第6話

その声を聞くなりすぐに警戒態勢に入った3人はお互いに目配せをし合いながらいつでも動けるように準備をしたのだがそこで再び声がかけられることになるのだった!その声の主は彼らのすぐ近くにいたのだが彼らにはその姿が見えてはいなかったのである!その声の主がどのような姿をしているのかを説明するならば、それは全身真っ黒の人型の物体といった方が分かりやすいだろう!……ただその黒い人影からはどこか不思議な雰囲気が感じられていたので男の一人がその正体を突き止めようと話しかけようとしたところでまたもやその人影が声をかけてくるのだった!「……おやおやぁ?これは一体どういうことなのでしょうねぇ〜?まさかこんなにもあっさりと見破られてしまうとは流石は勇者様方ですなぁ〜?」「なっ!?貴様一体どこにいるんだ!?姿を見せろ!?」「おっと失礼致しましたぁ!何せ私ときたらあまり人前に姿を現すのが好きではない性分ですのでこのような形を取らせていただいたのですけれどもお気づきいただけましたかねぇ〜?」「ま、まさかこの声は……!?」「……えぇ〜そうですとも、この私めの正体については皆様方の御察しの通りでございます……♪」「ま、魔王ベルフェゴール……ッ!?」「その通りなのですけども、しかしながらあなた方も私のことを魔王だなんて呼ぶのですからお互い様ですわよねぇ……?」「……ちっ、クソッタレが……!」「……それであなた様はなぜこんなところにいらっしゃったのですかなぁ〜?」「いえいえ、実はですねぇ?私、少し前に面白いことを思いついてそれを実行してみたくなったのですよねぇ〜?それでその準備をしていたところにたまたまあなた方の気配を感じましたもので折角なので少しだけお邪魔させていただきました……っと言っても信じてはもらえないかもしれませんがねぇ〜?……だって魔王であるこの私自ら人間であるあなた方の前にこうして姿を現しているのですからねぇ〜?……ですからもしよろしければあなた方のその目で確かめていただきたいと思いまして今回このように参上した次第であります……」「……何を企んでいるというのだっ!?」「あらあらぁ〜そんな怒鳴らなくてもよろしいではありませんかぁ〜?何もあなた方を騙そうとしてきたわけでありませんのよ?寧ろ協力してあげようとしているわけですし……」「……協力だと?」「はい。そうですよ……?何せ私がしようとしていることは世界平和ですからねぇ〜?……そのためにはまず邪魔者を排除しなければならないのでこうしてあなた達に協力を申し出ているのですが……如何でしょうかねぇ?」「……断る。貴様の話に乗る必要などないからな……」「おやおや、随分とつれないことを仰りますねぇ〜?……まぁ、それも仕方のないことでしょう。何しろ私はかつて世界を滅ぼした元凶の一人ですからね……?そのような者が突然現れて何かしようと提案してきて素直に頷いてくれる方が逆に不自然というものでしょうしねぇ……」「ふんっ、分かっているのならばさっさと立ち去りやがれッ!!」「……ふふっ、そうですかぁ?それなら無理に引き留める必要もないですし、私もそろそろ行くとしましょうかねぇ……。ですがその前に最後にこれだけは言わせてください……。私、これでも約束だけはちゃんと守る主義なんです。だからあなたたちにも約束して欲しいことがあるんですよぉ〜!」「……何だ?」「……今後一切私たちに関わらないこと、ただそれだけです」「……そんなこと出来るわけがなかろうが!!」「そう言わずにお願いしますよぅ〜?じゃないと私の方としても困ってしまうんですからぁ〜」「……何に困るというのだ?」「それはですねぇ〜?先程から言っているじゃないですか!世界の平和の為ですよぉ〜?それ故に私はここでこうしているわけなんですよ〜?もしもあなた方に約束を守ってくれるというのならば私だって何もしないわけですからね?……どうですか、悪い話では無いはずですよね?」「……良いだろう」「……えっ!?ほ、本当にいいのですか!?嘘偽りは無いですかねぇ〜!?本当の本当に大丈夫ですかねぇ〜!?今更になって後悔なんかしていませんかぁ〜!?」「いいから早く本題に入りやがれッ!!俺はもうこれ以上貴様の相手をするのが面倒になってきたんだよ!!」「おぉ〜怖い怖い!!全くもって恐ろしいものですねぇ〜!そんなに急かさないでくださいよぉ〜?……それでは早速本題に入りましょうかね……っとその前に一つ言い忘れていたことがあります……」「……何だよ、それは……!!」「いえ、大した話ではないんですけれども私が魔王と呼ばれているのには訳がありましてね?それについては今から説明させていただこうと……」「……。」(イライラ)「まぁ、要するにですよ?簡単に言えばですね、魔王っていうのはあくまでも人間たちからの畏怖の念を形にした存在であって実際に私が魔王なわけではないということですね……」「…………??」「う~ん、ちょっと分かりづらかったですかね……?もっと分かりやすく言えば、『魔王』という文字を見て人々が勝手に魔王としてのイメージを作り上げてそれがやがてその者の容姿や性格などの全てに影響されて人々にとって『魔王』という存在が生まれるわけです。……ですが、実際のところそういったイメージというものがそのままその人物そのものを表すわけではありませんからね。だから必ずしも本物の魔王になるというわけではないということなんですが、それでも人々は魔王=邪悪な存在であるという考えを改めようとはしないようで結果的には皆同じような姿になりがちなんですよねぇ……」「……つまりどういうことなんだよッ!!?」「まぁ、簡潔に言ってしまうと人々に悪と恐れられるものはすべからく『魔王』と呼ばれてしまっているということなんですよ……♪」「……」「おやおや、どうかしましたか?……急に黙り込んでしまって……?」「……いや、なんでもない!気にするな!!」「……分かりました! それじゃあ話の続きに戻るとしましょう!実は先ほど私が話したような考えを持っている人たちによって作り出された魔王像こそが私の元の姿でもあるのです……!そしてその元の姿があまりにも禍々しい姿だったため、人々から恐れられてしまい、結果今の『黒炎竜ベルフェゴール』という名前が誕生したというわけであります!そして今ではこのように私の本来の姿を真似た人形のような姿で生活をしていなければいけないほどに私の元の姿は恐れられているのです……!!だからこそ私は今こうやって行動しているのですよ!!さぁ、ここまで聞いてみていかがですか?私の言いたいことは理解していただけましたでしょうか?」「……あぁ、確かにお前の言っていることの意味する内容は理解したつもりだ……」「……そ、それでは一体どういった意味で理解してくださったのでしょうか……!?」「お前がどれだけの悪事を働いてきたのかは分からないが、お前の存在自体で苦しむ人がいたことも事実だ!それに、人々の為にその力を役立てようとしていたのなら、まだ情状酌量の余地はあるだろうが、 そうでない場合は到底許される行為ではないぞッ!」「……あ、あなたは私に騙されていると気づいていないからこそそのように言えるのですよ!?もし真実を知ったとしたらきっとあなたの口からは私に対する罵詈雑言が吐き出されることになるのでしょうけれどもねぇ〜!?」「貴様の方こそいつまでも自分の考えがまかり通ると思って調子に乗るんじゃねぇーよッ!!」「……なっ、何ですってぇ〜!?!?」「……ふんっ、ざまあみやがれ……!」

