掲示板と休息

 ♦︎……COO掲示板




【公式】COO掲示板・Ⅷ part.75


 1:*公式

 COOの公式掲示板です。次スレは自動で立てられます。

 また、過度な荒らし行為や一定以上に通報が集まった場合、掲示板にログインできなくなる可能性がありますので、予めご了承ください。


 109:チェーン・総

 おい、ドらどラの配信今見てるやついる?


 110:ゼル

 見てない。そもそもこの世界のログインした状態で配信って見れるのか?


 111:チェーン・総

 見れる見れる。『ブラウザ』から動画のとこで検索すれば見れるはず。COOは全部この『ブラウザ』を通さないと他サイトでも配信できないから、COOの配信は全部この『ブラウザ』で見れる。


 112:ペニョコリータ

 へぇー、サンガツ。COO内情報しか検索できないから不便だと思ってたけど、意外と使えるんだな。それで、どしたん?


 113:フェガール・スケアリトル

 へー、ステータスとかのディスプレイと同じ感じで見れるのか配信。なんかARっぽいな。


 114:チェーン・総

 いや、ドらどラが酒場で喧嘩吹っ掛けられてるっぽいぞ


 115:ケルチェスター

 うわ、マジじゃん。しかも相手これドレッドとブレイズじゃん。


 116:ユナイテッド・グラシーズ

 ドレッドとブレイズって誰なんだ


 117:ペニョコリータ

 有名なPK。対人戦クソ強くて、俺が知ってる限りあいつらが負けたのはレン君以外いない


 118:ユナイテッド・グラシーズ

 いやめっちゃ強いじゃん。ドらどラやばいんじゃね?


 119:フェガール・スケアリトル

 実際やばいね。八割負けかな。


 120:ケルチェスター

 うわー……案の定押されてんなぁ


 121:ベルヒクトス

 いやー、ドレッドの体の動かし方上手すぎだろ。何であんな滑らかに動けんのかな


 122:チェーン・総

 これ負けるなぁ。


 123:ペニョコリータ

 うわ、ドラドラ魔法使いやがった。しかも風烈刃ってやべえな


 124:ユナイテッド・グラシーズ

 必死すぎて周りが見えなくなってんねぇ


 125:フェガール・スケアリトル

 お、ドレッドも使ったぞ。


 126:ケルチェスター

 いや、あの黒い腕ズルすぎだろ!


 127:ゼル

 闇腕だな。闇魔術の最初の方にある


 128:ガネイアン

 スキルの使い方うますぎだろドレッドとかいうやつ


 129:ベルヒクトス

 うっわ、派手に吹き飛ばされたぞ


 130:ペニョコリータ

 はい、ドラドラ負け、と。なんか昔は実力もある有名配信者って感じだったのに最近は異常に強い奴の相手しすぎて負けまくってるなぁ


 131:フェガール・スケアリトル

 まぁ、それで登録者とかの数字が伸びるならオッケーだろうな。配信者的には


 132:チェーン・総

 え、ネクロ!?


 133:ガネイアン

 うわ、マジでネクロって書いてあるじゃん


 134:ゼル

 ネクロってあのネクロか。本当にプレイヤーだったんだな


 135:ケルチェスター

 うわ、ネクロってこんな感じなのか。なんか興奮してきた


 136:ユナイテッド・グラシーズ

 なんかPKどもの矛先ネクロに向いてね?


 137:ペニョコリータ

 お、やりあうのか? 良し、ドラドラ。カメラに徹してくれ。


 139:ガネイアン

 断ったwwwwwネクロ、完全にPKのこと舐め腐ってるなwww


 140:チェーン・総

 やばい、どんどんドレッドのイライラが溜まっていく


 141:フェガール・スケアリトル

 そろそろキレんじゃね? ドレッド


 142:ベルヒクトス

 あ、キレた。


 143:ケルチェスター

 えぇ?! なんか影から黒い人が出てきたぞ!?


 144:ゼル

 いや、なんだあれ。全然分からんぞ。どういう能力だ?


 145:ペニョコリータ

 んー、魔物っぽい特徴は無いけど……絶対悪役な喋り方してるもんなあ


 146:ガネイアン

 この黒い執事服、配信越しでも邪悪なオーラが伝わってくるんだけど


 147:チェーン・総

 なんか急に吹っ飛ばされたぞ、ドレッドもブレイズも


 148:ペニョコリータ

 んー、何の能力だ?


 149:ゼル

 特に何かの能力を使った感じは無かったが、何だろうか


 150:フェガール・スケアリトル

 は?


 151:ガネイアン

 マジで素のステータスでぶっ飛ばしたのか?


 152:チェーン・総

 え、おいおい。今度は何だよこれ


 153:ペニョコリータ

 今完全に攻撃当たってたよなぁ、二人とも


 154:ベルヒクトス

 透過したとかか? それとも別の力?


