ステージなんて③

「では問題です。


『タロウ君は、クリームパンが大好物です。

そんな彼は、彼がこの世で一番おいしいと思っているクリームパンを出すパン屋へ今日も向かいました。

すると、既にクリームパンは売り切れでした!

しかし、タロウ君は売り切れの札を見て大喜び。

さて、何故一体タロウ君は喜んでいるのでしょうか?』


はい、ではYES/NOクエスチョンをお願いします」


「はい」

 いきなり、高畑君が手を挙げる。


「早いね…では高畑君」

「タロウ君はその店の経営者だったから!」

「えーっとそれは…えっ、あ、それ答え?」

「そう、自分のお店のクリームパンが売り切れていたら嬉しいでしょ?自分が好きで、自信のあるクリームパンなら尚更だと思う」

「はいはいはい…えー、正解です…答えは『タロウ君が向かった店は、理想のクリームパンを提供する、タロウ君自身が経営する店だったから』」


 答えが書いてあるページをめくると、まさにその答えが掲載されていた。

 頭の回転が速い…たまに陰キャは、旺盛な思考力を発揮する生き物なのだ。

「え~なんか私それ納得いかないなぁ…」

「え、委員長はそう思う…?」

 ちなみに、私がパン屋でバイトをしていることもあり、とっつきやすいと思ったから出題したというのもある。


「『タロウ君』って言われたら学生とかを思い浮かべちゃうじゃん。店の経営者なの?だったらせめて『藤川さん』とかにして欲しい」

「いや…誰だよ藤川さん…」

 まぁ確かに「藤川パン」っていう名前のお店は現実にもありそうではあるけど・

「でもこのクイズはあれね、最初に私たちが持つ『勝手な前提』を疑うことが重要っぽいわね」

 お、流石委員長。こちらも頭の回転が速い。


「今回も問題だったら、『タロウ君はお客さんとしてクリームパンが好きだ』って考えちゃうけど、必ずしもそうではないということね。色々自分なりに、場合分けして考えれば大丈夫そうね」

「そうだね、確かに丁度いい感じの頭の体操になりそう。子供向けにレベルを調整することも出来そうだしね」

 高畑が早口で喋る。早くも、水平思考王者の風格が垣間見れる。自分のフィールドなら、陰キャは自由に飛べるのだから。


「とはいえすぐに答えられてもつまらない、というか本来は、疑問を繰り返して深層にたどり着くっていうゲームらから、多分そのコミュニケーションのラリーが大事なんだと思う」

 委員長がとうとうと語る。すいません、近年そのラリーを大変怠っております…。

 私は委員長に促されて、次のクイズを読み上げる。

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