♡第6話♡ 最初の授業!
入学初日から一晩開けました。
ルイツアリア学校は2日目から授業がはじまるので、初日はその準備に勤しむのです。
クラスとクラスメートとの確認、学園内の案内、寮での荷ほどきなどなど。
本格的な学校生活は、今日からはじまるのです。
「ん……」
サーニャが寮のベッドで目を覚ますと、妙な重みを感じました。
隣を見やれば、
「わっ!」
コペニュの寝顔がドアップで視界に入ってきたのです。
驚きのあまり、サーニャはベッドから転落してしまいました。
「コペニュちゃん!? あれ? なんで?」
どうしてこの部屋に? という疑問は、シンプルにルームメイトだからです。
サーニャが驚いているはその先の、何故同じベッドで寝ているのかという点。
昨晩は確かに、それぞれのベッドで寝ていたはずなのですが。
「ん〜、騒がしいよサーニャ」
「いつ私のベッドに?」
「あぁ、私ね、なにか抱きながらじゃないと寝れないの」
「えぇ〜」
しょせんはガキですね。
「てかいま何時? まだ5時じゃん。二度寝するからこっちきて」
「……」
「はやく〜」
「う、うん」
半ばドキドキしながらサーニャがベッドに戻ると、情け容赦なくコペニュが抱きついてきました。
サーニャは顔を真っ赤にして、まるで恋人同士の初夜のようです。
「なに照れてんの?」
「だ、だって、こんなふうに誰かと寝るの、はじめてで」
「じゃあサーニャのはじめて、もらっちゃったんだ〜♡♡」
「や、優しくしてください……」
「これから毎日抱いてやるから」
女つまみ食いしまくりヤリチン男かおめーは。
「よ、よろしくおねがいしますっ!」
よろしくすな。
毎朝コペニュが隣で寝てるとか、私だったらストレスで胃に穴が空いてしまいますね。
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「は〜い、それでは授業をはじめま〜す」
担任のメロ〜ンがコペニュたちに告げました。
ですが集まっているのは教室ではなく、学校の敷地内にある森の中。
「みなさんにはぁ、これから身体強化の魔法を覚えてぇ、宝探しをしてもらいますぅ」
あいも変わらず腹立つ口調ですね。
身体強化の魔法とは、1年生が必ず最初に習う魔法です。
運動能力と五感を上昇させる効果があります。
とはいえ、なにも超人になれるわけではありません。上昇率は極僅かなので、短距離走のタイムを1秒縮められる程度です。
それでもないよりはマシ。しかも簡単に習得できるので、最初に覚えさせるのです。
「じゃあ、教科書の3ページを開いてくださぁい」
魔法の習得には、呪文を暗記する必要があります。脳内で詠唱して、上手く魔力を練ることができれば、発動できます。
簡単な魔法なので既に覚えている者もいれば、数分で発動させる者もいて、授業はスムーズに進んでいきます。
しかし……。
「う、うぅ、コペニュちゃん、できた?」
「もちろん」
「さ、さすがパーニアス、だね。私なんか、ぜんぜん……」
ちなみにパーニアスとはパーフェクトなジーニアスの略だそうです。
サーニャががっくり落ち込んでいると、メラルがやってきました。どうやら同じ1年たんぽぽ組だったようです。
「サーニャ、大丈夫か?」
「メラルちゃん、私、やっぱり才能ないよ」
「気を落とすな。ゆっくり時間をかければ成功する」
「あ、ありがとう。メラルちゃん。私、がんばる!」
「くっ、かわいすぎる!」
お前が惚れてる女、12歳のチャラいメスガキと寝てるけど。
まあ結局、サーニャは発動できないまま授業は進行しました。
覚えた身体強化の魔法を駆使して、森に住む特定動物を捕獲するのです。
悲しいですよね、自分だけ遅れてるのに授業はガンガン進んじゃうの。
焦ってオシッコ漏らしそうになります。
うっ、あの日のトラウマが……。
メロ〜ンから、対象の小型動物や虫がリストアップされた紙が配られます。
この中から一匹でもゲットできればクリアなわけです。
「コペニュちゃん、メラルちゃん、一緒に行ってもいい?」
「いいよー」
「もちろん!」
強化された五感を用いれば、決して捕獲は難しくありません。
クラスメートたちは散らばっていき、3人も歩きはじめました。
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「はぁ、ぜんぜん見つからない……」
あれから30分、サーニャは一向に目当ての動物を見つけられずにいました。
両隣の2人は、とっくにターゲットである珍しいトカゲや蜘蛛をゲットしたというのに。
「サーニャ〜、ちょっとヘボヘボすぎな〜い」
「ご、ごめんねコペニュちゃん」
「あんな魔法なくてもね、森と同化すれば向こうから来てくれるよ」
「森と……同化?」
「私、森で育ったから」
「へ、へ〜」
野生児だったんですね。
通りで人付き合いに難があると思いました。
そりゃ話し相手が草木や虫だけじゃあこんな性格にもなりますね。
「メラルちゃんもごめんね」
「いいんだ。まだ時間はある。……なんなら私が見つけよう」
「そ、それはダメだよ。ちゃんと自分の力で見つけないと。よ〜し、頑張らないと」
健気ですね〜。良い子ですね〜。
こういう子が主人公だったらよかったのに。この子が事件を任さられたらよかったのに。
ダメダメでも許しちゃいます。母性が太陽まで突き抜けちゃいます。
などとサーニャが気合を入れ直していると、
「コペニュさんですよね」
背後から声をかけられました。
学校指定のローブをマントにした、やや背の低い生徒。
肩まで伸びた黒髪に丸っこい顔。かなり可愛らしい見た目をしていますが、着ているのは男子の制服。
コペニュたちのようなスカートではなく、男子用の短パンを履いているのです。
「誰?」
「こんにちは。ボクはマリト。マリーって呼んでください」
「で?」
「アロマさんとの戦いを拝見してから、ずっと気になってたんですよ」
「んふふ、私の才能という光に引き寄せられた虫ってとこね」
なんて最低な例えをするんだこいつ。
いつか絶対四方八方から刺されるぞ。
マリトは苦笑しつつも、握手を求めました。
「ボクを仲間にしてくれませんか?」
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