第5章

 翌朝。教室には相変わらず青木が1番に着いていた。こちらに声をかけてくる。


 「お前ってさ、浅沼と仲良いじゃん。俺浅沼のこと好きでさ。話しかけたいんだけど、どういうものが好きなの?」


 僕は言葉を失った。昨日のことなんて口が裂けても言えない。僕は何事もなかったかのようにこう言う。


 「クラスが同じなだけで別に特別仲がいいわけでもないから…。」


 「そっか。ごめんな。」


 すると、浅沼が教室に入ってきた。今日も綺麗な黒髪に変わりはない。


「おはよう!」


 彼女は明るく挨拶してくれた。それと同時に昨日のことを思い出し、僕は少し恥ずかしくなっていた。


 チャイムが鳴り、教壇に立つ先生が話し始めた。


 「入学してまだそんなに経っていませんが、クラスの人とは打ち解けられたでしょうか。さて、来週の金曜日から修学旅行が待っています。今回はフィールドワークとなってますので、クラス全員と話せるようになりましょう!」


 僕はそんな話をされている間も彼女の後ろ姿を眺めていた。どうしても目が離せない。


 彼女は他の人にはない、独特な雰囲気を放っていた。僕の知らないところ、そして大きな大きな秘密を隠しているようだった。


 それでも僕は彼女が好きだ。彼女がどんな秘密を隠していようと、それがどれだけ大きな秘密であろうと、僕は受け止めてやろうと強く思った。



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