第132話 フォーケイブには行ったけど…

モリスさん達と別れ、王都をブラブラと散策。

「まだ開いているお店は少ないなあ。でも今日は特に目的とか無いからいいけどね」


そう、1日前倒しで冒険から帰ってきたから、ピノさんの休みの最終日の予定が空いちゃって・・・


「ピノさん、何かやりたい事とかってあります? 休みの日になったらやろうって思ってた事とか」

「うーん、部屋の片付けとかは済んでるし、お洗濯とかも別に溜まってないし、あと他に・・・」


暫く考え込んでたピノさんだけど、急に顔を上げて、

「ああっ! そうだよ、何でこんな大事な事を・・・」

何かを思い出したみたい。

そして、

「カルア君、ピクニックに行こっ!」




王都を出て僕達がやってきたのはセントラルダンジョンの第0階層「お子様専用フロア」。

ここのダンジョンはまだ一般開放されてないから、見回しても僕たちの他には誰もいない。


「ううーーーーーんっ・・・やっぱりいいなあ、ここ」

歩きながら大きく伸びをするピノさん。

「そうですねえ。風は気持ちいいし景色はきれいだし、のんびりするには最高の場所ですよね」


草原を吹き渡るそよ風は柔らかな青い匂いを孕み、遠くから微かに聞こえるのは川のせせらぎ、そして楽しげな小鳥の鳴き声。


ただ緑の中を歩いてるだけなんだけど、それが何だかすごく落ち着くし心地いい。

でもここって――

「「ダンジョンなのにねぇ・・・あっ――」」


ピノさんも同じ事を思ってたみたいで、独り言がハモっちゃった。

思わず顔を見合わせて、

「ふふっ」

「あははは」


ああ、楽しいなあ。




「ね、ちょっと早いけどお昼にしよっか」

柔らかく流れる小川の畔、ふたりでお昼ご飯を食べる事に。

テーブルと椅子を取り出して、ピノさんがその上に軽食を並べたら、

「「いただきまーす」」


テーブルに並んでるのはサンドイッチとおにぎり、それに唐揚げや卵焼きとか。

「どうかな? 今日はピクニックっぽい感じがするのを並べてみたけど」

「はいっ、どれもとっても美味しいです」

「うんうん、どれも美味しいです。あ、この卵焼きも絶品ですよカルアお兄ちゃん。はい、あーん」

「あーん、むぐむぐ・・・本当だ、すっごく美味しいですよピノさん!」

「そ、そう・・・喜んで貰えてよかったよ」

「はい、次はこのウインナー」

「うん、あむっ、むぐむぐ・・・うん、これも美味しい・・・ってあれ? ラル?」


いつのまにか僕の隣にラルが。

それも操化身アバターじゃなくって見た目12歳くらいの本体のほう。

「ふふん、やっと気付いたですか。まったく他人ひと家の庭ダンジョンで随分と気を緩めて・・・ふたりとも甘くなったものです。もうホント甘々です! 見ててイラっとしたです!」

