♡第9話♡ コペニュvs変態体育教師!!その1
ルイツアリアは魔法学校なわけですが、魔法と関係ない授業も行われます。
数学や歴史などの基礎教養。あとは、体育です。
「うぅ〜、今日の体育、やだなあ」
体操着に着替えたサーニャが、テストで赤点取った日の帰り道ぐらい顔を真っ青にしてため息をつきました。
ちなみに、ルイツアリアの体操着は時代錯誤なブルマです。ふとももが丸見えのえっちな服です。
同じくそんなエロ衣装を着たメラルが、サーニャに近寄りました。
「確かマラソンだったな。一緒に走ろう」
「いいの!? ありがとう、メラルちゃん!」
「……ふへへっ」
大好きなサーニャに感謝されて、メラルの頬がつり上がっちゃいました。
よかったね。
ちなみに、私がこの世で最も嫌いな言葉が『一緒に走ろう』です。毎回裏切られてきたので。
でもよくよく考えてみれば、一緒に走ろうなんて無理な話ですよね。マラソンともなれば、誰だろうと後半からキツくなっていきます。極限状態に陥っていたら他人に合わせる余裕なんて消え失せますし、そうなれば個々の身体能力の差が否が応でも開いてしまうのはしょうがないです。
「ところで、コペニュちゃんは着替えないの?」
コペニュは制服を着たまま、だるそうに机に突っ伏していました。
「うーん、めんどくさいからサボる」
「だ、ダメだよ授業をサボるなんて! コペニュちゃん、まだ一回も体育出てないじゃない!」
「えぇ〜、だってめんどくさいもんはめんどくさいんだも〜ん。わたしぃ、めんどくさいことは死んでもやりたくないんだよねえ」
こいつ絶対大人になったら路頭に迷うな。
ロクに勉強もせず、いつまでも生意気な性格で、どこにも就職できずホームレスかニートになるのです。
まぁ、とメラルが会話に入りました。
「今回ばかりはコペニュの気持ちも理解できる。私も可能なら参加したくない。というか、オージサン教諭が嫌いだ」
オージサンは学年主任の先生で、体育の授業を請け負っています。
男子生徒にすこぶる厳しいのですが、じゃあ女生徒には優しいのかと問われたら、NOです。
優しいというか……いやらしいのです。
体操着をブルマに指定したのがオージサン先生だと明かせば、察してもらえるはずです。
「あー、なんか聞いたことあるなー、キモい先生だって他の女子が言っていた。ふーん」
なにを納得したのか、コペニュは急に立ち上がると、制服を脱ぎ始めました。
「私も行くよ。会ってみたい、そいつに」
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「おらあ! お前ら並べえ!!」
芝のグラウンドとは別にある土のグラウンドにて、1年たんぽぽ組とひまわり組が集合しました。
体育の時間は基本的に2クラス合同で行われます。
ちなみにひまわり組にはマリトがいます。
そんでもって生徒たちの前には、問題のオージサン先生が首から笛をぶら下げて仁王立ちしていました。
ゴツい体格に濃い体毛、不潔な無精髭、女子の足をジロジロ見てるのが丸わかりな視線。最悪です。見てるだけで気分が悪くなります。
「よーし、まずはストレッチだ。二人一組になれぇい!!」
言われるがまま、生徒たちはペアを組んでストレッチをはじめました。
コペニュの相手はサーニャです。ぐぐぐっと、前屈しているサーニャの背中を押してあげています。
「サーニャ、体かたいね〜」
「うぅ、痛いよコペニュちゃん。……ひゃっ! どこ触ってるの!!」
「ひひ、くすぐり攻撃なのだ〜」
「はは、や、やめてよ、ははは」
などとじゃれ合っていると、
「こらあ! そこお!!」
オージサンに目をつけられました。
「なにやって……ってお前、コペニュか。ようやく出席したんだな」
「よろしくですー」
「まったく顔を出したと思ったら俺の授業でふざけやがって。いいか、ストレッチってのはこうやるんだ」
途端、オージサンがサーニャの背中を押し始めました。
「おらどうしたサーニャ! もっと体倒さんかい!」
「は、はい!」
さらに腰を触り始め、
「あ、あの、先生、そこは……」
「黙ってろ」
しまいには両足をも容赦なく鷲掴みしています。
これには女子たちドン引きです。
「や、やめて……」
「足ももっと広げるんだよ!! 前屈の意味がないだろ!!」
ニヤニヤ笑いながらセクハラしまくるオージサンに、サーニャはすっかり怯えて涙を浮かべています。
これは許せません、許すまじです!!
ていうか犯罪行為だろこんなの! 教育委員会はなにやってんだッ!! 死刑だ死刑!!
サーニャの耳元で、オージサンが呟きます。
「お前、いい体つきしてるじゃないか」
「うぅ……」
キッモ!!
企画モノのAV撮影してんじゃないんだよ! 授業だぞエロジジイ!!
国民の税金で飯食ってるクセに白昼堂々15歳になにしてんじゃオイコラ!!
すると、サーニャのことが大好きなメラルが、怒り心頭でオージサン先生を蹴り飛ばしました。
よくやった、メラル!
「キサマ、よくも……!」
「教師に向かってなんだその態度は!! 俺は学年主任だぞ!!」
「だからどうした!!」
「いかなる理由があろうと教師への暴行は、退学処分だぞ」
職権濫用ここに極まれり!!
事態は一触即発。しかしこの場にいる全員がメラルの味方です。
泣きべそかいたサーニャは隠れるように、コペニュの背後へ逃げました。
「サーニャ、ごめんね、私がふざけたから」
こいつ、こういうときは素直に謝れるんですね。
「だ、大丈夫」
「だけどついにわかったよ、エリーナ殺しの犯人」
「え?」
は?
「エリーナは女子だったんでしょ? つまり、このド変態エロジジイが溢れんばかりの性欲を満たすために殺したんだよ」
ド変態すぎるだろ。
もはやサイコパスの領域なんだよそれは。
ちなみにオージサン先生は完全に白です。とっくにアリバイ調査済みですので。
「そ、そうなのかな?」
「私が確かめてやる。……せんせー」
「なんだ、コペニュ」
「噂に聞いてたけど、せんせーってマジで気持ち悪いね♡」
「あぁん?」
オージサンの額に青筋が浮かびました。
「弱い女子だけ狙ってセクハラする、小心者のザコ♡♡ きっとこれまでマトモな恋愛できなかったんだろうねー。誰からも相手にされなかった、キモオヤジ♡♡ 女子みんなから軽蔑されてるおっさん♡♡ クスクス♡♡ だっさ♡」
「いい度胸じゃないか、てめえ。いまこの場で、指導してやる!!」
「や〜ん♡ こわ〜い♡ せんせーに指導されちゃうよ〜♡♡ ひひ、ちゃんと私を指導できたなら、一生せんせーの言いなりになってあげる♡」
「その言葉、覚えておけよ」
コペニュのやつ、こんなあからさまな挑発して、なんのつもりでしょうか?
これで犯人かどうかわかるとでも?
それにオージサン先生は学年主任。不良生徒を指導する立場として、喧嘩もそうとう強いはずですのに。
「かかってきなよ、せんせー。私が『わからせて』あげる♡♡」
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