第107話 そして真の水着回の幕開けです

さて、目の前で繰り広げられている生徒達の海上乱舞、その対応に困ったラーバルは、まずはマリアベルへの相談をとチーム用通信具を取り出した。


『何だいラーバル、確か今アーシュ達は合宿中だろう?』

「ええ、その合宿なんですが・・・実は、またカルア君が――」

『やらかしたってかい!?』

通信具の向こうでマリアベルが額に手を当てる。


『ここしばらくはダンジョンの相手が続いてたから割りと・・・いや結構やらかしてるね・・・で、今度は一体何だい?』

「それが・・・まずは見ていただくのが一番かと思いまして。場所は合宿所の海岸です」

『ったく、嫌な予感しかしないねえ・・・ああ分かったよ、なら現地への足はモリスを使うか。何だかんだでカルアの制御はあいつが一番上手いからね』


マリアベルからの出動要請を受けたモリス。

マリアベルとの接続が切れたのを確認した彼は、他に通信を送るべく通信具を操作した。

それはもう満面の笑みを浮かべて。


「チームカルア全員緊急集合! 場所はヨツツメ合宿所のプライベートビーチだよ。現地で必要となる可能性が高いから全員水着を持参する事。王都組は僕が、ヒトツメ組はピノ君が転送係だ。さあみんな急いで!」

そしてあっという間にチーム全員を巻き込んだ。


「あの室長? 今のはまさか・・・」

くっくっくっと楽しげに笑いながら通信具を置いたモリスにロベリーが話し掛けると、

「うん? いやあ、僕と校長がふたりで海に行くとかあり得ないでしょ? カルア君が何をやらかしたかは分からないけどさ、やっぱりこういうのはみんなで行かなきゃねぇ。さあほら、ロベリー君も支度して。早く早く」

「ああもう室長はっ! って大急ぎで予定のキャンセルを連絡しなきゃ! 今日これからの予定は――」

「出発は5分後だからね」

「5っ・・・だあぁもうっ!!」



急な予定に混乱したのはロベリーだけではない。

各地で同時多発的に巻き起こった悲鳴とドタバタののち、チームカルアが海岸にその姿を表したのは、それから約15分後の事であった。




「それでモリス、あんたあたしに黙って全員集めたってのは、一体どういう了見だい?」

マリアベルは横に立つモリスをジロリと睨んだ。

だがモリスは動じない。すでに理論武装は完了している。

「あはははは、だって校長、これカルア君案件でしょう? どうせ見たあと全員に話をするんだからさ、なら初めから全員で見たらいいじゃない」


どこまでも能天気な、だが間違いとは言えないモリスのその返答にマリアベルは軽く頭を押さえ、諦めたように溜め息を吐いた。


「で、ラーバル。あたしにゃあ生徒達が楽しげに海で遊んでるだけに見えるけど、一体何処に問題があるってんだい?」

「・・・その楽しげに遊んでる生徒達をよく見てください。特に彼らが乗っている乗り物を」


ラーバルの言葉に、よく目を凝らして生徒達を見るチーム一同。

やがて彼らの顎は徐々に下がってゆき、それとともに愕然とした表情へと変わっていく。


「なっ、何だいあの乗り物は!? 海に浮かんでるのかと思ったら宙に浮かんでるじゃないか! 念のため訊くけど、あれを作ったのは・・・」

「ええ、カルア君です」

「やっぱりかい・・・」


そしてラーバルは説明した。

ラップスとクーラから聞いた話も含めて。

「生徒達が乗っているアレその物は、普通に道具屋で売られている水遊び用の浮き袋です。どうやらカルア君はそれに魔石をコーティングし、そこにベクトルを発生させる付与を行ったようです」


「ベクトルって、カルアがミレアの戦闘スーツに付与したアレかい? 確か、属性魔法から発現体なんかを移動させる力を別概念とするとか何とか、昔誰だったかが発表してそのまま埋もれてった論文を・・・」

「ええ、カルア君が何となく実証してしまったというアレです」

「あはははは、ベクトルは最近のカルア君のお気に入りだからねえ。戦闘スーツ以外だって、撲撲ボコボコ棒とか操化身アバターなんかは初めからベクトルありきで作ってるみたいだし。ああ、そう言えば僕の操化身アバターっていつ作ってくれるんだろうねえ」


