闇光 vs ネクロ
あれから少しの休憩を経て、準決勝が開始された。
選び抜かれた四人の選手は全員が途轍も無い強さを誇り、自らを最強と証明すべく歓声を浴びる。その四人とは、レン、闇光、乱破……そして、僕だ。
「それでは、ネクロ様」
「あー、うん。分かってるよ」
そんな中、準決勝の第一試合に選出されたのは僕と闇光だ。僕はスタッフに急かされたので控室を出た。暫くしてから実況の大声が流れてきたので、僕は深呼吸を行い、緊張を抑えた。
『…………のは、異界の魔王ネクロだッ!!』
随分なあだ名が付いてるなぁ、と僕は溜め息を吐きながらアリーナに入場した。それから少しすると、実況の声と共に闇光が入ってきた。
彼女は不敵な笑みを浮かべて僕を観察している。
『それでは準決勝、第一試合……開始ッ!!』
喇叭が鳴り響き、闇光は微笑んだまま手を僕に向ける。
「
「
挨拶代わりに放たれた闇の槍を虚空から現れたグランが受け止めた。
「んー、やっぱり召喚前に止めるのは無理だよねぇ」
余裕そうに呟く闇光を僕は密かに警戒しながら続けて呼び出したアースとロアを前に出す。
「まぁ、流石に知ってると思うけど……私、視界を奪うのが得意なの」
瞬間、闇光の体から黒い何かが溢れ、雲の様に広がっていく。僕らをも呑み込み、アリーナに満ちたこれは間違いなく
「うん、知ってるよ。それと、観客の為にもこれは消した方が良いんじゃないかな?」
「アッハハッ! ……嫌よ。勝ちたいからね」
闇光は短く笑い声を上げると、僕に向かって
「いやいや、そうじゃなくてね。僕は無駄だから言ってるんだよ。僕とグランには暗視があるし、アンデッドの二人はそもそも種族の特性上、暗くても見える。だから、
本当はグランに暗視は無いけど、サラッとあることにしておいた。それと、態々説明したのは僕に暗視のスキルがあることを証明する為だ。
「……そうみたいだね。だったら、今度はこっちで目を潰してあげる」
諦めた様に言った闇光は雲を一瞬で消し去ると、僕らの方に走ってきた。
「
闇光が手を突き出すと、そこから小さめの魔法陣が花開き、無数の光の針が放たれた。
「
だけど、その程度の小さな光ならただの闇魔術でも呑み込める。
「闇光さん、ちまちまやってても僕は殺せないよ? まぁ、そろそろ僕からも攻めようかな」
様子見は終わりだ。視界潰しはある程度無効化できることが分かったから、後は攻勢に出るのみだ。
「ロアは思うままに攻めて、グランは僕を守りながら投擲、アースは全体のフォロー」
指示を出し終えた僕は次の行動に移ろうとしている闇光を睨む。
「一応言っとくけどさ……私、これでも他の大会とかで何回も優勝してきてるんだよね」
落ち着いた様子で話す闇光、しかしそこに猛スピードで近付いていくオーガの影。
「グォオオッ!!」
「うわっ、危ないってば」
振り下ろされた鋼鉄の斧、しかし斧は軽く避けられ、そこにできた隙に闇光の剣が突き刺さる。
「グォオオ……」
体内を抉るように動かされる闇光の剣を恐れ、ロアは剣を引き抜いて飛び退いた。
「ふぅ、じゃあちょこっとバフを……ッ!」
ロアを退かせ、バフをかけようとした闇光は自身の真上に現れた魔法陣に気付き、そこを飛び退いた。
「キュウウウウッ!!」
「グオオオオッ!!」
しかし、そこに襲いかかるのがアースとグランだ。アースは闇光の頭上から土魔術で岩を落とし、グランは結晶化した鱗を投擲する。
「ほんっとうに厄介だねぇ、貴方の従魔達……やっぱり、本体を狙う以外無いかな」
溜め息を吐いた闇光は、小声でこう呟いた。
「
すると、闇光の影が独りでに起き上がり、八つに分裂した。黒い影のような体を持つそれは、闇光と同じ姿をしている。
「……え、待って。八つ?」
本体含めて九人の闇光。だが、それは本来あり得ないはずだ。魔術士系のジョブであっても、
「アッハハッ、不思議そうじゃん? てことはやっぱり、この魔術も使えるんだね」
「いや、そうじゃなくて……どうやって?」
チート? 有り得ないはずの言葉が浮かび、直ぐに消える。だけど、他に考えられる方法は……
「……もしかして」
一つ、あるじゃないか。特定の属性などに対して異常な強化を施せる力。
「アッハハッ、多分貴方が考えてるヤツだよ。そう、私は
「……加護持ちばっかりだなぁ」
僕は溜め息を吐きながらも、最近では忘れかけていたあの女神のことを思い出した。そういえば、彼女は加護をくれるみたいなことを言ってたよね。不死と停滞を司る女神の加護……想像もつかないね。
「まぁまぁ、そう言わないでよ。光の神様は結構加護を配ってるみたいだし……貴方も、機会があればもらえるんじゃない?」
「……そうだね。じゃあ、そろそろ始めようか」
僕が言うと、闇光は不敵に笑った。
「そうだね……『
瞬間、闇光の体から闇と光が溢れ出した。レンが見せたのと同じ
「────始めようか」
闇光の右目が黄金色に染まり、左目は白目ごと闇に染まった。髪は僅かに浮き上がり、黄色いメッシュが黄金色に輝いている。そして、彼女の脇に控えている八人の影もより色濃くなり、闇のオーラを湧き上がらせている。
「……最悪だね」
やっぱり、戦いの最中に楽しくお喋りとかはしない方が良いかもしれない。まぁ、でも……ちょっと覚醒したところで、だ。
「あははッ、それで僕達に勝てるかな?」
「勿論ッ!!」
気炎を吐いた闇光が、八人の分身を引き連れて僕らに向かって飛び込んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます