第32話
本人たちは気付いていないものの彼らもNPCと同様に普通の人間ではない存在である、というのも彼らは元々この世界に存在するはずのない人間だからだ、元々は別世界の存在だった者がどうしてこの世界にやってこられたのかと言えばその理由は極めて簡単で、彼らは別の世界で死んだ者だったからだ、つまり本来ならこの世には存在しないはずの存在である為肉体を持たない魂だけの存在なのだ、そんな存在であったからこそ本来生きているべき場所を離れこちらの世界まで流れ着くことが出来たのだ、ただしあくまでも魂だけの存在だという事に変わりはなく、本来であればそのまま消えるはずだったが、どういうわけかその身は現世に留まり続ける事になった、しかしいくら精神体とはいえどこの世界では実体を持つことは出来ない、故に彼らは自らの体を実体化させるために人間の肉体を欲していた、そしてたまたま目に入った病院で見かけた女性を宿主として利用するために取り憑くことにしたのだ、もちろんそんな事をしても無意味に終わる可能性の方が高いのだがそんな事など関係ないとばかりに女性の体内へと入り込んだ、その後は本来の目的通りに宿主の体を使い活動していたが、最近になって何やら様子がおかしいと感じた、それは他でもないNPCが自分の体の事に気付いたためである、だが気付いたと言っても所詮ただの勘に過ぎずその証拠もなければ確信も無い、それにもし気付かれたところで自分のやる事は何も変わらない……と思っていたのだがここに来て状況が一変してしまう、何故かは不明だが彼女は自分を認識出来るようになってしまったようだ、それにより彼女が持つ特殊な能力の発動条件を満たしてしまったのだろう、結果としてこの女性は自らの存在を完全に保ったままNPCを操る事が出来るようになってしまったのである、しかしだからといって何も焦るような事はないはずだ、例えそうなったとしても結局は自分次第なのだから……そう思っていた矢先に突然体の制御を奪われてしまう事になる、そうなってしまった以上もうどうしようもなかった、だが一つだけ幸運にも言えることがあるとすればそれはこの体が限界に近い状態だったという点であろう、仮にこのまま彼女が力を使い続けていればいずれ彼女は消滅していたはずなのである、まあどちらにしろ結果は変わらないのだろうが……そしてついにそのタイムリミットが訪れようとしていた、それがあの部屋での出来事だ、本来はそこで終わりだったはずだがそこに現れた人物が彼女を変えたのだ、その人物とはPCの事だ、彼は偶然通りかかっただけなのかもしれないが、彼にとっては本当に奇跡としか言いようがないほどのタイミングで現れてくれたのだ、だからこそ彼女は彼に頼ることを選択した、彼の持つ不思議な魅力に惹かれてしまったのかもしれない、あるいはそれは彼女自身も理解していない感情だったのかもしれない、いずれにしてもこうして彼女の物語は動き出した、全ては彼の選択に委ねるしかないのだろう、果たして彼が選ぶ結末はどんなものなのか?今はまだ誰も知る由はないのだから……
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というわけでここまでお付き合い頂きありがとうございました! 最後になりましたがこの度は「君の記憶、俺の過去」をお手に取って下さりありがとうございます!楽しんでいただけたのなら幸いです! そして今後の予定についてですが一応2巻の方の内容についてのご連絡になります、こちらは1巻と違いPC達は全員死亡してしまいます、その為PCの人数も少なくなってしまうのですが、その分よりリアルな雰囲気を感じていただける内容になっているのではないかと思います。それでは長々と書いてしまいましたがこの辺で失礼させて頂きたいと思います、改めてましてここまでお付き合いして下さった皆様に感謝の言葉を贈らせて下さい、本当にありがとうございました!またどこかでお会いしましょう!!
8.シナリオ作成上の裏話 実は最初に作成したシナリオでは最後の戦闘前にNPCとの対話を挟むつもりはありませんでした、というのも最初はPC達との戦闘のみで終わらせる予定だったのです、ですがそれでは味気ないなと思って最後に会話シーンを入れたらどうでしょうかと考え付いたという経緯がありました、結果的にはこの行動が良かったのか悪かったのか微妙なところですが少なくとも後味の悪さは無かったので良しとしたいと思います(いいのか……?)
