第9話 スライディング土下座って難しいよね。

「すみません。いくらですか!いくら払えばいいんですか⁉︎せめてEnglishだけでも助けてあげたいんです…!俺の、大切な人なんです!」

俺は、理科室に入るなり、土下座した。


「Oh!a,a,Mr,Sumi…スミくん。大切な人って、つまり…?」

「そうだ!Englishは、俺の大切な親友なんだ!」

痛いっ、なんでEnglishは俺のこと蹴るの?

怨気満腹怨気満腹怨気満腹えんきまんぷくえんきまんぷくえんきまんぷく

痛いって、なんで文庫も蹴ってくるの!?


「えっと、なんか勘違いしてるけど…。私も魔女ってわけじゃ無いから…。土下座されるよりも、髪の毛分けてもらえる方が嬉しいっていうか。」


理科先輩は、俺の前にしゃがみ込むと、困ったように頬をかいて笑った。

その笑顔はとても素敵だけど、言ってることは素敵じゃ無い。


「で?七不思議のこと聞きたいんだっけ?いいよ。教えてあげる。」

「…髪の毛で勘弁して下さい。」

なんか、理科先輩に言われると裏があるようにしか見えません。


「えっと、ここまで警戒されると…。場所変えようか。ファミレスでも行く?」

「…!行きます!」

理科先輩の提案に、文庫もノリノリである。


「…ファミレスデート、」

でも、なんか文庫がニヤニヤしてるのがちょっと怖い。


「じゃ、行こうか。」

理科先輩は、土下座体勢の俺に手を差し出す。

ありがたく、その手を取らせてもらおうとすると、俺の手は別の人に奪われた。


「…スミくんは僕の幼馴染なんで。手を取るのは僕だけです!」

なんかEnglishが理科先輩に突っかかっている。まさか、ヤキモチ?


「それに、スミくんは小学校の入学式の日に女の子の手を繋いでから、他の女の子と手を繋いでないのでやめといた方がいいですよ。ほら、手汗すごいかも。」

なんか罵倒された!しかもなんでそんなこと知ってるの?幼馴染だから?


「ま、まあ?僕はスミくんとよく手とか繋いじゃいますけどね?」

「…だってお前男じゃん。」

Englishがなんかキッと睨んできた。てか、お前の方が手汗すごいからね?今。


「んー、どうでもいいから早く行こうよ。ほら、君たちの分もあるから。」

こっちの会話には目もくれず、理科先輩は何かを準備するとこちらに寄越してきた。


「いや、コレ、セグウェイじゃん!」

なに?コレで行きますってこと?


「スミスくん、そんなに欲しいならカエルも付けてあげるよ。」

「いや、カエルがいなくて拗ねてるわけじゃ無いんですって!」

理科先輩、なんかズレてるなー。


「スミスくん、早く行きましょう。」

後ろを向くと、セグウェイとカエルを装着した文庫がいた。

なんかノリノリだったので、アイツもどこか変なのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る