空間を操れるタイプのゴブリン

 僕がネロの方を見ると、ネロは更に口角を上げた。


「クキャ、クキャキャ。(へ、頼むぜ)」


 あー、自分から喋るタイプね。じゃあ、早速お喋りさんのステータスを見ていこう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Race:ハイゴブリン・ゾンビ Lv.13

Job:──

Name:ネロ

HP:201

MP:258

STR:138

VIT:73

INT:103

MND:81

AGI:198

SP:610


■スキル

□パッシブ

【HP自動回復:SLv.5】

【MP自動回復:SLv.4】

【炎属性耐性:SLv.3】

【気配察知:SLv.3】

【気配遮断:SLv.2】

【斬撃耐性:SLv.2】

【打撃耐性:SLv.2】

【光属性耐性:SLv.1】

【風属性耐性:SLv.1】


□アクティブ

【剣術:SLv.6】

【投擲:SLv.3】

【体術:SLv.3】

【短剣術:SLv.2】

【跳躍:SLv.1】


■状態

【従魔:ネクロ】

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 あれ、ハイゴブリンはレベルがリセットされるタイプの進化だって聞いてたけど……SPは残るんだね。まぁ、その方が僕にとっては都合が良いんだけどさ。

 あと、残ってるSPから計算するにハイゴブリンにはレベル50で進化できるみたいだね。メイジとかには30で進化できるって聞いてたけど。


「にしても、よくレベル50までゴブリンで生き残れたね」


「クキャ、クキャキャ。クキャキャキャ。(いいや、俺は施設から抜け出してきただけだぜ。あのレミックとかいうやつからな)」


 レミック。それは正に今の僕の敵だ。実験施設に居たとなると、この斬撃や打撃、各属性耐性にも頷ける。詳しく聞きたい話はあるが、今は取り敢えずSPからだ。


「まぁ、なんかもう適当に振ろうかな。最初に聞くけど、君って少食?」


 ゴブリンキングはかなりの大食らいらしいので悪食を取ったが、ネロがどうかは分からない。


「クキャ、クキャキャ……キャキャ。(まぁ、少食ってほどではねぇけど……あんまり食わねえな)」


「そっか……だったら、INTも100はあるし……高級スキルも取っちゃおうかな」


 僕は躊躇なく280SPを消費し、闇魔術をSLv.7まで取得させた。理由はかなり使い勝手のいい闇刃ダークカッターが使えるようになるからだ。


「……これ、良いね」


 僕は100SPを消費し【空間魔術】を取得し、更に230SPを消費してSLv.3まで上げた。これで合計610SP丁度を取得したことになる。


「良し。色々取ってみたけど……力の使い方は分かる?」


「クキャ」


 ネロは頷いた。


「じゃあ、空間魔術を見せてくれるかな?」


「クキャ。クキャキャ。(分かった。空間拡張スペースエキスパンション)」


 詳しいスキルの効果は、やはり見ないと分からない。僕がネロに指示を出すと、ネロは手を前に突き出した。すると、ネロの前の空間が歪んだ。


「クキャ、クキャキャ。(先ず、空間の拡張だな)」


 僕が歪んだ空間に手を突っ込むと、一気に僕の手もまた歪んだ。その空間に入ってみると、ネロの説明通り見た目以上に広い空間になっている。

 これは、あれかな。魔道具のマジックバッグとかと同じ類いの力かな。


「クキャ……クキャ、キャキャ。(そしてこれは……同時に三つまで展開できる、みたいだな)」


 多分、それはスキルレベルで変化するタイプじゃないかな。今はSLv.3だから三つまでだけどSLv.4になれば四つまで拡張できるようになると思う。


「クキャ、クキャキャ。(それと、こういうこともできるっぽいな)」


