第10話 いつかは終わる

日曜日

エマがいつもと変わらぬ元気で、朝食後に皆に伝える。

エマ「今日は町の端にある牧場に行きましょう。きっと和まされるわ」


牧場ではやぎが中心に放牧されていて、

開放感溢れる大自然だった。

そこで俺は、リサと多くの時間を過ごした。

ヤギの餌やり、古びた民家に忍び込んだり、

泥だらけの丘ではしゃいだり、

巨大な木の下で写真を撮ったり、

スピリッツとか言う桁外れのアルコール度数を誇る酒をイッキしたり、

深い話は、全くしなかったけど、若い俺たちには、何も気にならなかった。

ただ目の前の楽しさを享受する。そんな時間だった。


二週間目の平日の五日間、ボランティア活動を終えて、

プールに行ったり、町の中心部に買い物に行ったりした。

常に隣には、リサがいた。

本当にどうでもいい事でゲラゲラ笑った。

歩く道に綺麗な小花が咲いていれば手に取り、

彼女の耳にさしてあげた。

紫色に花咲かせた美しさが、リサを更に魅力的にする。

町の中心部の噴水広場でしばし休憩し、みんなの元へと戻る。


あっという間に土曜日を迎えた頃には、

既にみんなの間でも俺たちのことは、囁かれる様になっていた。

しかし、一時でも付き合うないし、それを証明するアクションがあったわけでもない。

ただただ二人でいて楽しいから、一緒にいる。

それだけだった。

でもそれは、お互いの時間がとても限られたものであると

分かり切っていたからなのだろう。


そして、時は無情にも土曜日の夕方を迎えた。

そう、明日日曜日に、みんなが国へ帰るのだ。

俺とリサも決して例外ではない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る