9-1病院内にて発生するイベントは探索者の行動次第で変更する事も可能です、例えば「NPCとの会話中に窓から化け物が侵入してきた場合」「病室内の探索中に背後から襲われそうになった場合に回避行動を取るかどうか」などと言った具合です、もちろんこれらは強制ではありません、あくまでも一例に過ぎません、なので自由に決めて構いませんあとは「鏡の中に入る際に誰と入るのか?」などの選択についてもPC達に決めさせる事が出来ます、これは単純にどのキャラクターと一緒に行動するのかを決めているだけです、別に全員が一緒に入っても良いですし、特定の人だけを連れていく事も可能です(※以下はあくまで例としてあげたものになります)
9-2NPCは最初から最後まで自分の意思で動いています、よって彼女の行動はプレイヤー達の選択肢によって左右されるものです、そのため必ずしも全てのプレイヤーが同じ行動をとらなければならないという事は無いという事だけは覚えておいて下さい、また今回のシナリオにおいて最も大きな変更点としては「PC達がNPCを殺す必要がある」という点にあるでしょう、正直これが無ければもっと良い出来になっていたと思うのですが仕方ありません(笑)だってNPCを生かすのはちょっと厳しいと思ったんですもん、それにもし殺したとしても彼女は成仏するわけではなく普通に生き返って出てきますのでその点については安心してください、 ちなみに何故PC達がNPCを殺さなければならないのかという理由については後述で説明致します、とりあえず先にこのページを読み進めてください10.クリア報酬(各卓毎)
DEX+1 EDU+1 〈SAN値回復〉 1D10
(例:シナリオ中で5回死亡したなら3D6、6回以上で4D6、12時間以上の経過があれば更に+2)
クトゥルフ神話技能に+1% 10-2エンディングにて登場したNPCとの対話シーン あなたが彼女と出会ってからおよそ一ヶ月の時が経過した頃、あなたはいつも通りの日常を送っていた、ただ一つ変わった事があるとするならば、あなた自身が以前よりも前向きになったことだろう、きっとこれは今までとは違う人生を歩むことが出来るかもしれない……そんな風に思ったのかもしれない、何故なら以前のあなたと今のあなたとでは明らかに違う点が一つだけあったからだ、それは何かというとあなたにはもう帰る場所が出来た事である、それさえあればたとえこの先何があろうとも恐れる事はないだろう、だからこれからは精一杯生きていきたい、そう思ったのである
『ねえねえ!』
『私と一緒に遊びに行こうよ!』
そんなあなたの事を後ろから呼ぶ声が聞こえてくる、振り返ってみればそこにいたのは一人の女性の姿がある、それは紛れもなく自分の良く知る人物である
『ほら早く行こーよー!』
『どうしたの?』
そう不思議そうに尋ねてくる彼女にこう答えるだろう
『なんでもないさ、行こうか』
こうしてあなたは新たな未来への第一歩を踏み出したのだ
11.小ネタ解説/余談(プレイした人にのみ分かる内容の物もあるためネタバレにご注意下さい)
本シナリオにおいては全体的に時間制限のようなものが設けられています、その理由は簡単でプレイヤーを焦らせようという思惑があったからです、特に重要な情報に関しては直接的に伝えることはせずにヒントという形でそれとなく匂わせるようにしています、もしそれで分からない場合はNPCからの助言を参考にしてください また後半になるとかなり長い戦闘が発生しますがこれはなるべくPC達を疲れさせないようにするための措置であり決して嫌がらせではありません、あくまで必要な演出だと思って頂ければ幸いです、ちなみに前半の病院内はただの雰囲気作りのためなのであまり重要ではない部分となっています それと最後のシーンで出てきた女性はNPC本人なのかそれとも別個体のNPCなのかは明言しません、なぜならここで答えてしまうと面白くないと思っているからです、もしかしたらこの女性も別の誰かかもしれないし全く関係ない人物かもしれません、まあその真実を知る機会が訪れるかと言われれば恐らく訪れないでしょうが……ただこれだけはハッキリと言わせてもらうと間違いなく彼女の存在は後の物語に大きく関わってきます、それこそPC達の命運を変えるほどに……
12.クリア後に追加される要素(KP用補足情報含む)
