44 異世界の発露 アザーワールドリィ・アウトバースト




『ブレイキング・ニュースのライブ中継から、デバル曹長のコメントです』


『西海岸時間14時46分において、世界の十二の地域が侵攻を受けた。これはいずれも未知の敵による組織的な攻撃であると思われる。侵攻地点はどれも沿岸部である。統制の取れた迅速な攻撃から考えて、これは典型的な軍事的侵略である。ニューヨークでは多数の死傷者が出ている。ボストンでは軍が防衛陣地を敷いた。世界標準時13時15分にはサンフランシスコ及びサンディエゴとの通信が途絶えた。情勢は不明である。現時点において西海岸で戦うことができるのは我々のみとなったようだ。ロサンゼルスを失うわけにはいかない』


    ◆


 あの日の惨劇と混乱は、日本だけでなく、世界中で、文字通り降って沸いた。


    ◆


『地中海沿岸諸国の広い範囲に渡り隕石が落ち──』


『前例のない規模の流星群が世界中で観測され、内一つが東京に落ちたとの情報が──』


『ロサンゼルス東部に住んでいる人は家から出ないように──』


『正体不明の敵が各地の沿岸部に現れ、迅速で組織だった攻撃を仕掛けたとの情報があります』


『詳細についてはまだ不明ですが──』


『今夜、中国政府が各国に先駆けてエイリアンに宣戦布告しました』


『──今わかってることは一つ、世界中が戦争状態ということです』


    ◆


 ──そちらの状況を報告せよ──

 ──CPリーグ・スリーの西2kmで輸送機が墜落──

 ──被弾した! 被弾した! 掴まれっ墜落す──

 ──司令部との通信ができない、どうなってる?

 ──北東3キロ地点の民間人から救助要請あり──

 ──くそ。くそくそくそくそくそ──

 ──配置区域を死守せよ──


    ◆


『さきほど州兵の警備艇から救難信号が発信されたということです。ここからでははっきり見えませんが沖の方に──大変ですまた隕石が一つ海に落ちました、これまでで一番海岸に近く、警備艇のすぐ後ろです。隕石がまた二つか、三つ落ちてきました! スタジオに何か情報はありませんか? ああ! 警備艇が横転炎上しています、大変です!』


『ケイトっ? ケイト聞こえます? ケイト! ケイト聞こえるっ⁉︎』


『ええ! 聞こえてます! あれは……一体なに? はっきりとは見えませんが何かがいます! 大勢の人の間から見ているのでよく見えないのですが、なんでしょう、もしかしたら、はっきりしませんが人影のようなものが。数は、いち、に……ご、ろく、なな、いえ──私は避難します! ここから逃げないと危険だと思われます! カメラを止めて逃げるわよ! 警察が……! 早く逃げないとルーカス来て! 大へ──』


    ◆


【How It Ends】THE APOCALYPSE 【すべての終わり】

 ○popo

 |敵は何モンだと思う?

 |○molder

 |地球外生物かな?

 |○princess peach

 |宇宙から来たのか?

 |○timtim

 |いや違うね、カナダからだな

 |○princess peach

 |そういうのいいから

 |○timtim

 |だってあそこだけドワーフに助けられたとかファンタジーなこと言ってんだぞ

 |○molder

 |そんなこと言ったら、日本人を見てみろよ。そら出番だぞ日本人

 ||○日本のぽんぽ

 ||kappa? Kappappa? Kapaaaaaah!

 ||○モロダシクリエイティブ

 ||かぱー。

 ||○maruo

 ||河童?

 ||○モロダシクリエイティブ

 ||かうp──

 |○timtim

 |さすが日本人、イカれてやがんな

 ○tnump

 |普通に考えてどっかの国が仕掛けた侵略戦争だろ

 |○puni-chan

 |どっかって?

 |○mynamegreg

 |そりゃあ……おっと、誰か来たようだ

 |マジで誰か来た、こんな時間に? 誰だ

 |


    ◆


『第一分隊整列して搭乗しろ!』

『第二分隊集合!』

『重大な事態が発生している。我々は未知の敵と戦う。敵の戦力も装備も全く不明だ。一つわかってるのは、我々が戦うのは、国土と、家族と、故郷を、守るためだということだ。相手が何者だろうと海兵隊の力を見せろ!』

『トゥ・ファイト!』

『退却クソくらえッ‼︎』

『出動だ!』

『行くぞ!』『続け!』『おら、乗り込め! ゴーゴーゴー!』『一番乗りして最後まで戦い抜け!』


──状況報告の通信にはこの周波数を使用せよ──

──敵は上陸から臨海地域を越えなお前進を続けている。敵は数千に及ぶとの情報あり、正確な数は不明、──

──101戦車ワンオーワンが破壊された、防衛線より前の部隊からは通信が途絶えている──

──敵はかなり強力な銃器を装備しているものと思われる。破壊力は高性能爆弾に相当する、我々の兵器より上だと考える他ない──


『──あー、敵の部隊は、戦略的な動きをしている。統制の取れた集団だ。敵をー、侮ってはならない。街の中心部で民間人の避難がかなり遅れている──』


──敵の攻撃を受けた! 敵の攻撃を受けた──


『敵前線後方に逃げ遅れた民間人がいる──侵略者の正体は不明だが相手は地球の生物ではない。あらゆる兵力を総動員して敵を撃退しなければならない。空爆まできっかり三時間。残された者の救出が必要だ』

『ああ、ハァ、あー、現場に、行ってきまー』

『民間人の数は不明。お前たちと民間人が脱出できなくても、時間通り空爆は行われる。急いで民間人を見つけて避難しろ』

『りょーかーい』


 ──全隊に告ぐ。人間以外に出会ったらすべて殺せ。健闘を祈る、以上──


    ◆


『──国連はこの非常事態の対処法を考えるため、各国のブレーンを招集した模様です──』


    ◆


 この日、人類が遭遇した不慮の変災は『ワールド・アサルト』と呼ばれることになった。

 以降、壊滅的な被害を受け、都市の放棄を余儀なくされた惨事を海外に倣い日本国でも『大強襲』と呼称し、そこまで行かずともモンスターが溢れ出し深刻な被害をもたらした事変を『騒乱強襲』と呼ぶようになった。


 ──ロサンゼルス大強襲アサルト

 ──第一次代々木騒乱強襲メイヘムレイド


 地上にも地下にも、人類の支配が及ばない土地──『異境アウトランド』が多く出現した。

 特に『迷宮ダンジョン』と言われる出入り口が限定的な閉鎖空間を抱えた土地では、これより先いく度も『騒乱強襲』に悩まされることになる。










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