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-視点:アドル- -三人称視点に切り替え- あれから何とかその場をやり過ごすことに成功した私たちは一団のリーダーを務める男が用意してくれた隠れ家的な宿屋へと向かうことにした!ちなみにあの女神様の計らいなのか何なのかは知らないが私とアイさんはいつの間にか2人用の部屋に案内されていたので今はそこに滞在している最中である!! だがそんな状況にも関わらず、肝心の勇者様御一行は現在絶賛別行動中であり、彼らは帝都に残り、とある作戦を実行するための準備を始めている真っ最中らしいのだ!その為、彼らがこの宿へ来る予定は当面の間無いらしくしばらくは自由時間を満喫できるとのことだったので、これはチャンスとばかりに私に対してある相談を持ちかけてきたのだが、その内容とは……なんと、 その相談事というのがズバリ、女神様が用意したと思われる転生ボーナスについてのことだったのだ!!因みに彼が言うにはあの能力があれば絶対に上手くいく自信があったとのことで実際その通りの結果になっていたことからその有用性を改めて実感していたのだそうだ!! しかしそこで一つの疑問が生じたので彼はなぜそこまで確信を持っていたのか尋ねてみるとその理由がまた意外だったことに驚かされたのだが、どうやら彼の能力は他の仲間と比べると特別性だったらしくその分期待度も高かったそうでそれによってかなり大きな恩恵を受けることができたらしい!……とはいえ、 さすがに最初から全部を把握できたわけではなくあくまで推測の部分が大半を占めていた為、最初の方は半信半疑だったのだとか! でもその後何度も試行を重ねることによって少しずつ確証を得ていきついには女神様の言っていた通りに上手くいくようになったのだと話してくれたのである!それで今回私に協力を仰いだのもそのことについてなのだが果たして具体的にどんな風にすれば良いのか教えて欲しいとのことだった!なので私は、 取り敢えず一度女神様と直接会って話をしてみたらどうだ?と言ってみたところ彼もそれで問題が解決するならそうした方が良いということで納得してくれて無事に解決に至ったのである!それでその後は彼との打ち合わせをしてある程度の流れが決まったところでこの日はお開きとなり、次の日に早速実行に移すことになったのだった!そして翌日、予定通り例の場所で集合した私達は、まずは帝都にある一番高い建物の屋上へと移動して下を見下ろす形で観察を開始した!するとそこには昨日見た覚えのある一団の姿があった!しかも彼らだけでなく他にも多くの冒険者風の人たちがいてそれぞれ思い思いの行動を取っている様子であった!それを見て私達は思った!