マリアベルはラーバルとモリスの言葉にふむと頷き、

「で、その『ベクトル』を付与してやるとあんな風に移動したり浮いたり出来るってのかい」

「そうそう、戦闘スーツじゃあ空中戦を繰り広げてたし、ダンジョンの精霊君達は操化身アバターで飛び回ってるし。まあそれ自体は今まで見てきた光景だけどさ、あれは流石にちょっと・・・」


そう、問題は技術ではない。


「ええ。今まではカルア殿のパーティが人目につかない場所で使用していましたが、今回は・・・」

「そうなんです。魔力操作だけで誰でも使えるようにし、しかもそれをクラスの一般生徒全員が普通に使ってしまって」


問題はその技術を誰にでも使える魔道具として落とし込んでしまった事。


「口止めを・・・って訳にはいかないだろうね。広まるのは時間の問題だ」

「ええ。唯一の希望は、今時点ではベクトルの概念を魔力に乗せることが出来るカルア君でなければ作ることが出来ない、という事でしょうか」

「うんうん、それにあの付与は多分ロベリー君式じゃないと出来ないだろうしね。ね、ロベリー君?」

「えっと・・・それはそうなんですけど・・・」

ロベリーの歯切れが悪い。


「うん? どうしたんだいロベリー君。そんなに汗をかくほど暑くはないと思うけど」

冷たい汗がつつーーっと顔を流れるのを自覚しながら、ロベリーが口を開く。

「あの・・・ですね、実は私もベクトル、付与できたり・・・」


全員の目がロベリーに向けられ、ロベリーが居心地悪そうに身じろぎする中、その視線を代表するかのようにモリスがロベリーに問いかけた。

「ロベリー君、それ本当かい? 一体いつの間に」

「ええっと、実はですね、以前抜いた魔石でカルア君の撲撲ボコボコ棒を再現した事があって、その時にベクトルを少々――」

「「「ああっ!!」」」


叫び声を上げたのはピノとミレア、そしてマリアベル。

何故なら心当たりがありすぎたから。

というより自分も当事者だったから。

ピノの撲撲ボコボコ棒を解析し、ミレアの依頼でコピーしたから。

マリアベルはそれを使って、気持ちよくゴブリンを吹っ飛ばしていたから。


「そういえばそうだったね。ロベリーあんたそれってつまり、ベクトルを解析して魔法として付与できるところまで理解出来てる、って事でいいのかい」

「ええ。なので、あの浮き袋もサンプルを見せてもらえれば、付与だけなら私だけでも多分・・・」

「はぁ・・・そうかい」


カルアの魔道具を「解析」する事により、ロベリーはベクトルという概念を理解する事が出来た。

それはつまり、この先ロベリー式付与術が広まるにつれ、同じ事が出来る者が増えていくという事。

これはもう避けられない未来であろう。

チームカルアの研究者組と生産者組は、全員同時にその結論に至った。


そして・・・


「ししょー、せっかく海に来たんだから遊びましょうよ」

「そうだねミレア、今あたし達に出来るのはそれくらいだ。なら精一杯海を満喫しようじゃないか」


現実から逃避した。



「あの・・・アレはどうしましょう」

ラーバルの問いに、

「生徒達の浮き袋は合宿所に戻る前に全部もとに戻すようにカルア言っときな。漏れが無いようにきちんと教師達が間に入って段取りするんだよ。それで生徒には口止めしときな。まあ多少は話が漏れるだろうが、実物が無ければ信憑性が疑われるだろうさ」

