「エモい」なんて②
「まぁ楽しいですよ、お姉ちゃんのことは好きですし!」
「殊勝な妹ね…私だったら面倒だと思う…」
姉妹の絆は固い。
「お姉ちゃんが高校生になってからキャラが変わってしまったと思ったんですけど、最近はそうやって話しかけてくれることが増えたので、私は単純に嬉しいです。別にそこに嫌な思いはありません」
「なるほどね、だったら結構イイ感じなんじゃない?」
「いや…でもやっぱりそういう訳には行かなくて…」
妹アロハも〇ッピーターンも口にする。不思議と粉はこぼれていない。
「結局私には何も出来ないっていうことですよ」
「ほほう、その心は」
気が付くと、なんだか私たちは普通に会話をしている。それだけの積み重ねが私たちの中にあったということか…!と思うほど、まだやり取りはしてないと思うけど。
「私はお姉ちゃんの話を聞いているだけで、結局その『ストレスの正体』はいつまで経っても消えないっていうことです」
「なるほどね、でも、そうやってお話を聞いてあげているだけでも良いと思うよ」
人は漠然とした悩みがあるだけで、すぐ手一杯になってしまう。だけど人に話すことで、言語化することで、自分の中から外側に出すことが出来る。出すことが出来れば、その分脳の空き容量に余裕が出来て、「悩む」のではなくて「考える」ことが出来るようになる。
「まぁそういうのも良いと思うんですけど…でも無力じゃないですか?私には何も出来ないんなんて」
真っすぐとこちらを見据える視線。いつだってこの妹は真剣だ。
「う~んとはいえ、あなたはその『ストレスの正体』そのものではないから、難しいんだよなぁ…」
頂いたお茶を私はすする。緑茶の味は全家庭共通だから、いつだって安心する。
「気持ちはわかるよ。『不満があること』自体が問題なんじゃなくて『不満が変わらないこと』の方が問題なんだよね」
「ほほう、その心は」
大分この妹も私の扱いに慣れてきたようだ。
「少しでも改善される兆しが見えてきたら、誰だって前向きになれるじゃない?なんか自分なりに努力すれば改善されるんじゃないかって。だけど、そうじゃなくて、自分がいくら努力しても全て無駄になりそうだったら、誰だってうんざりしちゃうっていうこと」
「確かに…無力感は私もしんどいですね…」
「そうそう、だけど、それを相談すべきは誰なんだろう?って言うのが大事だと思うけどね。例えば『会社の上司からセクハラを受けています!』っていう悩みがあったら、人事部に通報するでしょ?一応は。だけどそこを家族に相談しても、あんまり意味が無いって言うこと」
「まぁそうですよね…」
ヤバイ、論破ァしたみたいになってしまった。
「う~ん、だからこそ、荒崎さんなんです!」
「えっ…?なに…?私は人事部じゃないのだけど…」
実際はヒラの事務員以下だろう。
「だってお姉ちゃんと同じ学校じゃないですか」
「いや…まぁそうだけど…でも全然面識ないし…」
「でもクラスメイトなんでしょう?」
「いや…クラスメイトだからって全員仲が良いわけじゃないし…」
「えっ!?クラスメイトって大体皆仲が良いわけじゃないんですか!?」
「どこの中学だよ…ヤンキーが1人もいない中学なの…?小学生ならまだしも…」
無理で薄いこじつけを、世の中は簡単にする。「20代の女性に向けた商品で~」とかなんとか言って、「20代女性」って誰だ?それに該当する人は、何百万人といる。全員違う。全員違うのに、雑に十把一絡げにするのは、絶対に違うと思う。
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