「ええっと・・・ラルちゃん?」

「ピノ様もですよ! 仲良く散歩して川辺で水遊びしてそのままランチって・・・しかも『あーん』とかするタイミングを窺って――ピっ!?」


ああ冷気・・・


「へぇ・・・それが分かってて割り込んだんだぁ・・・」

「え、えっと、あの・・・」

「そっかぁ・・・しかもせっかくふたりきりだったところに・・・」

「あ、あの・・・」

「最初からずっと覗き見してたんだ・・・」

「すっ・・・すみませんでしたです! 調子に乗ったです!!」

「むぅーーーーー」

「かっカルアお兄ちゃん、お願いです、何とかお兄ちゃんからもピノ様にお口添えを――」

「うん、ちゃんと叱られようねラル」

「そんなぁ・・・」


まあそうは言ってもラルに悪気が無いのは最初から分かってたし、そもそもここはラルのダンジョンの中だしって事で、怒りモードはすぐに解除、いつものピノさんに戻った。


「でも今回は見られてるの全然分からなかったよ。一体どうやったの?」

「ふっふー、ラルは気付いたですよ。存在ではなくって見よう聞こうって意識を察知されていたのではないかって」

「ほうほう」

「で、見えちゃったものはそのまま受け入れ、聞こえちゃったものもそのまま受け入れ、そちらに意識を向けないようにして・・・」

「なるほど。意識を向けず、でも情報としては受け入れてと・・・でもそれって相当難しいんじゃない?」

「難しかったです。激ムズだったです。でも――」

「でも?」

「ダンジョンに入ってからのふたりの様子を見てたら自然に出来るようになってたです。すん、って。ヤッテランネーヤ、って」

「「・・・・・・」」


とりあえず、ダンジョン内でラルがピノさんの気配察知を回避できるようになったのは分かったよ。




「はぁ・・・それでラル、別に僕達をからかう為に来た訳じゃないんだよね?」

「もっもちろんですよ。ダンジョンの精霊たるもの、それほど暇な訳がないです。誰も来なくって退屈してたなんて訳ないです。いい鴨が来たとか思ってないです」


ラル、言えば言うほど・・・


「とまあ冗談はここまでにして――」

お?

「カルアお兄ちゃん、フォーケイブお姉ちゃんのところへはいつ行くです? フォーケイブお姉ちゃん、操化身アバターが出来るのをずっと待ってるですよ?」

「あれ? ええっと・・・」


フォーケイブ・・・ヨツツメのダンジョン・・・あれ? でもヨツツメにはずっと行ってたし・・・ダンジョンだって――あっ!


「ごめん、もう行ったつもりになって完全に忘れてた」

「ふぅ、やっぱりですか」

ラルの呆れ顔に思わず視線が下がる。

でもそうだよね、ひとりだけ仲間外れにしちゃった訳だし・・・


「ええっと、じゃあフォーケイブさんはまだ通信とかも――」

「そっちはモリスが済ませてたです。あとは操化身アバターだけですよ」

「そうだったんだ・・・」

ちょっとだけ安心。


「分かった、じゃあ明日フォーケイブに行くよ」

「了解です。お姉ちゃんにもそう言っとくです」


思わぬところで明日の予定が決まったよ。


「じゃあ後は若い者同士仲良くやるです。邪魔物は退散して影から見守ってるです」

「ちょっと! そんな堂々と覗き見宣言なんてされたら逆に落ち着かないじゃない。退屈してたんでしょ? 一緒にいていいから。ね、カルア君もいいよね?」

「あっはい、僕もいいですよ」


こうしてラルも合流して、そこからは3人でのピクニックになったけど、それもまた楽しかったよ。

面倒見のいいピノさんと甘え上手のラル、何だか本当の姉妹みたいだ・・・




そして翌日。

今日はもちろんフォーケイブダンジョンへ。

まずはヨツツメの冒険者ギルドにダンジョン行きを申告しておかないとね。


受付のお姉さんの前に立つと、

「いらっしゃいませ、本日は・・・あら? あなたはこの間の指名手配の生徒さん?」

「いや指名手配って・・・」


見掛けたらギルドマスターに報告するように言われてただけですよね?

ってあれ? それってつまり指名手配?


「ああ、ごめんなさい。ギルドマスターとお話しされたパーティの方ですよね。本日はどうしました?」

「はい、今日これからフォーケイブダンジョンに入るので、その申告に」

「え? お一人でですか?」

「はい、そうですけど」


あれ? 何だか嫌な予感。


「あの、王都の生徒さんがソロでダンジョンに入るのはお断りさせていただいているんです」

「え? それはどうして?」

「夏休みに観光気分でいらっしゃる生徒さんが結構いるんですど、毎年無茶をされる方が多くて問題になっていて」


うわぁ・・・


「でも皆さん冒険者登録はされてるので、全て断るという訳にも行かず・・・それで何かあっても自己責任で自己解決出来るラインという事で、パーティでの攻略のみに制限させていただいているんです」


うーん、これはどうにもならないかな。こんな事でモリスさんにお願いするのもなんだし・・・

仕方ない、今回は諦めて――

「この遭遇は運命、わたしが来たから、全て解決」


聞き覚えのある声に振り返ると・・・

カッコいいポーズのワルツがいた。




「話は全て聞かせて貰った。わたしが同行、それならふたりパーティ」

「ええっと・・・」

受付嬢さん?