と指示を出すマリアベル。


現時点ではこれが取り得る最良の手段ではあるだろう。

「はい、ではすぐそのように手配します」

ラーバルは教員達に指示を出すべく、彼らの元へと去っていった。

多少なりとも肩の荷が下りた、そんなほっとした表情を浮かべながら。



「さぁて、じゃあみんな今からは海の時間だよ。あちらの更衣室を借りて持参の水着に着替えようか」

「あん!? モリスあんた、『持参の水着』ってどういう事だい!?」

「いやあ、多分こんな感じの展開になるんじゃないかなあって思ってさ、みんなには水着持参でって言っておいたんだよねえ」


平然と答えるモリスに、強張った笑顔でマリアベルが迫る。

「ほほう・・・そいつは随分と準備がいいじゃないかねえ」

「ええっと・・・校長も着替えを・・・」

「あたしが持ってきてる訳ないじゃないか!! モリス、あたしを家まで連れて行きな! 当然拒否なんかしないだろう? ほらさっさと行くよ!!」

「はいっ喜んでっ!!」


こうしてチームカルアが合流し、いよいよ完全なる水着回が始まる。




「オートカ先輩お待たせっ。どうかな?」

「ミレアさん・・・ええ、よくお似合いですよ。とっても素敵です」

「やった! あっちの静かな方に行きましょうよ、ししょーが帰って来ないうちに」

「はは、そうですね。じゃあ行きましょうか」

オートカとミレアはふたりきりの時間を選択した。


「しっかし見事な砂浜じゃな。ここはひとつ、童心に帰って砂の城でもぶっ建てるとするかの」

ミッチェルはひとり砂の城づくりを始めた。

土魔法、そして錬成魔法全開で。


「さあピノ様、一緒に――」

「ダメよロベリー!」

腕を絡めてきたロベリーに、ピノはぴしゃりと言い放った。


「え? あれ?」

「ほら見て、みんな思い思いに行動を始めたでしょ? ここであなたが私と一緒に来たら、戻ってきたモリスさんはベルベルさんとふたりきりになっちゃう」

ロベリーは辺りを見回し、

「うわ、それは室長ちょっとかわいそうかも」

と頷いた。


畳みかけるピノ。

「でしょ? だからロベリー、あなたはモリスさんと待っててあげて」

「え? でもそれじゃあピノ様が――」

「いいの、私の事は気にしないで! ほら、そろそろ戻ってくる頃だよ」

「う、うん・・・分かった・・・じゃあまた後でね」


更衣室のほうに歩いていくロベリーを見送り、

「ふふっ、カルア君今行くね」

にこやかにピノはを走りだした。


丁度更衣室から出てきたブラックの姿は気づかなかった事にして。





うーん、混んできたから少し沖の方に移動しよっと。

ついでにスピードテストもやっておこうかな・・・ってこれ、結構速い!

へぇ、波にぶつからなければこんなにスピード出るんだ・・・


気持ちよく走っていると、急にカルア号が少し沈んだ。

まさかどこかに穴でも開いた? でもぶつかるようなものは何も――


「カールーアー君っ」

「えっ!?」


風を切る音に混じって、すぐ後ろから名前を呼ぶ声が――いや、ここ海の上だよ!?

誰もいるわけない・・・まさか怪奇現象!? どうしよう、怖くて振り返れないよ。

「ねえ! カルア君ってば!」


あれ? この声、まさか・・・

恐る恐る振り返ると、そこにいたのはやっぱり・・・

「ピノさん!?」

水着姿のピノさんだった。



カルア号を止めて、あらためて振り返る。

「ええっとピノさん? どうしてここに・・・っていうかいつの間にボートの上に?」

だってさっきまで絶対誰もいなかったよ?

それに高速で沖に移動中だったし。


「ふふっ、モリスさんから呼び出しを受けてね、チーム全員でここに来たの。それで海の上を走ってるカルア君の姿が見えたから、追い掛けてきたのよ」

「追い掛けて、って・・・あれ? 乗り物は?」

「無いよ? だって走ってきたから」

「ああなるほど」


もの凄いことを当たり前みたいに言っちゃうんだもんなあ・・・

やっぱりピノさんはバーサクなフェアリーさん。


「それでこれがカルア君が作った『動かせる浮き袋』?」

「ええ。一応『魔力ボート』って呼んでます」

「へぇ、魔力ボートかぁ」


カルア号って名前は内緒。

自分の名前をつけるとか、ちょっと恥ずかしいから。


「あ、そうそう。後で誰か先生が言うと思うけど、他の生徒みんなの魔力ボートは合宿所に戻る前に全部もとに戻してもらうことになってるからね」

「え? せっかく改造したのに?」

「うん。もったいないけど、校長先生が『軍事的脅威レベル』って言ってたから」

「あ・・・」


そっかぁ、言われてみればそうかも。

アーシュに頼まれてパーティで遊んで、そこからなんか流れで全員やっちゃったからなあ・・・


「でもほら、それはまだ後の話だから。今はいっしょに・・・遊ぼ?」


顔を近づけてそう言うピノさんは、すっごく可愛くって・・・

「はいっ喜んでっ!!」

もうホント、喜んで!!