 155:ゼル

 それか、幻かもな。幻影魔術とかいう奴かも知らん


 156:フェガール・スケアリトル

 うわ、まただ。何回切っても食らってねえぞあいつ


 157:ユナイテッド・グラシーズ

 マジで透過か幻かもな


 158:ガネイアン

 なんか二人とも喚き始めたぞ


 159:ベルヒクトス

 真っ暗で見えねえって言ってるな。


 160:ペニョコリータ

 うわ、マジで幻じゃん。


 161:チェーン・総

 影からなんか生えたぞ?


 162:ベルヒクトス

 今度は拘束か


 163:フェガール・スケアリトル

 なんか触手生えてんな、影から


 164:チェーン・総

 ていうかこの執事とネクロの関係性なんなんだよ


 165:ゼル

 人に化けられる魔物でテイム済みかもな


 166:ベルヒクトス

 そもそも幻影魔法使えるなら姿も誤魔化せんじゃね? 知らんけど


 167:ペニョコリータ

 流石に大型モンスターとかは幻で隠してもボロが出るし、人型のモンスターではありそうだな。魔物だとしても


 168:ユナイテッド・グラシーズ

 え? ドラドラがロックオンされたんだけど


 169:ガネイアン

 うわ、あの執事男怖すぎだろ


 170:ペニョコリータ

 ドラドラ、お前またこうなるのか……ww


 171:フェガール・スケアリトル

 何だこれ、影に飲み込まれたぞ?!


 172:ベルヒクトス

 完全に真っ暗だな。声も聞こえなくなったし


 173:ゼル

 一応メニューは開けるようだが


 174:ガネイアン

 あ、視界が戻ったぞ


 175:ペニョコリータ

 なんだここ、路地裏か。


 176:ベルヒクトス

 うわ、また触手で縛り付けられた


 177:フェガール・スケアリトル

 路地裏にPK二人と一緒に放置されるドラドラ


 178:ガネイアン

 PKたちの目線は自然とドラドラの方に向いて、と。


 179:ペニョコリータ

 これ、先に拘束とか無いと死ぬなぁ。完全にやる気だぞあいつら


 180:ユナイテッド・グラシーズ

 あ、ブレイズが触手焼き切ったぞ


 181:ベルヒクトス

 まずはレイピアで触手を切ってドレッドを解放しつつ……?


 182:ガネイアン

 そのレイピアで、ドラドラの顔面を……貫いたぁあああッ!!!


 183:ペニョコリータ

 なんか、あれだな。色々あったけど結局こうなるのか。


 184:ゼル

 そういう運命の下に生まれたんだろう。仕方ない


 185:ベルヒクトス

 でも俺は聞き逃さなかったぞ。死に際にニヤっとしながら小声で『……取れ高』って言ったの


 186:ペニョコリータ

 配信者魂が凄いな。ある意味尊敬するわ






 ♦︎……ネクロ視点




 二人のPKと一人の哀れな一般プレイヤーを退治した僕たちは、店に迷惑料を押し付けた後、ついさっきテーブルに届けられた料理と酒を楽しみながら談笑していた。


「あ、そういえばネクロさん。ネクロさん達って、違う世界から来たんですよね?」


「うん、そうだよ。昔の次元の旅人は知らないけど、僕らはみんな同じ星に住んでるんだ。もしかしたら、極少数違う世界から来た旅人もいるかも知れないけどね」


 そう言って僕は黒兎の煮込みシチューを掬って食べた。うん、めっちゃ美味しい。


「それで、どんなところなんですか? その、ネクロさんが住んでるのは」


「うーん、取り敢えず決定的な違いを言うと、僕らの世界には魔力が無い」


「え、魔力が無いんですか? だったら、どうやって生活してるんですか。全員、外で狩りをして暮らしてるとかですか?」


「いやいや、真逆だよ」


 魔力が無ければ魔法も無いし、スキルもほぼ無い。魔法が無ければ当然魔道具なんかも無い。だから、エトナは多分文明があまり進んでいないと思ってるんだろうね。それに、家を建てるにも食料を確保するにも、何をするにしても魔法とスキルはこの世界の人類の発展に必須だった。それが無ければどうやって文明が発展していくのか想像もつかないのだろう。


「どっちかと言えば、文明は僕たちの方が進んでる。この街の時計塔よりも高い建物が、何千何万と世界中に溢れてる。馬車よりも速い乗り物が無数に街中を走り回り、空を見ればドラゴンより大きい乗り物が沢山の人を乗せて違う大陸に飛んで向かってるし、二日もあれば世界の反対側まで誰だって飛んで行ける。料理はしなくても、店で買った完成品を温めるだけで美味しいものが作れるし、どれだけ離れたところにいる相手でもいつだって話すことができる。……僕たちは、魔法の代わりに科学技術が発展したんだ」