「はい、おふたりでもパーティでしたら許可できますよ」

「なら出発。カル師、ダンジョンはこっち」

「あ、うん・・・」


ワルツに引っ張られてギルドを出る。

扉をくぐる直前に見えたのは、にこやかに手を振る受付のお姉さんと、こちらを指差して何やら話が弾んでいる食堂の冒険者さん達の姿だった。




「それでワルツ、ワルツは何かギルドに用事があったんじゃないの?」

ダンジョンに向かう道すがらワルツとお話し。

「明日は団体さんの貸切り予約。注文はフォーケイブの魔魚料理、だから食材の発注に来た」

「そっか、依頼した帰りだったんだ」

「むふふ、依頼はやめた。わたしとカル師がいれば、大丈夫」

「ええ?」


ダンジョンには入れるようになったけど、どうやらこれ、魔魚を獲って帰る必要があるみたいだ。

ま、それはそれで楽しそうだし、いいんだけどね。




暫く歩いて、フォーケイブダンジョンに到着っと。

「うわぁ、如何にも海のダンジョンって感じ」

ダンジョンの入口は磯の大きな岩場に取り付けられた扉、の横にあるいつもの転送装置。


「じゃあ行こうかワルツ」

「うん、初めての、共同作業」

さあ、いつも通り転送装置にカードを翳したら、初めてのフォーケイブダンジョンだ!!



ダンジョンの中に入ると、

「へぇ、いきなり下り階段になってるんだ」

入口の間は四方を壁に囲まれていて、唯一の進路は正面の下り階段みたいだ。

「階段の先は、気水域バトルフィールド。魔魚とレッツガチバトル」


気水域!

海水と淡水が入り交じった汽水域、じゃなくって『気水域』。


気水域は空気と水が混じった場所で、僕達みたいに陸上で生活する生き物と水中で生活する生き物が共存できる不思議空間。

本でしか見た事のないその不思議空間をとうとう初体験しちゃうよ!



