46 悪魔狂騒曲 Blame It On the Demon
◆
悪魔。
美味そうなエサで人間をたぶらかし、しかるのちに契約の穴をついて魂を奪うのが常道。
姿形も大きさも態度も様々だ。
本来、特殊な才能と
あれらは偶然の喚び出しを必然にするために自身の召喚法をあらゆる手を使って広めようとしている。
契約を重んじるが、一方でその契約の楔から解放されることを画策している。
高い知性と邪悪な行いで文明社会に悪影響をもたらす。
他の領界から略奪を行う機会を貪欲に探し求めている。
縄張り意識と虚栄心の強いものらは、人々の賞賛と畏怖と信心を巡って競い合い、予言のような予測を作り上げて自らの神殿に民衆を駆り立てている。
混沌と破壊の強大な闇の勢力。
世界全ての命の終わりをもたらすことを目的とするものもいるし、すべては暇つぶしとして犯罪集団や宗教団体、国家などを造ったりするものもいる。
◆
14ヶ月前──。
◆
『あたしんのなんだからあああアアアア────…………おまえ』
生々しい肉でできた人面花の巨大オブジェのような姿。
見上げた先にはあの日あの時に出会った十字路の悪魔。
アイツを生き返らせることを願った相手。
「や、ハロー、ハレちゃん」
悪魔の陰からひとりの女の馴れ馴れしくも懐かしい声。
生きている。
記憶にある通りの、いや、この3年あまりで少し成長した元気な姿でアイツは今ここにいる。
「なんで……なんでここにいる……? セン」
「やだなあ、ハレちゃんが願ったんでしょ?」
「……ちがう」
苦々しく顔をしかめた。
霊安室の冷たい廊下を思い出した。
「ひどいなあ。うれしくないの?」
「お前はもう死んでいる」
「ユーはショック?」
「ふざけてるんじゃないよ」
「わたしはうれしいよ。だってハレちゃんが命を賭けて生き返らせてくれたんだもの」
「そんなつもりはなかったよ」
あはははと、センは快活に笑った。
「でも残念だなあ。せっかく会えたのに、もうお別れしなきゃならないなんて」
「あん?」
そこで周囲に舞う光の粒を緩慢な動きでにぎにぎと追いかけていた悪魔がこっちを見て叫んだ。
『あたしのなんだからああああ! おまえあたしんのっ! いただきますっ!』
「いただきますっじゃねえ‼︎ なんでコイツがここにいるんだ!」
黙って微笑むセンを指差して悪魔を睨んだ。
「死んだことも何も思い出すことなく別の場所で平和に暮らしてるはずだろっ。変な夢かと思ってした約束でも契約だろ? 守れよ!」
『だってぇ、こいつが勝手に思い出して……』
「だってじゃねえ! 契約不履行だ」
『エエッ⁉︎』
「無効だ!」
『エエッ? だめっ! ……うう、おまえ……あたしんの……』
「じゃあ話し合おうじゃないか。折衷案をさ」
『ううー……わかった』
よし。勢いだけで妥協を引き出した。ぐっと拳を握った。
『じゃあ、半分かじっていい?』
「なんでだよ。いいわけねえだろ」
『じゃあ半月待つ』
「おい勝手なこと言うな」
『半月待つ』
「おい、ふざけるなよ」
『半月待つ』
どんどん圧が増してくる。漏れ出た
「……短すぎる」
『半月、待つ』
「ぐ、この……じゃあ、お前に協力してお前の敵を討つ」
「てき……?」
ぐりん、と首を傾げる悪魔。
「お前に嫌がらせしてくる他の悪魔とか、お前のことが嫌いな他の悪魔とか、なんかどっかその辺にいる悪魔どもにいじわるしに行くんだよ」
「いじわる……するっ!」
「じゃあ決まりだな…………はぁ」
疲れる。
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