第7章
時は流れ、僕らは1学期の期末試験を終えた。そしてやってきたのは夏休みだ。僕ら高校一年生にとっての夏休みは、最初で最後の自由な夏休みとも言えるだろう。来年以降はどうしたって大学受験の話が入ってくるはずだ。二学期には文理選択があるものの、とりあえず夏休みは自由に過ごせるだろう。
僕は相変わらず浅沼とは仲良くやれていた。夏休みに花火大会に行くことまでは、2人で計画を立てていた。まさか高校一年生にしてこんなに可愛い彼女ができるだなんて。未だに現実味がない。
「お待たせ!」
今日の彼女は浴衣姿だ。ついに花火大会の日がやってきた。普段は降ろしている髪も今日はまとめられていて、うなじが見える。僕の心臓の鼓動は速くなるばかりだ。
会場には焼きそばやリンゴ飴を売る屋台がたくさん出ていた。彼女はすごく楽しそうにしていた。射的やストラックアウトなど、たくさん楽しんだ後、僕らは川沿いへと向かった。そう、入学式の次の日、僕らが初めてキスをした場所だ。
2人で夜空を見上げる。遠くの方からアナウンスが聞こえてきた。
「まもなく、花火の打ち上げが始まります!ぜひカウントダウンを一緒にやってみましょう!それでは参ります。3、2、1、スタート!!」
ひゅー…どーん
花火が打ち上がる。本当に現実味がなかった。こんなに可愛い彼女と川辺に寝そべって花火を見ている…。幸せ以外の何者でもなかった。彼女が愛おしくて仕方ない。こんな彼女を誰にも渡したくないと、独占欲さえ生まれてきた。花火を見上げる彼女の横顔は、とても綺麗だった。
「私、実は花火見るのって初めてなんだよね。すごく綺麗!」
彼女の目には、なぜか涙が浮かび上がっていた。僕はその涙の理由こそわからないものの、彼女を守りたいと思った。彼女の首筋に手を当てる。彼女はすっと僕に寄ってきた。僕は彼女を抱きしめる。2人きりの空間のようだった。夢のような時が流れていた。
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