 ふぅ、と一息吐いた僕はパンをシチューに浸けて口に運んだ。とても美味い。


「うーん、何だか良く分からないことばっかりですけど、科学って凄いんですねっ!」


 残念ながら、僕が頑張って説明したことは一割も届いていないようだった。


「……うん。そうだよ、科学って凄いんだ。僕たちが君たちの世界に来れたのも科学の力だからね。科学は凄いんだよ」


「へぇー、じゃあ、科学が無かったら私はネクロさんに会えなかったってことですよね? だったら、科学には感謝しないといけませんね!」


 確かに、僕もエトナ達と会えなかったってことか。本当に科学には感謝だね。


「……マスター。その、一つ質問してもよろしいでしょうか」


「え、うん。良いよ?」


 いつになくメトが身を乗り出して僕を見ている。ここまでアグレッシブなのは初めてかもしれない。


「私の記憶回路には無いのですが、馬車より速い乗り物とは何ですか?」


「ん、あぁ、色々あるけど……一番馬車に近いのは自動車かな?」


 メトは僕の言葉に首を傾げた。


「その、自動車とは何ですか?」


「えっと、大体四つの車輪を回転させて動く車だね」


「では、どうやってその車輪を回転させているのですか?」


 メトの質問責めに、僕は遂に言葉を詰まらせた。


「ええっと、燃料を燃焼させて、その、それで発生したガスで、えっと……」


 メトは表情を変えはしないが、目を輝かせて僕を見ている。


「……あ、そうだ。ネルクス、君も食べる?」


 僕は迷惑料のお返しにと言って貰った串焼きの山を指差して言った。メトが訝しむように僕を見ている。


「おや、よろしいのですか? でしたら、遠慮なく……ふむ、中々美味しいですねぇ」


 ネルクスが僕の影からにょろりと現れ、焼き鳥の串を一本手に取った。


「あはは、だったら良かったよ。ほら、もう一本食べなよ」


「おやおや、今日は随分と優しいですねぇ? では、遠慮なッ、痛ッ、メト様?!」


 メトはネルクスを影に押し込み、僕の肩を掴んで僕の体を自分の方に向けさせた。



「────マスター、まだ質問は終わっていません」



 メトは僕の目をしっかり見つめて……いや、睨みつけている。


「い、いや、えっと……ちょっと、覚えてないっていうか、分からないっていうか、ね?」


 僕の残酷な言葉に、メトの表情は悲しみに沈んだ。





 結果から言うと、僕たちが宿に帰った後、僕は何度もログアウトする羽目になった。お陰で、車の仕組みについては人よりも詳しくなったけど。


「……なるほど、完全に記憶しました。マスター、今日はご迷惑をおかけして申し訳ありません」


 本当だよ。と言いたくなったのを理性と良心で抑えつけ、僕は何とか微笑みを浮かべた。


「いや、大丈夫だよ。メトは僕の可愛い従魔だからね。僕の可愛い従魔じゃなかったら大丈夫じゃないけど、僕の可愛い従魔だから大丈夫だよ」


「……マスター、もしかして怒っていますか?」


 僕は貼り付けた笑みをどうにか崩さないようにしつつ、首を振った。


「ううん、大丈夫だよ。そもそも嫌なら断れば良かった話だからね」


 そうだ。断れるのに断らなかったのは僕なんだ。悪いのは僕だ。


「しかし、マスターの表情筋からは怒りの感情が検出されています」


 何だそれ。僕の怒りの感情を勝手に検出するんじゃない。ていうか、検出ってなんだよ。


「いや、人間って言うのは自分が悪いって分かってても怒りを抑えられない生き物なんだよ。こういうやり場のない怒りっていうのを上手く抑えきれる人間が社会では成功するんだろうね」


「そうですね、間違いないですよ。私は我慢できなくてうがーっ! ってなるタイプですけどね!」


 確かに、エトナは……いや、エトナは意外と抱え込むタイプだと思う。そう考えると、ストレスが溜まってないかどうかを逐一確認する必要があるね。


「まぁ、そういうストレスを僕はゲームとかで発散してるんだ」


「ん、ゲームって何ですか? ネクロさん」


 エトナが不思議そうな表情で尋ねた。


「あー、そっか。こっちには無いか。えっと、ゲームって言うのは……簡単に言えば、うーん、空想の世界に入り込んで遊べる道具、かな?」


「え、面白そうですねっ! 私、海で泳いでみたいです!」


 リゾート系のVRゲームね。


「うーん、そういう系も一杯あるけど海は現実で泳いだ方が楽しかったかな。ま、取り敢えず次の行き先でも────」


 気楽に話していた僕の言葉は真剣な表情のメトに遮られた。



「────マスター、その前にゲームというものの仕組みについて教えてもらってもよろしいでしょうか?」



 いやいや、VR技術なんて調べても説明できる気がしないんだけど……まじで?


 僕は結局メトの純粋な眼差しに耐えきれず、天を仰いだ。

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