階段を降りると、そこは広々とした空間。

「へぇ、まるで海の中みたい」

空気がねっとりと重くて、身体を動かすと纏わりつくような掻き分けるような感触が返ってくる。

でも呼吸は普通にできるし、身体も濡れたような感じはない。

フワッと浮くような感じがするのと、動きがいつもより遅くなるのが注意点かな。


「カル師、この辺りは雑魚ばかり。暫くここで、準備運動」

「そうだね。ちょっとここでの身体の動かし方に慣れておいた方が良さそうだ」


ゆっくり歩いていくと、前の方から手の平くらいの大きさの魔魚が数匹泳いできた。

「アレは魔鰯。ツミレ団子がお勧め」

「倒し方とかは? みんなどうやって倒すの?」

「タモで捕まえてから締めたり」

「タモは持ってないなあ。錬成で作ってみようか」


僕の言葉にワルツは首を振り、

「カル師に、タモは不要。スティール一発」

ああ、なるほど。でも――

「それだと身体を動かす練習にならないなあ」

「だったら、撲撲ボコボコ棒。超手加減。でないと、この場でツミレに」


という訳で暫くここで魔鰯達と追い掛けっこ。

初めのうちはタイミングが合わなくって空振りばかりだったけど、だんだんコツが分かってきて――

「よし、これで全部倒したね」

地面に横たわる魔鰯達を収納して先に進もう。




身体の動かし方は十分慣れたから、ここからはスティールの出番。

という事で、魔鰯よりも少し大きな魔魚を、

「スティール」

魔魚はゆっくりと地面に落ちていった。

「これは魔鯖。シンプルに、塩焼き」

だんだん調子が出てきたよ。



「魔鯵。生でよし、焼いてよし、の万能選手」

「おおー、キラキラしてる」

「魔飛魚。出汁ウマ」

「ヒレでっか。空飛べそう」

「カル師正解。こいつは空を飛ぶ」

「嘘でしょ? だって魚だよ?」

「いつから、魚は飛ばないと、錯覚していた?」



そんな感じでどんどん奥へ進み、そして現れた下り階段。

「階段を下りる程、種類が変わる。表層から中層、そして底層、からの深層へ」

「なるほど。それでみんな狙った魔魚のいる層に行くっていう訳か」

「その通り。今日の狙いは――」

「狙いは?」

「深海魔魚を中心に、満遍なく」

「了解。じゃあ目指せ完全制覇、だね」

「おおー、完全、制覇ーーーぁ」


そして僕達は下層へ下層へ、更に下層へ。

襲い掛かってくる魔魚を次々と手に入れていった。


「魔シイラ。この顔で案外美味しい」

「頭でっか。それに顔もオーガっぽい」

「魔鰹。刺身、たたき、至高は節」

「ほうほう」

「魔鮪。種類色々、味色々。お勧めは生で」

「おー、これは海の上で戦った奴」

「魔鰤。ダンジョン産は、年中脂ノリノリ」

「さっきから出てくる魔魚がだんだん大きく・・・」


やがて底層から深層へ。


「魔鯛。淡白なのに奥深い」

「魔蟹。種類色々。食べると静かになる」

「魔海老。大きいのは刺身、塩焼き、フライ。小さいのは炒め物」

「魔金目。目からビーム」

「魔蛸。あ、魔烏賊も出てきた」

「おお、クラーケンの赤ちゃんだ」

「魔鮟鱇。鍋の具。肝! 肝!」

「見た目が怖いよ」



そして――

「カル師、要注意。ヤバい奴が来た」

「うわっ」

凄く大きい魔魚が、もの凄い大きな口を開けて襲い掛かってきた。

「魔鮫。冒険者が大好物」

「それ人喰い鮫ってやつ!」


まあ一瞬驚いたけど、そうは言っても、

「スティール」

で、終わりっと。

「おお! 流石カル師! 口ほどにも無い」

「それ僕がって事!?」



そんな感じで色々な魔魚を獲り、

「これだけあれば余裕。カル師、そろそろお腹空いた?」

「うん、実はさっきからペコペコだよ」

「なら、家の店でご飯。獲れたて新鮮な魚料理、ご馳走する」

「ホント? やったぁ!」

「じゃあ行こう」


そして僕達はダンジョンを出てワルツの家のレストランへ。

もうお昼の営業が終わってて、お客さんはひとりもいなかった。

もうそんな時間だったのか・・・お腹が空く訳だよ。


「父よ、母よ、私は帰ってきた」

「お帰りワルツちゃん。あら、それにカルア君もいらっしゃい」

「こんにちは、お邪魔します」

入口で出迎えてくれたのはワルツのお母さん。確かトレスさん、だったかな。


「ギルドで、カル師に会った。一緒に、魚獲ってきた」

「あらそうだったの。じゃあ奥のキッチンで出してくれる?」

「分かった。カル師、こっち。父よーー」


ワルツに連れられてキッチンへ。

そこにいたのは難しい顔をしたワルツのお父さん、コクサンさん。

「こ、こんにちは」

「カルシ君・・・ワルツと、ふたりきり、ダンジョン探索・・・」

あれ? 何だか怒ってる?


「父よ、カル師の魔魚、ここに出す?」

「・・・ああ、そこに、出してくれ」


すごく沢山獲ってきたから、溢れないように少しずつ出さなくちゃね。

って、僕が出した魔魚をコクサンさんは次々と食材庫に収納していった。

もしかして時間停止の食材庫かなぁ?


