40 painを唄う
『私を殴るのなら、恥を知るがいい!
Strike me, shame on you!
手加減せんぞ!
I won’t go easy on you!』
そんな言葉とは裏腹に、ウォルラスは苦しげに呻きながら後ろに下がり距離を取った。切断された半身は、応急処置にか紫のエネルギーが覆っている。
バシャ、バシャっとまた嘔吐しながら、残った右腕をひらめかせ、蛸足で床を叩いた。
魔法円が展開される。
──召喚魔法!
「
気づいた瞬間に用意していた呪文を起動。打ち消しにかかるが、魔法円は広がりきるとゆっくりと回転を始める。
キャンセルできず弾かれた。
ご丁寧に【
魔法円がひときわ輝き、消えた。
代わってそこには一人の男が立っていた。
ストリートファッションに身を包んだ、普通の、若い男。
微動だにしないその彼を、ウォルラスは髭代わりに生えた四百本の触手をグルグルと巻き付けて拘束し、自身の目の前に吊り上げた。
止める間も無く──。
白く太い二本の触手がうねり、一本が口に突っ込まれ、もう一本が額に穴を開け頭蓋内部に潜り込んだ。そのほか無数の細い触手は、目、耳、鼻に殺到した。
がくがくと身体が跳ねる。
中身を啜るおぞましい音。
数秒で枯れた死体ができあがり、拘束を解かれた彼は床に落ちると踏み砕かれた。
ドンと蛸足で踏み込んだウォルラスがマルオに向かった。
右手指から五本の刃爪。
あの図体で速い。【
念動力で〈
マルオの前に床から新九郎が現れたが、ウォルラスはすでに反転していた。
最初から狙いは俺だった。
右の〈紅斧〉を振るう。
刃爪と激突、金属が軋むような擦過音。
続いて左の〈青斧〉を振るう前に、突き刺すような蛸足の打撃が襲いくる。
かろうじて間に斧を挟んだ。
斧が砕け、腹部に痛烈な痛み。
ごろごろと床を転がった。
『虫ケラがッ!
You filthy scum ! 』
目の裏にナイフで刺すような痛みと、頭を殴られたような衝撃に脳が揺れた。
視界にノイズ。かすれ、狭まって、暗くなっていく。
ヤバい──。
▼
意識は俺の身体を俯瞰していた。
俺が見つめる先で、俺自身の表情が揺らぎ、両目から生気が消えた。
精神の防壁は構築した。
しかしまさか【
みんなとは逆方向に転がされていたせいで距離がある。
身体を支配され【
これは、死んだか──ブツッ──と視界が赤い光と共に切れた。
▼
「────無事っ?」
その声で上体を起こした。
肩に手を置いた宮持環の顔。
「くっ……」
頭痛を感じる頭を振る。
「ああ助かったありがとう。脳を焼かれかけるとは」
両手の手指を動かす。
「アイ・ハヴ・コントロール。沢木雪花もありがとう」
最後の瞬間、割り込んでくれたのは彼女の烈光だろう。
周りは俺たちを囲うようにみんなが背中を向け、周囲を警戒していた。
「ウォルラスは?」
「奥」
「行こう」
立ち上がり走る。
(──俺はどんくらい?──)
(──六十秒──)
察した新九郎がすぐさま答えをくれた。
▼
扉のないアーチ型の入り口を潜り別の広間に走り込む──悲鳴。
一人じゃない。いくつも、男も女もいる。
棚の間を抜け出す。
「助けて!」
「誰か!」
こちらへ逃げてくる人たち。
その奥にウォルラスと、奴の蛸足や触手に吊り上げられている人たち、そして足元には枯れ果てた姿で打ち捨てられている人たち。隅でうずくまり怯える人たち。
混乱と混沌があった。
女性が助けを求め、こちらに手を伸ばす。その手を掴む前に、触手が彼女の胴体に巻きつくと、十m以上の距離をあっという間に攫っていった。
「いやあああぁあぁぁぁ──!」