まずはピノさんの座席を作らなくっちゃね。

ええっと、今は一人乗りだから僕の座席が真ん中に。

これを移動して、もうひとつ・・・どう並べよう?


「ねえカルア君、ちょっと椅子を広げてくれる? 並んで座ろ?」

ピノさんのリクエストで、椅子を二人掛けベンチの形に変えて・・・

「うん、じゃあカルア号はっしーん!!」

ピノさんの合図で・・・って、あれ?


「カルア号?」

「うん、カルア君が作った船だからカルア号。ダメ?」

「だっダメじゃないですっ! カルア号、行っきまーーすっ!!」


ビックリ。

偶然だけど、僕がつけたのと同じ名前をピノさんも。

何だか嬉しいな。



ピノさんが一緒だし、あまりスピードを上げないほうがいいよね。

カルア号、ちょっとゆっくりめで。


「うわぁ、風が気持ちいい。自分で走るのとはやっぱり違うなあ」


よかった、ピノさん喜んでくれてる。


「じゃあカルア君、そろそろ本気で行ってみようか」


と思ったら、物足りなかったみたい。

じゃあ遠慮なく。スピードテストの途中だったしね。

行け、カルア号! 海の彼方へ!!


――ってストーップ!! 止まってカルア号!!


「っぷはぁ・・・はぁはぁ・・・」

「ん? どうしたのカルア君?」

「・・・ちょっと、息が出来なくって」

「ああそっか、だったら身体強化ね。それで息出来るようになるよ」

「ああなるほど、そっか・・・でも僕はこっちかな」


カルア号を結界で囲む。でも全く風が当たらないのはちょっと違うって気がするから、前の方は足元からだけ風が入るようにして、後ろは全解放で。


「じゃああらためて、発進!」


後ろを見ると陸地はどんどん遠ざかって、もう遥か彼方に。

まあでも、何の心配もないんだけどね。

『遠見』で位置は確認出来るし、何かあったら転移で戻れるし。

それに隣にはピノさんがいるから。




しばらくふたりで風の音を聞くだけだったけど、やがてピノさんが話し掛けてきた。

「ねえカルア君、最近どう? ご飯はちゃんと食べてる?」

「ええ。ちゃんと食べてるし、ちゃんと休んでます」

「前作ったご飯はまだボックスに残ってる?」

「ええと・・・もうあと少しくらい」

「そっか。じゃあまた一緒に作ろ?」

「はいっ、やった!」


「カルア君最近忙しかったでしょ? セカンケイブのあと、セントラルやフィラスト、それにサーケイブにも行って。そういう時ってね、自分では元気なつもりでも、気づかない疲れが溜まってたりするの。だからね、上級冒険者の人達なんかは、そういう時は意識して無理矢理にでも身体を休めるようにしてるの」

「へぇ! そうなんですか!」


さっすがピノさん、いい事教えてもらっちゃった。

上級冒険者がやってるんだから、絶対真似したほうがいいよね!


「忙しいって言えばピノさんの方はどうです? ギルドの仕事は落ち着きました?」

「ええ、パピとピコが入ってくれたおかげで、かなり楽になったの。前は3人だったけど、パルムと2人だけになってだんだん大変になって・・・そんなタイミングで魔法の鞄の貸し出しが始まったでしょ? それに森やダンジョンに行く度にもの凄く大量の魔物を持ち帰る時空間魔法――」

「それ僕の事だよね!?」

「ふふふっ」


「でも今は4人でやっと――」

「うわっ!?」


突然カルア号のすぐ前で大きな魚が跳ねて、カルア号の結界に激突!

その魚は海に落ち、海面すれすれを大きく旋回してまたジャンプしてきた。

「危なっ!」

急いで右にベクトル移動! 何とか避けられた。

何あの魚!? このボートよりも大きい!! もしかして狙われてる!?