まず初めにお伝えしなければならないのが、このゲームに登場するNPCは全て元人間という設定となっているということです、つまり彼女達は既に亡くなっているという事になります、当然その中にはPLのキャラも含まれている為、それを知っているか否かによって得られる情報が大きく異なると思います、ですので事前にPLに対してその旨をお伝えした上でセッションを行って頂きたいと思っています。その上でもう一つ付け加えておくことがあります、実はこのゲームにおける死亡判定は特殊になっております、その為場合によっては生死をさまよう状況が発生する可能性もあります、その際は必ず以下のルールを守って下さい、一つ目は「一度死んだ探索者が次に行う探索パートではステータスが全て初期値に戻る」です、これにより蘇生によるボーナスポイントを得る事が出来なくなります、ただしその代わりとしてHPの初期値が増加することになるので上手くバランス調整を行う必要があります、二つめは「ロストしてしまった場合に限り一度だけ復活出来る」というものになります、このルールを使用するかどうかはPLの自由に決めて貰って構いません、三つ目は「ファンブルを出した際や何らかの理由でクリティカルを出してしまった場合、通常成功時よりも大きい数値の出目が強制的に出る事になる(最大でも2倍までだがそれ以上になる場合もある)」です、こちらも使う使わないは自由ですが出来れば使わないでほしいというのが本音です、これを使ってしまうとどうしてもゲーム性が失われてしまいますからね、まあ仮に使ってしまった場合でもGMの判断でどうにかなる可能性は高いのですがそれでも出来るだけ使いたくはないというのが正直な感想になります、その為極力避けてほしいなと思います
13.クリア報酬/SAN値回復 DEX+1 EDU+1 〈クトゥルフ神話技能〉 +1以上となります、それでは最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました!! またどこかでお会いしましょう!!!【はじめに】
この小説には性的描写が出てきます。
耐性のない方は閲覧しないようお願いいたします。
*18禁シーンのサンプルは次のページに掲載しております* ────── ******
「……ん」
「あ……おはようございます」
まだ眠いのか半目でぼんやりとしている彼が私の姿を捉えると少し微笑んで挨拶してくれた。そしてすぐに「おはよう」と返してくれた彼に、私は「えへへ」と微笑み返した。
もうすっかり慣れ親しんでしまった、彼との同棲生活は今日で終わる。
明日からは恋人ではなく夫婦となるのだから、もうこんなやりとりもしなくていいと思うと少しだけ寂しさを感じるけど、それ以上に嬉しさと期待に胸がいっぱいで今にも溢れだしそうだ。
(あぁ、今日から私と先生は……家族なんだ)
「先生?朝御飯ができましたよ?」
「……あぁ、すぐ行く」
「ふふっ、はい!待ってますね!」
寝起きのせいか、まだどこかぼんやりしている様子の彼はそう言って部屋を出ていった。そんな彼の様子に「クスッ」と笑いながら、私も彼の後を追いかけるように寝室を出た。
*
「今日は、どうしますか?」
「どうとは?」
「お買い物とか……お家のこと色々しないと」
「そうだな……」
朝食を終えた私達はソファーに座ってテレビを見ながら今後について話し合うことにした。といっても、私がしたいことや先生の考えていることの確認程度だけど、お互い何をすればいいのかわからずに、とりあえずといった感じだ。
これから一緒に暮らしていくのだから家事の分担はもちろん、家計のことも話し合っていかないといけない、それに結婚式の準備や新居探しなんかも必要になるだろう、まだまだ考えなければいけない事は山積みだ。
「とりあえず、掃除から始めましょうか?」
「うん、そうだね」
それから私達二人は早速行動に移した。
私は部屋の窓を開けて換気をすると雑巾を手に持ち床拭きを始める、一方先生もハタキを持って棚の上など埃が溜まりやすいところを重点的に掃いている。
(なんだか新婚さんみたいで楽しいなぁ……)
なんて呑気なことを考えながら掃除を続けているうちに部屋はだいぶ綺麗になった。これならいつ人を呼んでも大丈夫なくらいに。
次は何をしようかと悩んでいるとふとある疑問が浮かんだ。
そういえば昨日先生が話していた通りでいけばこの家にはまだ使われていない部屋がいくつか余っている筈だ、なら今のうちにそこを整理しておくというのはどうだろうかと先生に提案すると彼も賛同してくれた。
(よしっ!まずはこの部屋を片付けよう)
そう思い立ったところで立ち上がり、手始めに隣の部屋に入ると、そこにはいくつかのダンボール箱と数個の大きな家具が置かれているだけだった。どうやらここは元々客間だったみたいだ。
(ここには何もなさそうだね)
そう思いながら隣の扉を開くとそこはベッドルームだった、綺麗にメイキングされた真っ白なシーツとふかふかの大きなダブルベッドを見て、つい顔がニヤけてしまう。