ウォルラスは隅に固まっている者たちより、こちらに逃げてくる者たちを優先して襲っている。
走る。
横を赤い光が
俺は〈
横合いからワラワラごぶごぶとゴブリンが出てきた。
沢木雪花が烈光を床にぶつけた反動でそっちへ跳ぶ。
触手を切り落とし、逃げてきた何人かをマルオと宮持環に受け渡す。
新九郎は石床に沈み込むと、ウォルラスの眼前に現れて斬り結ぶ。新九郎の
新九郎のスピードが異常に上がっていく。
それを横目に俺は、隅に固まってる人たちの前に陣取って、伸びてくる触手を切り捨てた。
ズキリ、と痛みが両目の裏に駆ける。
思わず一瞬目を瞑り開くと──。
俺はフードの男と対峙していた。
◆
ウォルラスの精神攻撃かと身構えたが、目の前の情景に違うようだと考える。
目深に被ったフードに顔の半分は隠れてる。
露出している部分の顔や手にはびっしりと神秘文字が刻まれている。おそらく全身そのような状態なのだろう。一つ一つの文字が青紫に不気味に発光する。
口が動いてる。
何かを言ってるようだが、音がない。
何も聞き取れない。
俯いていた顔が少し上がり、フードの奥の光る眼がこちらを見た。
眼球にすら刻まれた神秘文字が強く輝いた。
◆
周りをと見れば、マルオと宮持環はパニック状態の保護した人々を落ち着かせるのに四苦八苦しているところ。
沢木雪花はゴブリンを蹴散らし中だが、被害者たちを改めて目の当たりにしたことで、動揺で注意力が散漫になってる。戦闘に集中しきれていないせいで烈光の威力が下がってる。
俺の後ろ、抱き合うようにして固まってる人たちは今のところ大人しくしてくれてるが、ウォルラスの間合いの中、今離れるわけにはいかない。
新九郎が灼熱の剣を振るい、ウォルラスの蛸足を根本から切り飛ばし、ウォルラスが叫んだ。
ウォルラスは片手といえど、蛸足や触手を使っても新九郎に追いつかなくなっていた。
細い触手のいくつかが空中に魔法円を描き出す。
──【
「【
すぐさま対抗呪文を唱えた。
魔法円から飛び出した金の鎖が新九郎に向かう前に崩れて消える。
一瞬こっちを見たウォルラスが小さな目を血走らせて忌々しげに唸った。見るからに余裕はない。
激しい息切れ、開けた口からヨダレを撒き散らして新九郎に威嚇の声を上げ、刃爪を振る。
あと気を付けるべきは
俺は丁寧に構築した呪文を展開、新九郎の精神にプロテクトをかけた。
そのタイミングで新九郎とウォルラスが剣と刃爪をぶつけ合って至近で睨み合った。
ウォルラスが上からのし掛かるように新九郎の目を覗き込む。その目に青い光が点る。精神波が放たれる。
──無駄だ。
そう思った──覆された。
新九郎が苦しげに身体を折る。
ウォルラスが口元を歪め、音もなく笑う。
ウォルラスの巨体の陰、小さな魔法円の列が新九郎への精神攻撃を補助していた。
【
【
【
【
【
【
【
「くそぉっ!」
首元を押さえ、呼吸を忘れた新九郎がウォルラスの刃爪に斬られ蹴り飛ばされて吹っ飛んだ。棚に激突し崩れたそれらに埋もれて消えた。
さらに、ウォルラスの身体の中から魔法陣が飛び出した。三次元的な複雑な
ウォルラスの全身が震えるようにブレた。
次の瞬間には、切断された半身は元通り。
それどころか、
ウォルラスに疲労も見えず、魔力も回復している。
最初に
そう、まさに振り出しに戻った。
俺は、さっきウォルラスがブレた時の挙動に見覚えがあった。
時間の【巻き戻し】みたいだと思った。そして間違ってないんだろう。どのような魔法を使ったのか知らないが、奴は自身の時間を巻き戻した。
『goo,goo,g'joob』
グーグージョーと笑う声。
魔力まで元通りとかありなのか。なしだろ。ふざけんな。
数百の細い触手と蛸足が殺到する。