「今のお魚って・・・もしかしてママグロかな?」

「ママグロ、って?」

「マグロ型の魔物ね。もう一度見ればもう少し分かると思うけど」


そんなピノさんのリクエストに応えたのか、ママグロがまた跳びかかってきた。

でも今度は予測してたからね。その動きは空間ごと把握してたよ。

で、ひょいっとカルア号を動かしてママグロを避ける。


「うん、間違いない。あれはママグロの王様、マクロマグロだ!」

「マクロマグロ?」

「ええ、マグロの王様クロマグロ。そのクロマグロ型の魔物ね。最高級食材だから絶対ゲットしよう!」

「じゃあ次のジャンプでスティールします」

「うん、頑張って」


ジャンプのタイミングを見計らって、

「『スティール』! えっ?」

弾かれた!?

「マクロマグロ、『スティール』出来ないみたいです」

「うーん、もしかして・・・うん分かった、じゃあ次は私がやってみるね」


そして今度は、真後ろからマクロマグロが襲い掛かってきた。

もしかして、カルア号は後ろが無防備だって気づかれた!?


僕の横ではピノさんが椅子の上で体を後ろに向けて、そして右手を突き出し、

「はっ!!」

え!?

ピノさんの手から魔力の塊みたいな何かが飛び出してマクロマグロの眉間に直撃、それがカウンター攻撃になって、目を回したマクロマグロが動きを止めて海に浮かんだ。


カルア号の速度を落としてゆっくりとマクロマグロに近づいて・・・うん、もう動けないみたい。

「カルア君、もう一度スティールしてみて」

「はいっ。『スティール』・・・あ、出来た」

「やっぱりね」



魔石とマクロマグロを収納し、そろそろ戻る事に。

砂浜に向かうカルア号の中で、ピノさんにさっきの事を訊いてみた。


「最初『スティール』出来なかったのに、どうして出来るようになったのかな」

「ああ、あのマクロマグロはね、身体強化してたの」

「そっか、それであんなに速くて頑丈だったんだ」

「うん。でね、その身体強化の魔力でカルア君の『スティール』を弾いてたんだと思う」


「・・・・・・あっ、そうか!」

今までスティールが効かなかった強い魔物達。

魔力量が多いからって話だったけど、身体強化だって体の中に魔力を巡らせるから、それでスティールを防ぐ事が出来るのかも。


「じゃあピノさんがやっつけてから『スティール』出来たのは――」

「ふふっ、目を回して身体強化が解けたんじゃないかな」

「そっかぁ・・・あ、そういえばさっきのピノさんのあれって魔法?」

「ううん、魔法とはちょっと違うかな。あれは圧縮魔力弾って言って、体内の魔力をギュッと固めて飛ばす技よ。最近出来るようになったの」

「凄い!」




砂浜に戻ると、そこにはさっきまで無かった大きな城が。

ミッチェルさんの指示で、ノルトや他の土魔法属性を持ってる人たちが沢山・・・みんなで建築作業中?


ベルベルさんは校長先生達と一緒に話をしてるし、ギルマスはネッガーやバック達身体強化系のみんなに囲まれて。


ミレアさんはオートカさんとふたりで楽しそう。

そこから少し離れた場所では、モリスさんとロベリーさんが・・・何だかいい雰囲気?



そして・・・

「ああっ、やっぱりピノさんと一緒だった! ったくあんたは急にいなくなって! 学校行事なんだから部外者と一緒にどっか行ったりしちゃダメじゃない!」


アーシュがもの凄く怒ってる。きっとそれだけ心配かけちゃったんだ・・・

ごめんアーシュ、ちゃんと謝るからさ、まずは落ち着いて聞いてくれる?

そんな事を考えてたら、無意識にアーシュの耳の後ろあたりに右手を当ててた。

「心配かけて本当にごめんねアーシュ。次から気を付けるよ」

「わわわわわ分かればいいのよっ!!」


走って行っちゃった。

やっぱりまだ怒ってるんだろうなあ。

うん、後でもう一度ちゃんと謝ろう。




・・・あれ?

どうしたのかな、背中のほうから何かひんやりと――――

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