教室はパラダイス。
教室に入ると、そこは
名も知らぬイケメンがいっぱいいる!
あっちもこっちも、選り取り見取りだ。中には普通の人もいるけど。
実際にはこんなに沢山の人がいたんだ。
それにしても、この世界には整った顔のキャラが多い。
前世にいたら、きっとみんなモテるだろう。
漫画やアニメである、不細工と言いながら全然不細工じゃないキャラが多い現象と一緒だろうか。
前世の私がこの中に入ったら、もしかして魔物と間違われてしまうのでは……。
女性キャラもけっこういるなあ。
ゲームではほとんど出てこないから知らなかった。
「ラグナさん!」
そんな中、ひと際目立つ女の子が私の名を呼んだ。
私は渋々と、その少女の元へと進む。
周りの視線が痛い。なんでこいつは、この子と仲がいいんだ? みんなそんなことを考えているのだろう。
「授業、緊張しますねー」
当の彼女は、自分がみんなの注目を集めていることに気づいていない。いや、気づかないフリをしているのかもしれない。
どちらにしても、あまり深く関わらないようにしよう。
後ろの席は、他の人たちがよく見える。
あ、あれはヴァン様!
やっぱり一緒のクラスだった。
相棒のアシェルは、一つ上の学年なのでここにはいない。
周りの席には誰も座らず、皆なんとなく距離を置いているような気がする。でも昨日の賑わいの様に、すぐに人が集まってくるだろう。
同じクラスにいる攻略対象キャラは、他に三人いる。
ヒューバー、マルセス、ランディーの三人だ。
ヒューバーは知的な眼鏡男子。肩ほどまで伸ばした黒髪はサラサラだ。あのクールな雰囲気がたまらない。
水属性を操り、味方の回復が得意なキャラだ。
マルセスは、水色の髪をした弟系キャラ。大きな瞳がクリクリで可愛い。
氷の魔法を使ったサポートが得意で、一家に一人は欲しい。
ランディーは、少し乱暴者。赤みがかった茶髪で、日に焼けているのか肌の色も少し濃い。
土の魔法で、味方の盾となることが多い。彼はボス戦に欠かせない。
このクラスが、一番攻略対象キャラの多いクラスだった。
先生方、ありがとう。設定通りに私をこのクラスに入れてくれて。私は心の中で感謝の祈りを捧げた。
「それでは、授業を始める」
いつの間にか、教壇に一人の教師が立っていた。
あれは確か、担任のメリアージュ先生。分からないことを教えてくれるヘルプキャラで、ゲームではメニューからいつでも呼び出せるので、まるでどこかのイルカみたいな人だった。
さて、イケメン達のことは後からじっくり眺めるとして、授業の準備でもするか。
最初の授業は、この世界の説明だったはずだ。物語の導入として、設定やらなんやらが長々と語られる。
まずは私の記憶から、この世界の設定を思い出そう。
この世界はヴァルハランドと呼ばれている。
所謂、魔法が使えるファンタジー世界だ。魔法だけでなく、ちゃんと剣などの定番武器も登場する。
そして今、私たちが住んでいるのはヴェルオール王国。辺り一帯の地域を、ヴァン王子の父親が治めている。
この学園も同様に、王国が管理と運営を行っているのだ。
この世界には普通に魔王がいるのだが、街の外には配下の魔物が徘徊しているので、学園はその討伐のための戦士を育てる場所として機能しているという設定だった。
ただし、魔王を倒すには聖女の力が不可欠なので、アリスという聖女が見つかったことから物語が動き出すこととなる。
だがそんな背景がありつつも、やっぱりメインは恋愛だ。
主人公であるアリスは、聖女としてレベルを上げながら、攻略対象の好感度も上げていく。
好感度を上げれば、そのキャラとパーティーを組むことが出来たり、イベントが発生したりする王道のシステムだ。
エンディングも色々あって、攻略対象の好感度によっていくつも用意されている。全てをコンプリートするにはかなりの時間がかかった。
あんなイベント、こんなイベント、そういえばあのイベントもよかったな。
なんだか内容がずれてきたところで、メアリージュ先生の授業も終わったようだ。
まったく話を聞いてなかったが、まあ大丈夫だろう。
「早速来週から学力テストがあるなんて、やっぱりここは大変そうですね」
隣に座るアリスが、ため息まじりにそう言った。
え、なにそれ? そんな話してたの?
まったく想定と違う。最初はプレイヤーに向けての世界観の説明するでしょ。
「アリスさん……」
「どうしました?」
私は姿勢を正し、真剣な顔で言った。
「テスト範囲、教えてください」
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