後ろで悲鳴が上がる。
「
六角形の白い魔力盾がカチカチカチカチと張り合わされドーム状に覆う。
触手と障壁が豪雨のような音を奏でる。
当たる度に魔力が削られる。
「く──」
ピシリと障壁がヒビ割れた。
「
それでも。
ドス、ドスと貫通される。やがてガラスの
蛸足に雑に殴られて横に飛ばされる。
悲鳴。
俺は立ち上がり、触手を掻き分けるようにして、攫われてきた人たちの元へ向かった。
「いい加減にしろッ! このタコっ‼︎」
触手を引き千切って叫んだ。
なぜか、そこでウォルラスは動きを止めた。
触手の群れが左右に開き、ウォルラスと視線が通るようになった。
「彼らを放せ」
「断ル」
ウォルラスは静かに言った。
精神状態も最初に戻ってる。
いや、奇妙なことにもっと落ち着いているように見える。
「お前はなんで……なぜ殺す? 生きるのに他人の血が必要だとか、人間を食わなきゃいけねえとか、そういうんじゃないくせに」
ウォルラスは仕方がないなと言うかのように、笑っただけだった。
「お前は何も思わねえのか? こうして話せるのに。嬉しいとか悲しいとか、お前にだって感情はあるんだろうがよ……! なのになにか守りたいとかだれか護りたいとか生きる意味とか思い遣るとか! ……ねえのかよ」
「優先サレルベキ生存ノ前ニ、心ダノ生キル意味ダノ、マシテ他人ノソンナモノニ囚ワレルナド、愚カナ。人間ハ脆弱ナクセニ強欲ダ」
「……そうだ。俺たちは
「………………確カニソウカモシレヌ。シカシ、私ハ既ニ克服シテイル」
「克服?」
俺は緊張感のない笑い声を上げた。
「命の別名を心っていうらしいぞ。持っていた心を喪ったお前はもう死んでんだ。死んだ奴が今を必死こいて生きてる奴にちょっかいかけんな」
「弱イ生物ハ滅ブシカナイノガ世界ダ。スグニ解ル時ガ来ヨウ。スグニナ。真ノ絶望ヲ知ル前ニ終ワラセテヤッテイルノダ。ムシロソレハ崇高ナ行イデハナイカ?」
「ならまずテメエが滅べ。そしたらチョットだけ感謝してやるよ」
無駄を悟った。
「我ガ行イハ慈悲ダヨ。好キダロウ? オ前タチ人間ハコレガ。ソウダ、我ガ元二来イ。オ前ノ苦痛ヲ引キ受ケヨウ、オ前ニハ特別ニ目的ヲ与エヨウ。何ガイイ? 自尊心モ虚栄心モ富モ名声モソノ全てテガ手ニ入ロウ。オ前ハ英雄トシテ認メラレルダロウ。我ハコノ秘密ヲ完全ニ安全ニ隠シテオコウ。誰ニモ見ツケラレヌヨウニ。特ニ、オ前ニ」
過去のコイツがどうだったか知らないが、きっと歪められてしまったのは姿だけじゃないんだろう。
今の奴の言葉はペテンでしかない。これ以上欺瞞に付き合うのはウンザリだ。
「そういうのはいいんだよ。でお前は一体何が欲しいわけ? 本音を言ってみろってんだ」
◆
俺はイラ立っていた。
ウォルラスと言葉を交わす奇妙な時間にも、まばたきのたびにチラつくフードの男にも。
どちらも薄ら笑いを浮かべて何か言ってる。
なんだって? 聞こえない。聞きたくない。
◆
『goo,goo,g'joob』
触手の一本が攫われてきた人たちを撫でる。頬を「いやっ」、首筋を「ひぃ」。
「心臓ガ早鐘ヲ打ツ、心地良イ。肺ハ締メ付ケラレテ浅クナッタ呼吸、芳シイ。目ニ熱キ涙ガ溢レル、輝カシイ。全身ノ力ガ抜ケ、膝ヲツク、柔ラカイ肉。ソノ血肉モ、苦悶ノ記憶モ感ジタクテ堪ラナイ。世界ノ人口ハ九十億トイウデハナイカ。コノ先長キニ渡ッテ生産性ガ期待デキル。素晴ラシイヨ、人間トイウ物ハ」
◆
フードが少し上がる。その奥の青く不気味に輝く男の双眸がこちらを射抜く。
──…………ああ、マジかなんだ。そういうことか。
アレは────俺か。
◆
ヒトは時の流れに縛られている、その順序に。基本的には。
