。
瞬間、レンの姿がその場から搔き消え、代わりにアリーナの中心から数十メートル上空に現れた。
「『
加護の力を解放しようとしたレンだが、迫り来る火球によってそれは阻止された。
「おいおい、俺は忍者なんだ。火遁くらいは使えるぜ?」
「今までまともに使ってこなかった癖に良く言うな……だが、仕方ない」
レンは溜め息を吐くと、二つの剣をクロスするように構えた。
「必殺技が使えないのなら……正道で破るだけだ」
「はッ、俺は不忍の上忍……忍者の中じゃ、邪道の極みだッ! 破ってみせろよッ!」
気炎を吐いた乱破は燃え盛る拳をそのままに、着地したレンに飛びかかっていく。
「ッ! 流石に忍者だな」
しかし、飛びかかっていく途中で乱破の体はゆらゆらと揺らめき、何人もの乱破に別れた。
「忍法、影分身の術ッ! ……ってやつだよ。知ってるだろ?」
レンを取り囲むように立っている十二人の乱破が同時に戯けたような動作をする。
「当然だ。だが……その程度の虚で俺を倒せると思うか?」
レンはそう言い、目を瞑った。瞬間、飛びかかる乱破達。
「あぁ……もう、分かった」
十二人から同時に襲い掛かられるレンだが、冷静に後ろを振り向くと、両手に構えた剣を十二人の内の一人に降り下ろした。
「
「ぐッ!? く、クッソ……なんで一瞬でバレたんだ?」
傷を抑えながら発せられた乱破の問いに、レンはいつも通りの無表情で答える。
「本体が分かったのは、魔力視認というスキルの力だ。それと……そもそも、忍者の影分身の術は実体を伴う分身だと聞いていたんだが、態々忍法を叫んだのと、何となく分身の気配が実体がある割には希薄に感じられたことから、あれは分身では無くお前が作り出した幻のような存在じゃないか、と考えた」
つらつらと語るレンに、乱破の表情は歪む。
「……へッ、クソ、全部大当たりだぜッ! あー、やっぱり俺には相手を化かす術は向いてねえみてえだな」
「あぁ、単純な性格のお前には向いてないな」
言ってくれるぜ、と乱破は毒づき、胸にできた斜め十字の傷から流れる血も気にせずに拳を構えた。
「だったら……やっぱり、俺には忍法、拳の術が一番合ってるってこったな?」
「あぁ、そうだ」
仕切り直しの雰囲気となり、改めて己の得物を構え直した二人は、どちらも僅かな笑みを浮かべていた。
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