ネクロ vs ノエル
ノエルとネロの戦いが終わり、少しの休憩を挟んで回復してもらった後、僕とノエルは互いに剣を持って向かい合っていた。と言っても、僕らの持っている剣はどちらも大した価値の無い鉄の剣。
一応言っておくと僕は魔術と従魔は禁止で向こうも魔術と精霊は禁止というルールだ。
「おーし、じゃあ始めるぞ? 二人とも良いな? よーい、スタート」
まるで競争の合図のような掛け声と共に手を叩く破裂音が響き、戦闘は開始された。だが、ノエルは遠慮がちに少しずつ近寄ってくるだけで、あまり積極的に攻めようとはしてこない。多分、本気でやりすぎると良くないと思っているんだろう。
まぁ、こういうのは弱い方から攻めるみたいなのが礼儀みたいなものらしいからね。
「あ、僕はあんまり攻める方の技術は習ってないからさ、そっちから来てくれると嬉しいな」
「……そういうことなら」
ノエルは剣を横に一薙ぎした。すると、ノエルの剣から斬撃をそのまま飛ばしたような三日月状の白いエネルギーの塊が放たれた。剣術スキルの
「
だが、僕はフリスビーくらいの速度で迫るそれを避けずに剣を横に振って相殺した。最も基本的な剣術スキル、
まぁ、そもそも唱える必要が無いスキルではあるけどね。
「そんくらいはやれるのか……じゃあ、
と、ノエルがスキルを使い僕の目の前まで一瞬で詰めてきた。
「
だが、ノエルが剣を振るよりも早く僕は後ろ向きに
「バックステップも使えんだな。じゃあ、そろそろ本気で行くからな」
ノエルはそう言いながら剣を何度も振りながら僕に向かって走ってくる。そして、ノエルが剣を振る度に刃からは白い三日月状のエネルギーの塊……
「流石に多すぎないかなッ!」
これでも、
「
避けて、避けて、避けて、何とか
「……これ、どうすればいいのかな」
だが、近寄れない。近寄らなければ斬れないが、近寄れない。まさか、MP切れまで逃げ続けなきゃいけないのか? と思ったが、まだまだ余裕そうなノエルを見るに向こうのMPよりのこっちのHPの方が先に切れそうだ。
「いや、いけるかも」
そうだ。禁止されてるのは魔術と従魔のみ。ってことは、他は使ってオッケーのはずだ。
「
決意を固めた僕は、空中に大きく跳び上がった。ただ、動きが鈍くなる空中では無防備になり、かなりの隙を晒すことになる。
「それ、ダメな。ネクロさん」
当然、それを咎めるようにノエルはまた白い飛ぶ斬撃を幾つも放った。
「……
が、僕は直撃するギリギリでインベントリから机を取り出し、それを土台にしてノエルに近付くように大
「なッ、嘘だろッ!?」
驚いた様子のノエル。そんな彼の方に僕は跳びながらも懐からナイフを取り出し、投げつけた。
「危ねッ! テメェの従魔とやること一緒かよッ! つーか、そんなのありかよッ!」
ナイフを弾き、悪態を吐くノエル。その直ぐ隣に着地した僕は直ぐ様剣を振るった。
「あははッ、勿論ありだよッ! インベントリは禁止されてないからねッ!」
しかし、僕の斬撃はノエルに簡単に弾き返された。
因みに、インベントリはメニューから開き、そしてアイテムを指定して出さなければいけない性質上、四つしかないインスタントスロットにセット可能なポーションなど以外は戦闘中に使うのは本来なら難しい。
しかし、空中まで跳び上がって時間を稼げば、何とか出来ないことも無かった。ほぼほぼ賭けのようなものだったが、成功したので何の問題も無い。
「だけど、この距離まで近付いて俺に勝てると思ってるのか?」
猛烈な勢いで何度も
「思ってなくも無いね。
僕はノエルの
「は? 消えた?」
そう、僕はノエルの視界から消えた。僕は
普通なら
「
淡い白の光を帯びた僕の剣がノエルの首筋に迫る。勝った。そう思った瞬間、ノエルの姿がそこから消えていた。
「……え」
白く光る剣が空を斬り裂き、地面を抉った。
「────ネクロさん、自分がやったことだかんな?」
声が聞こえた瞬間、僕の首筋に冷たい何かが添えられた。
「……僕の負けだね」
その冷たい何かは見なくても分かる。それは、冷酷に白い輝きを放つ鉄の刃だった。
「おう。お前の負けだ。一応聞いとくが、何をされたか分かったか?」
チープは僕の肩に乗った刃を退かし、満面の笑みで僕を見た。
「……なんか嬉しそうだね。まぁ、流石に分かるよ」
僕は溜め息を吐きながら言った。
「
「はッ、近接メインじゃないやつに気付かれたら困るわ。っと、そろそろ帰りてえんだが……」
チープはそう言って笑い、それからノエル達の方に視線を向けた。
「ノエルくんっ、カッコ良かったよ! 凄いよノエルくん! あんな咄嗟に、しかも決め台詞付きでなんて誰も出来ないよノエルくんっ!!」
「おいッ、お前ちょっと煽ってんだろッ!」
ノエルは激昂し、ユキはピョンピョンと跳ね回って笑っている。中々に邪魔しづらい雰囲気である。
「あー、うん。そうだね……先、帰っとこうか」
「……おう、そうだな」
疲労を滲ませた僕の言葉に、チープも同じ様子で頷いた。
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