スムージーなんて④
「でもさ、そのアイドルのリーダーは普通に笑顔で喋るんだよね。『いやいや、別に全然楽しくなかったとかじゃなくて、今でも仲が良い友達はたくさんいますよ、でも、ぱっと思い出すなら、寝過ごしたのを思い出しました』って」
「へーなんだろう…?天然なのかな…?」
「実際そういう要素もあるんだろうけど、でも、何かさ、少しわかる部分があったんだよね」
共感したと言っても、私はそのアイドルと話したこともないし、そのアイドルだって、自分に共感して欲しいからそういうことを言ったという訳でもないと思う。だけど。
「え、なんで…?お前の高校生活もそうなのか…?」
「もちろん、そんなハイパー電車寝過ごしガールでも何でもないけどさ、何かわかる気がしたんだ。ハッっとするじゃん?やばって」
「まぁ実際寝過ごすとそうなるよな…」
日が少しずつ落ちていく中で、祭に人は集い続ける。冷静に考えたら、祭といったら焼きそばやかき氷だ。まず、スムージーではない。だから、スムージーが飛ぶように売れることは無い。そういう意味で、私は祭の一部にはなれない。
「ハッっとしてさ、記憶に残る訳じゃん?絶対さ、電車に乗り過ごす時って大体一人だから、あぁ、独りぼっちだなって思うから、なんかそれって、真理だなって」
自分でも何を言っているのかわからないし、自分が何故スムージーを売っているのかもよくわかっていない。
「好きで寝過ごす奴なんていないから、少し嫌悪感も生まれる訳じゃん?そういうのから逃げたくなる時もあるけど、だけどそういうのが大人になってからも、やっぱり残り続けるんだなって」
わからないことばかりだ。だけど、店長がスムージーを出すこと自体には。きちんとした意義があると思う。パン屋が迎合しても意味が無いから。パン屋がかき氷や焼きそばを売っても意味が無いから。その上で、スムージーを売ることの意味は、また別の話だけど。
「なるほど、、う~ん、なんだ?わかるようで、結構難しい話だな…」
「テレビの司会の人も困惑してたよ…反応に困るというか、、でもそのリーダーは凄く真っすぐに話してたんだよね。特に天然キャラでもないけど、真っすぐに自分の意見を言っているっていうか」
わからないことばかりだ。やりたいことをやるべきなんだろうと思う。もちろん、自分の感性とか、得意なこととか、いずれも実感を持てないものばかりだけど、そういうことを考えなければいけない時もあるのだろう。
「ま、そんな感じ。結構意味わかんないけど」
「そうだな…すげぇ意味わかんないわ…」
それはそうだ。だって、カロリーゼロで喋っているからね。
よっぽど、私たちが適当に作っているスムージーの方が、ぎっしり中身がつまっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます