♡第5話♡ 新たな召喚獣!!

 少女の剣先が振り下ろされると同時、コペニュが出した魔法陣からファースラーが飛び出し、そのまま突進しました。


「くっ!」


 少女は間一髪、ファースラーのクチバシを剣で防ぎましたが、壁に叩きつけられました。

 さらにファースラーが巻き起こした風が聖堂の椅子を吹き飛ばし、少女に直撃します。


 額から血を流し、立つことすらままならなそうです。

 勝負あり、でしょうか。


「骨、折れちゃったかな〜♡ クスクス」


「この程度で」


 少女が自身の体に手をかざすと、あっという間に傷が塞がり、まるで何事もなかったかのようにまた剣を構えました。


 サーニャがハッと息を飲みました。


「回復魔法!? すごい、大人の魔法使いでも使える人少ないのに」


 少女が再度突撃してきます。それもただ真っ直ぐではなく、左右に動き回るように。

 なるほど、ファースラーは強力ですが、本質は鳥。しかもかなり大きな怪鳥。室内である聖堂では身動きが取りづらい。故に撹乱しているのですね。


「ファースラー、もういいよ」


 コペニュはファースラーを消すと、魔法陣から三つ目の銀狼を召喚しました。

 全身に雷を纏い、逆立った体毛が針のような圧を与えます。


「サードスター、やっちゃって!」


 まさに雷が如き速度で、サードスターは少女を捕らえ噛みつきました。

 鋭い牙が、少女の肩をえぐります。

 ちょいちょい、これじゃ殺し合いだっつーの。


「甘い!」


 少女は剣でサードスターを振り払うと、回復魔法にて高速で傷を塞ぎ、グッとコペニュとの距離を縮めました。


「うおおおおお!!!!」


「やるね。まさに不死身の戦士。だけど、私はパーニアスだから」


 途端、少女はすっ転び、地に伏してしまいました。

 その足には、黒い触手が絡みついています。

 いつの間にか、彼女の背後に無数の触手が生えた、黒く丸い塊がいたのです。


「メットちゃん。キモいけど、便利なやつだよ」


「こんなもの!」


 少女が剣で触手を切ろうとする前に、メットによって腕の自由も奪われてしまいました。

 そしてコペニュの傍らで、神速の狼であるサードスターが構えます。

 今度こそ、勝負あり、です。


「くそっ」


「あんた、名前は?」


「……メラル」


「そっかそっかメラル。エリーナ殺しの件は私に任せてってことよ」


「……エリーナ? 誰だそれは」


「は? あんたもエリーナを殺した犯人を捜してんじゃないの?」


「いいや、違う」


 えっと、それってつまり?


「……どうやら、私はなにか勘違いをしていたようだ。すまない」


「う〜ん。ま、結果オーライってことで」


 全然オーライじゃないが。

 聖堂めちゃくちゃになっとるがな。

 メラルが勘違いしていたってことは、前にも学校で殺人があったということでしょうか。


 この学校、たまに死亡事故が起きたりするので、どの事件のことなのかわかりかねますが……。


 コペニュが2体の召喚獣を消すと、自由になったメラルにサーニャが駆け寄りました。


「だ、大丈夫ですか?」


 メラルがじっとサーニャを見つめます。

 目を大きく見開いて、口をぽかんとあけて。


 いったいどうしちゃったんでしょうか。

 サーニャの顔には……なにもついていないですけど。


「いくら回復魔法が使えるといっても、魔力消費が激しいと、疲れますよね?」


「……」


「あ、あの?」


「え? い、いや、なんでもない。心配してくれてありがとう。魔力消費を案ずるなら、あのチビこそ……」


 2人して、コペニュに視線をやります。

 本来、魔力の消費が著しい召喚魔法。やり手の魔法使いでも、1日2体が限界。

 それなのにコペニュは3体もだして、しかもなお元気。

 どうやら魔力量も、常人を遥かに上回っているようです。


「ねえメラル、友達になってあげよっか」


 なんで上から目線なんだよ。

 裸で土下座するんで友達になってください、だろうが!! あぁ?


「あんたそこそこ強いし、一緒にいたら便利そうだもん」


「私は誰ともつるむつもりはない。だが……」


 意味深に、メラルがサーニャをチラ見します。


「き、君なら、別に」


「わ、私ですか? ど、どうして私なんかと……」


 メラルは急に頬を赤らめて、顔を背けながらボソっとつぶやきました。


「かわいい、から」


「か、可愛くなんかないですよっ!!」


 あーなるほどね、サーニャに一目惚れしちゃったわけですか。

 サーニャも嬉しそうに照れながら、モジモジしだしました。


「で、でも、そういってもらえて、嬉しいです」


「天使だ……」


 な〜にイチャイチャしてんだか。

 クールビューティーなメラルちゃんですが、どうやらサーニャみたいな気弱な女の子が好きみたいですね。メロメロです。


 除け者にされていたコペニュが、不満げに間に入ってきました。


「あんたが追ってる事件って?」


「……お前たちには、秘密だ」


 それだけ言い残して、メラルは聖堂から去っていきました。


 というわけで、今回はここまでです。

 ちなみにコペニュとメラルは聖堂をめちゃめちゃにした罰として、卒業まで聖堂のお掃除係になりましたとさ。


 愉快な仲間が増えたコペニュ一行の活躍に期待ッ!!

 マジで頼むぞッッ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る