◆
未来を思い出した。
◆
──瞑想。
瞑想の一義とは、魔力量を増やすための訓練の一環だ。
そして瞑想は〝気づき〟〝ひらめき〟を得るための手段でもある。能力の開眼や新たな活用方法のきっかけを与えてくれるものだと。
どちらも身体に取り込む作業。
神懸かった何かが降りてくるイメージ。
一方で俺が取り組んできた共感とは──心の遍在化。
予測不能なマナ転換に関する古い法。
未だ解かれていないもっとも原始的であり、とても強大で、とても破滅的なものになりうる霊気との繋がり。あらゆる生命に通ずると考えられているそれは、宇宙のまさしく本質で、究極の無限へと至る鍵を有している。
▼
この時の俺は時使いとしての特性が上手く填まった。
▼
無の中へ、全の中へ。
◆
過去・現在・未来の枠組みに縛られない時間観念。
魔法円構築の三つの起点は過去、現在、未来を表している。
◆
魔法の【未来視】とは、力学的に言えば「現在と過去の情報から未来を予言すること」。
先を見ようとするほどに必要とする情報は増え、自然振れ幅は大きくなる。
光というものは、かかる時間がもっとも少ない経路を辿るが、未来を見る時も同じことが言える。
▼
自然とは例外を許さない。それを物理法則という。
強固な調和。
魔法とはただ、扱う要素を壊すことなくこの調和をほんの少し変えてあげるひとつの方法。大切なのは小さく始めること。
▼
空間に輝く繊細な線が走っているのが見えた。それに手を触れると指先に魔法のうずきを感じた。
螺旋模様を描いた。
あらゆる生命がひとつの点から広がる象徴──いや、すでにそれはそこにあった。
渦を巻くようにそれは入ってきた──詠唱を始めた──文字が視界に流れ込む──最初の数音節は簡単に言えた。だが続く言葉は、頭蓋骨の中を金槌が鈍く叩くような感覚をもたらした──自らの身体との接続が切れた──間延びした空間の中──極小の部位へとありえないほど圧縮される。
再構築。
世界は混沌としながらも明瞭で、視界に光の点がいくつも弾けた。自身の過去現在未来もまた分解され身体の奥底へ取り込まれていった。
痛む指先、こわばった内臓。そして次第に感覚が戻ってくると、目の前の光景に口の中が苦みで溢れた。
身体中に刻まれた幻の刻印が不気味に点滅するたび痛みを感じた。まるで何千本もの燃え立つ短剣を突き立てられているようだった。
服装まで別物に再構築されている。
フード付きのシンプルだがファンタジー感のある
▼
肺が燃えるように熱かった。
ウォルラスへと駆けた。
ウォルラスの軽く前に出した両手の爪から魔力刃が伸び、俺に突き刺さった。
心臓や喉、目、頭部。貫通していたが無視して進む。刻印が暗く輝き、血の代わりに黒い塵が舞った。
ウォルラスが消えた。
ただ加速したのではなく、違う時間流に入り込んだ。
気付けば背後──躱す間も無く触手が次々と身体に入り込む。
しかし俺を啜ることはできなかった。
俺が気にせず動けば、触手は俺の
二本指をウォルラスに押し当てる──【
ウォルラスが吹っ飛ぶ。
蛸足をなびかせて、重く、でも水っぽい音と共に壁に激突。
突風が俺のフードを払った。
すでにもうこれ以上未来を思い出すなんてことできないけれど、これだけは言える。
「俺たちの勝ちだ」
ウォルラスが喚いて何か言おうとしていたが、術を叩きつけると全ての動きが緩慢になった。口の動きも同様で、声が間伸びし過ぎていて何が言いたいのかわからない。理解する必要もない。
【魔力弾】を撃った。
蛸足の何本かが千切れ飛び、本体は壁に穴を空けてバウンドしていった。
仲間たちの元へと移動する。
三人は発掘した新九郎の息をなんとか吹き返そうとしていた。
