第23話 ”戦神”だと”錯覚”していた?
「さて……なぜおまえが生きている? 家を出た雑魚風情がよくのうのうと生き残っているな」
やっぱバレてたかクッソ……。
ギルドマスター含め他の誰もいなくなったことを確認し扉を閉めたのちの開口一番、俺に飛んできたのは死刑宣告のようなルイの質問だった。
俺が生きていたことを知られてしまった。それも情報提供をしたあの短時間、少ない言葉数で。もはや隠し通すことなど不可能だろう。
俺がダンジョンにこもっていたのは元家族の魔の手から逃げるためでもあるが、主な目的としては『錯覚』の練度を上げルイたちを圧倒するだけの実力をつけることだった。
──今の俺に勝算はあるか?
その答えを込めて俺は深く息を吸い言葉を吐き出す。
「だから何だってんだ。お前ら見る目がねぇな。雑魚だって思ってたやつが悪魔倒してんだからよ」
「貴様っ!」
俺の胸倉をつかみ唾を飛ばしながら激昂する。
単純すぎるだろこんなシンプルな煽りに乗っかるなんてさ。俺、こいつと兄弟って思われるの嫌なんだけど。
異様に落ち着いた心のまま『
「ぐあっ!? 貴様っ……何をした!?」
「自分で考えてみな」
ルイの右腕に触れながら『
だけどその脳みそは司令官レベルではなくホーンラビット以下だ。
「ぐああああああっ!?」
ルイの野太い悲鳴が部屋に響き渡る。
このくらいで何痛がってんだ? まだホーンラビットも気絶しないレベルだぞ?
「詐欺師のくせに何をしたっ……! 死刑だ貴様っ……!!」
「ケンカ売ってきたのはそっちだよなぁ? 仕掛けるんだったら自分が痛い目あう覚悟くらい持って来いよ『戦神』さんよぉ!!」
むかつく。心の底から煮えたぎるように不快な感情が渦巻いている。ルイにもルイの弟として俺を誕生させたクソったれな運命にも腹が立つ。
手のひらに生温かい感触が広がる。
自然とルイの腕を握る手に力がこもっていたらしい。
「──!!!」
声にならない叫びをあげのたうち回るルイを見ていると怒っているのが馬鹿らしくなってきた。
こんな奴にエネルギー使ってる暇ないんだったわ。
無造作にルイの手を放す。
「貴様っ……! 落ちこぼれ、我が家の汚点の分際でこの俺に手を上げるとはなっ!」
「いやケンカ売ってきたのはあんたのほうだろうが」
「決闘だ。決闘を申し込む! 貴様は俺の手で殺してやる……!! 執行人になど任せておけるかぁ!!」
めんどくせぇ……。
だけど今後を考えると今叩きのめしたほうが面倒ごとに煩わされずに済むかもしれないな。
「いいぜ、やってやるよ。何なら今からやるか? 俺はいつでもいいぜ。軍のお偉いさん方に泣きついて策をもらって来てもいいぞ? 俺はいつでも待つから」
「貴様っ……!!」
「“貴様“しかしゃべれないの? 専用の鳴き声なの? やっぱ策をもらってきたほうがいいんじゃない? 語彙力すらないじゃんあんた」
「今だ! 今やるぞ! 貴様の侮辱、万死に値する!!」
ははっ。顔が真っ赤になってーら。
☆
──ダンジョン郊外、闘技場。
「闘技場なんて初めて来ました……。大丈夫ですよね? 死にませんよね?」
心配そうな目で見てくるリエルに対し、力強くうなずくと、
「悪魔に比べれば楽なもんさ。こんなもの見せしめに過ぎないんだよ。ほっとけっていうメッセージ付きのな」
闘技場にはステージを取り囲むように客席がある。軍幹部の中でも名の通っているルイの決闘ともなれば大勢の観客が訪れるのは容易に予測できる。そんな中、ルイがどこの誰とも知らないであろう俺に負かされたとなれば相当強い印象を残すことができる。
「ったく俺は“悪魔”倒さなきゃいけないってのに……」
控室の奥から闘技場のスタッフに名前を呼ばれた。
「行ってくる」
「その前に一ついいですか?」
振り返ると不安げにうつむくリエルの姿があった。
「今回の件は全て私がダンテさんと共に行動してしまったせいです。こんなことを言える立場ではないとは思いますが、ダンテさんの強さはパーティーの一員として、あなたを見てきたひとりの友人として私が保障します。頑張ってください」
顔を上げた彼女の瞳には真摯に、純粋に俺への信頼が見える気がした。
「大丈夫だ。んであと、パーティーに加わったのも最初リエルを助けたのもすべて俺の意志だ。それだけは忘れるなよ」
リエルは嬉しそうに俺の手を両手で握りながら、
「勝つって信じてます! 帰ってきたらダンテさんとルイさんのこと教えてくださいね!」
それだけは言いたくないんだけど!?
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【あとがき】
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