「む、もう入らない」

コクサンさん、少し悔しそうな顔してる。

「あの、よかったら収納庫の容量拡げましょうか?」

「出来るのか? なら頼む」

「はい、じゃあちょっと待ってくださいね・・・あれ?」

あ、そう言えば普通の魔道具の付与って見えないんだった。どうしよう・・・


「・・・もしかして、無理だったか?」

コクサンさん、少し心配そう。

「あ、大丈夫です」

今の付与を改造するのは出来なくても、新しい収納庫を作ればいいだけだから。

「あの、今使ってる収納庫って時間停止はついていますか?」

「ついていない。食材の熟成にも使ってる、から」

「なるほど、分かりました」


って事なら今の収納庫はそのままで使い分けられるかな。

という事で、魔石を錬成して新しい収納庫を作成。

そっちには時間停止を付けて・・・よし、完成。

さっき入れた魚は新しい収納庫に移動してっと。


「はい、これをどうぞ。この収納庫には時間停止を付けておきましたので、元の収納庫と使い分けてもらえば」

「何と、時間停止。助かる」

「さっきの魚はすべて移しておいたので、残りも収納しちゃいましょう」


それから魔魚の取り出しを再開、コクサンさんはチェックしながら収納を再開。

そして――

「これで全部です」

全部の魔魚を渡し終えた。


「ありがとう、どれも素晴らしい、品質だった」

「父よ、カル師に食事を。わたしにも」

「分かった。テーブルで、待っていてくれ」


ワルツとふたりでテーブルに移動すると、トレスさんがお茶を出してくれた。

「はい、これ飲んで待っててね・・・あれ? ワルツちゃんご機嫌ね」

「父が、カル師に、超ビックリしてた。笑えた」


「へぇ、あの人がねえ」

意外そうな顔をするとレスさん。

でもさっきのコクサンさん、あれで驚いてたの?

全然そうは見えなかったけど・・・表情もしゃべり方も変わったように見えなかったし。

「あ、出来たみたいね。持ってくるからちょっと待っててね」


そして出てきた魔魚料理は、どれもこれも超美味しかった。

やっぱり最高はピノさんの料理だけど、それに負けないくらい美味しいや。

うん、たくさん食べてお腹いっぱい。満足ーーー。


「さてと、もうそろそろ夕方だし帰ろうかな」

「カル師、今日はありがとう」

「うん、夏休みが終わったらまた学校で」

「じゃあ、また」




ヒトツメの家に転移して、そのままベッドにゴロンと。

うーーん、フォーケイブダンジョンにも行けたし、ご飯は美味しかったし、お腹いっぱいだし、今日は楽しかったなぁ。

ふあぁーーーーーっ・・・





こちらはカルアが帰った後のワルツ達。

「この品質、あり得ん」

コクサンはあらためてカルアの魔魚を見て唸っていた。

先程の料理で、これまで扱ってきた魔魚との明らかな差に気付いたからだ。

「むふふ、カル師は、最強スキルで、超高品質魔物素材を、ゲットできる」

「何と・・・恐るべき才能。それにこの収納庫も、凄い・・・」

「錬成魔法も、超優秀。建物だって、料理道具だって、最高の物を作れる」

「・・・・・・」

「あらあら、お父さんもカルア君の事、認めちゃったのかしらね」

「認めるに、決まっている。カル師は最強」

「くっ・・・」





一方こちらはフォーケイブダンジョン最下層。

「うーん、もうそろそろ来るかなあ。はやく来ないかなぁ」

ダンジョンコアの間で楽し気に待っているのは、このダンジョンの精霊フォーケイブである。

「ラルちゃん、あの人が今日来るって言ってたもんね。来たら何て言ってお出迎えしようかな。私もラルちゃんみたいに『お兄ちゃん』って呼んでいいかなあ」


ダンジョンにやって来たカルアが、大漁に満足して家に帰ってしまったなど気づきもせずに――

「はっやっくっ・・・来っないっかなっ♪」




「ううーん、ワルツもう食べられないよぉ・・・むにゃむにゃ・・・すぅ」

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