立体的で複雑な魔法陣を構築する。らせんを描く五〇〇mlのペットボトルくらいの大きさ。片側を掴む。もう一方から光が伸びて新九郎に繋がった。
ダイヤルを回すように反時計回りに回転させる。
一メモリごとに新九郎の身体がブレる。
やがて目を覚ました新九郎は何事もなかったかのように立ち上がると、服の土埃を払った。
▼
俺の全身からは黒い塵(チリ)が立ち昇って虚空に消えていく。
一秒ごとに塵の量は増していく。
「だいぶ予定と違うけどマルオ、宮持環、準備はいい?」
「おう」
「うん」
「俺が奴を最初んとこに引きずってく。終わりにしよう」
沢木雪花と新九郎に目を向けうなずいた。
走り出す。
▼
千切れたはずの蛸足も何もかも元通りになったウォルラスに走り込む。
火球が連続で襲ってきたがそれも無視して突っ切る。ボフッボフッと俺の
ウォルラスに飛び蹴り。
触手でなぎ払おうとしてきたがそれも通り抜け、俺の蹴りだけが有効打になる。顔面を蹴り飛ばし、【魔力弾】でぶっ飛ばす。
蛸足を引っ張って走り、最初の広間に入ると放り投げた。
すでにみんながそこに待っている。
マルオがせっせと描いていた魔法陣が輝く。
その中央にウォルラスが倒れ込むと、宮持環が魔法を起動させた。
【
フィールド内のすべての魔法効果が停止した。
マルオから指輪に入っていたバッグを受け取りつつ、ウォルラスが魔法陣から出ないように蹴り転がす。
俺はバッグから刃物を次々出して、魔法で加速・射出。
ウォルラスに突き刺さる。ウォルラスの咆哮。
『 おのれ──!
How dare you──!』
ウォルラスはもはや自分の時間を巻き戻すことはできない。
新九郎が地面から赤熱するやたら長い剣を引き摺り出し、陣の外からウォルラスに突き刺すと、力任せに振り上げてウォルラスを切り裂いた。
▼
半ば切断されたウォルラスの躯が横たわる床には、深い鉤爪の跡が刻まれていた。立ちあがろうとして失敗した証。
今やその怪物は動いていなかった。
▼
足で魔法陣を切って【
沢木雪花が両手の間で烈光を回転させる。紅い光はやがて強烈な白い光を放ち始めた。
極小の太陽を横たわるウォルラスの躯に放つ──陽光が爆発──消滅させた。
▼
俺は自身の刻印の鈍痛と、視界にチラつく暗い輝きと塵を鬱陶しく思っていると、みんなが改めて集まってきた。
マルオが俺の手の甲の刻印を
「でなんなのだ? これは」
「知らん」
「スーパーモードというには見た目、邪悪過ぎないか?」
「知らんつの」
「見ろ、救出した人たちも怯えてる」
ちらっとそっちを見る。『ひえっ⁉︎』俺はため息をこぼした。
「敵ね」
沢木雪花が言い出した。
「きっと次の敵はアンタね。よし! ブッ飛ばす」
「よし! じゃねえよ何が〝良し〟なんだよやめろ」
──これ一体全体現在進行形でどんな代償を払わされてんだろ。
俺はまたため息をこぼした。
「あ」
ざぁーっと音を立て、塵と一緒に剥がれ落ちるように刻印は消え、服装含めて元に戻った。
GLOSSARY
-用語集-
【紅閃/ビーム】
【神経加速/ナーヴスキッター】
【呪文心組/スペルプレパレーションズ】
【逆巻く一時/テンポラル・リバーサル】
【混成圧縮呪文/ポートノタリクス】
【精神的介入/サイキック・イントルージョン】
【時間伸暢術/タイムエクステンダー】
【時感接続/ノンリニア・アクセス】
【降霊術/セイアンス】
【時のらせん/タイム・スパイラル】
【緩慢な動き/スロウ・モーション】
【烈日/サンバースト】
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