第13話 優しくするのはずるいよね

「でさ、スミスくん。アタシにとって、地歴子ウミンが大怪我を負っていると言う事態は(アタシが実験出来ないから)良くないんだよ。」

「なんか、理科先輩の心の声が聞こえたのは俺の気のせいですよね?」


俺を見て、やれやれと言った調子でため息をつく先輩。なんなの、この人。


「で、なんでか知らないけれど、アタシがウミンを襲った犯人だと思われてて大変なの!どうにかしてくれないと、間違えて時限爆弾作っちゃいそう…。」

シュンとした表情でそういうと、理科先輩は俯いた。その横顔はとても綺麗だったが、言ってることでもう台無しである。


「まあ、理科先輩は人を刺すような人じゃないですしね。誤解をとくの手伝いますよ…。」

てか、そうしないと学校がなくなる(物理)


「え、いいの?」

びっくりしたような、拍子抜けした顔で理科先輩は驚く。

「まあ、乗りかかった船ですしね。」

そもそも横からEnglishが足を踏んできているんだ。多分、頼みを断るなってことだと思う。だから、俺が理科先輩の頼みを聞いた途端にぐりぐりとローファーで踏み付けるのはやめろ。


「ふ、ふーん。助けてくれるんだ…?会って間もないのにな…。」

なんだか、心なしか理科先輩の口角が上がっている気がした。どうやら好感度が上がったようだ。それか、いいモルモットだと思われてる。


「…っ!」

なんかさっきまで足を踏んでくるのはEnglishだけだったが、もう一人増えた。

「…ばか。」

文庫は俺を睨むと、足を踏みながらそう言い放った。国語担当なのに、悪口のボキャブラリーが少ないな。


「…で、どーすんの?理科先輩の誤解解くためには真犯人を見つけなきゃじゃない?」

Englishは俺の足を踏むのに疲れたのか、ドリンクバーを飲んだあと、ため息を吐くとそう言った。


「それなら、直接ウミンに話を聞くのがいいんじゃないか?」

「あ、スミスくん。私、ウミンとは親友なんです。時間とってもらえるように、聞いてみますね。」


そういえば文庫は、俺が最初にウミンと話した時に一緒にいたっけ。

てか、現代文と地歴公民が仲良いとか…。文系コンビだなぁ。


「理科先輩にも、親友とかいるんですか?」

ふと、気になって聞いてみる。


「えっと、まあ、いるけどさ…。あの、数学担当の子」

「あー。」

やっぱり理系コンビなんだ。


「俺もそのうちその人にも会ってみたいな…。」

「あ、スミスくん。やめといた方がいいと思うよ?」

理科先輩は珍しく真面目な顔をしている。


「あの子ブラコンだから。お兄ちゃん以外の男の人には当たりが強いよ。」


ぶ、ブラコン…。

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