するとそこで初めて気がついた、この部屋のベッドにだけ赤いシミがついていることに……それが何かはすぐに察しがついた。
だってそれは昨晩、先生と結ばれた時にできたものと同じものだったからだ。その事を思い出した途端、急に恥ずかしくなってきた私は慌ててその場を後にした。
その後、他にも空き部屋を確認したところリビングと同じように殆どの部屋が何も置いていない状態で放置されていた。なので私達は一階にある物置部屋に向かい荷物の移動をすることにした。
二人で作業すればそれほど時間もかからないだろうと軽く考えていたのだけど、実際にやってみると思っていたよりも重労働だったので結局お昼近くになるまで掛かってしまった。
「ふぅー……なんとか終わったぁ〜」
「お疲れ様、大変だったろう?」
「いえ、平気ですよこれくらい!でも結構大変ですね……次からはもっと計画的にやらないと」
「……そうだね」
「……どうかしましたか?」
何やら浮かない表情の彼を不思議に思って尋ねると、その理由を話し始めた。
「……前にいた家は物が少なかったからね、だから引っ越してきてからしばらくはこんなに物を運んだりはしなかったんだ、それに今よりずっと狭かったしね」
「そうなんですか?」
「あぁ、一人で住んでいたからね」
それを聞いて私はなんとなく理解した。きっとその頃は今みたいに広い家に一人で住むようになって寂しかったのかもしれない。だから私という同居人が来てくれて嬉しかったのではないかと思ったのだが─────、
「ただ君と一緒に暮らすようになって気づいたんだが……正直あの家だと狭いと思うことが多くてね」
「……えっ!?どういうことですか?」
「いや……ほら、君がいつも使っているキッチンってシンクの下は引き出しになっているだろう?あそこに何が入っているか君はわかるかい?」
そう言われてすぐに思い浮かんだのは包丁などの刃物類だったが、もし違っていたら嫌なので、一応聞いてみることにした。
「……フライパンとか、ですかね?」
そう答えてみると、彼は苦笑いしながら正解を言い当てた。
「当たり、よくわかったね、じゃあコンロの上にある収納スペースは何が入っていた?」
「……えっと……鍋、ですか?」
自信無さげに答えると、彼は「大正解」と言いながら嬉しそうに笑うのだった。
確かによくよく考えてみればその通りだ、我が家ではいつも決まった場所から物を出しているから気づかなかったが普通、台所にはある程度の調理器具や調味料などを収納する為の場所がある筈なのだ。それにも関わらず私が料理をする時には必ずといっていいほどその場所が開いていることが多い、それも何故か決まって上の方だ。ということは答えは一つしかない。
「もしかして……全部そこにしまってたんですか?」
恐る恐る尋ねてみると案の定、彼は小さく頷き肯定した。その瞬間一気に顔中に熱が集まるのを感じた、恥ずかしさで死にそうになるというのはこういうことなのだろうと思ったほどだ。
(うわぁぁぁぁぁん!知らなかったとはいえなんで気がつかなかったんだろう〜!私のバカ!間抜けぇぇぇ!)
あまりの羞恥で頭を抱えながら唸っていると彼が優しく頭を撫でてくれて慰めてくれた。
「気にしなくていいよ、僕も今までは気にしていなかったしそれに、今は君のお陰でどこに何があるのか大体把握できているからね」
そう言われた瞬間、今度は胸がドキッとして顔が熱くなるのを感じた。
(それってつまりこれからは私が毎日ご飯を作ることになるってことだよね……?そしたら必然的に先生のために料理を作る機会が増えるわけだし……わ、私にできるかなぁ〜)
そんなことを考えていた時、ふいにお腹が鳴った。一瞬、なんの音かと思ったがそれが自分のお腹の音だと気づくのに数秒掛かった。なぜならあまりに恥ずかしくて彼の顔を見れなかったからだ。
だがしかし、それを彼に聞かれたとなると余計に恥ずかしくなり俯いてしまった。
(やだ……絶対聞こえてたよねぇ〜?うぅ〜どうしよう……)
「……そういえばそろそろお昼だね」
「……へっ?」
彼から突然発せられた言葉に思わず顔を上げると同時にまたお腹が鳴ってしまい赤面してしまう。そんな私の様子を気にする素振りもなく、彼が続ける。
「よかったら今から一緒に外に行かないかい?」
そう言って微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれる彼の手の温もりを感じながら私は静かに頷いた。
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