 そう言ってネロは腰に付けていた巾着に手を当てて魔法を発動した。その巾着を受け取り、中を開いてみると、その中身はとても見た目通りとは言えないほどに拡張されていた。

 具体的に言うと、見た目の六倍くらいだろうか。


「クキャ……クキャキャ。(次は……空間切断スペースレンド)」


 ネロが壁に手を向けて魔法を発動すると、ネロの手の前に無色透明な空間の揺らぎが発生し、刃の形になったそれは巣穴の壁に発射され、ブォンと音を立てて縦に亀裂を入れた。


「無色透明な刃を作り出して発射し、当たった部分は削り取られる。ってところかな?」


 だけど、透明な刃自体が歪んだ空間になってるせいで目を凝らせば見えるし、速度もそこまでは無いように見える。肝心の威力も大体刃の体積と同じくらいしか削られていないようだ。


「クキャ、クキャキャ。(後は、こういうのもできるみてぇだ)」


 そう言ってネロは空間切断スペースレンドを唱えた。すると、ネロの右手辺りの空間がゆらゆらと歪んでいる。

 そして、ネロがその手を壁に突き立てると、またもやブォンと音がしてネロの手はズブリと壁の中に突き刺さった。

 ネロが手をゆっくりと引き抜くと、壁には穴が開いていた。


「クキャ、クキャキャ……クキャキャキャ(まぁ、こっちの方が使いやすいな……こういうこともできるしよ)」


 ネロは空間切断スペースレンドの効果が付与された手を思い切り天井に向けて振った。


「……へぇ」


 すると、ネロの手に纏わり付いていた空間の歪みが、その手から離れて刃の形を成し、天井に直線の亀裂を入れた。


「クキャ、クキャキャ、クキャキャ。(まぁ、これをやると手に付いてたのも消えるから、付け直さないといけなくなるけどな)」


 そう言いながら、ネロは鞘から剣を抜いた。


「クキャ、クキャキャ。(いや、こっちのがいいかもな)」


 ネロが剣に手を触れながら魔法を発動すると、さっきの空間の歪みは剣に纏わり付いた。確かに、そっちの方が使いやすいかもしれない。


「クキャ、クキャキャ。(だけどこれ、魔力の消費がバカになんねぇな)」


 確かに、その性能ならばMP消費も激しくなるだろう。


「うん。それで、次は?」


「クキャキャ……クキャ、クキャ。(まぁそう急かすなや……最後は、これだ)」


 ネロが何かを唱えた瞬間、ネロの体が消えた。


「クキャ。(こっちだぜ)」


 声が聞こえたのは僕の後ろの方だ。ネロは、この部屋の隅に一瞬で移動していた。


「クキャ(空間転移スペーステレポーテーションだぜ)」


「あー、転移魔術みたいなね」


 多分、あるだろうなとは思っていた力の一つだが、転移魔術という別のスキルもあるので実は無いかもと心配していた。


「クキャ、クキャ……クキャキャ。(だけど、あれだな……距離によって消費する魔力が増えすぎるな)」


 うーん、だったら長距離すぎる転移は無理があるってことかな?


「まぁ、それでも普通に強いよね」


「クキャ」


 ネロは深く頷いた。


 実際、空間拡張スペースエキスパンションにしても、一瞬で敵との距離を離したり、逆に予め拡張しておいた空間を消すことで一瞬で距離を詰めたり。使い方はマジックバッグ以上のものがある。

 それに、空間切断スペースレンドは普通に強い。防御力無視の切断攻撃だ。しかも見えづらいと来れば不可視の防御不能攻撃……もう、字面だけ取れば最強だ。


「クキャ、クキャキャ……(こりゃ、ヤベェ奴の下についちまったな……)」


 ネロがニヤニヤしながら何か言っている。嬉しそうなところ悪いけど、君は結構優秀そうだからこき使わせてもらう予定だよ。


「じゃあ、次の場所に行こうか」


 まだまだ太陽は明るい。朝10時といったところだろうか。過剰戦力になりそうな予感はしているが、それでも別に問題は無い。サクサク戦力を増やしていこう。

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