(……なるほど。どうやら昨日の彼らの話し合いの内容については正しかったようだな…………はい。私も驚きましたが……まさか本当にこんなに早く行動するなんて思わなかったですね……?えぇ〜。私も流石にここまでとは思っていませんでしたぁ〜うん。俺も正直驚いている……ですがこうして皆さんのおかげでこうして計画通りに行くわけですからね……?やはりあなた方に頼んで正解でしたよ……! では、早速始めてもらってもいいですか?くれぐれも気づかれないようにお願いしますね?……了解しました!』と、そうしてしばらくの間様子を見ていたところ、しばらくして彼らは建物内からぞろぞろと出てきてそのまま門に向かって歩き出したではないか!しかもその様子を見るに明らかに誰かの指示に従って行動しているように見えていて、更によくよく見てみるとその中には見覚えのある顔ぶれが何人も混ざっていることが分かったのだ!なのでもしやと思い近くにいた男にこっそり聞いてみると予想通りの返答を返してきたので私は内心ホッと胸を撫で下ろしたのである!なぜならその男が言うにはここに居る者たちの多くは以前魔王軍の残党と戦った時に戦った者達ばかりだったからである!そうなのだ!この男の話によると彼らは全員が全員あの時に戦ってきた仲間たちばかりだったのだ!!これには流石の私も思わず苦笑いしてしまった!……まぁ、 それだけ女神様が気を利かせてくれたということだろうけどもね?ただその話を聞いてふと気になったことが一つだけあった!それはどうしてわざわざ彼らにこんなことをさせているのかという点だ!いくら戦力不足だからといってここまでする必要はあったのだろうか?……という訳で彼に質問してみると、それについては彼の方がよく分かっていなかった様子で詳しい事情は知らされていないのだという答えしか返ってこなかったのである! それを聞いてガッカリしていた私だったがそれでも何か知っているのではないかと期待していたこともあり残念な気持ちのまましばらく過ごしていたのだが結局最後まで有力な情報は手に入らなかったのであった! ---

-主人公(?)side・終了- ------

「……それでは今から皆様に集まっていただいた理由についての説明を行います。

その前に先に言っておきますがここで話す内容を聞いてもすぐに信用してもらえないかもしれませんしもしかしたら混乱してしまうかもしれないですけれども、これから話すことは全て本当のことであり決して嘘ではありませんのでどうかその点だけは理解しておいて下さい……」「……?何を言い出すのかと思えば急に改まってどうしたのですか!?あなたは私たちに一体何を伝えたくてこのような場を設けたのですか!?」「……いや、まぁそうなんですけどね……。何と言いますかそのぉ〜……?」「……??はっきり言ってくれないと伝わりませんよ!!」「……あっ、はい!分かりました!それなら言わせてもらいますけど……、率直に申し上げましてあなた方はこのまま何もせず黙って指をくわえて見ていますか?……いえ、そんなことは有り得ないはずですよねぇ〜?」「……そ、それはどういうことですかッ!?」「……ですからぁ〜そのままの意味ですよ。あなた方は既に『黒炎竜』の恐ろしさを嫌というほど目にしたはずですよね?それなのにあなた方はまだあれに関わろうと考えている。そればかりかまだ懲りずにもう一度倒そうとしているではありませんか!?そんなの無茶にも程があるというのに……!!いいですか?あれは魔王ですら敵わなかった化け物なのです!!そんな相手にたかが勇者一人で立ち向かってどうなるというのですか?!どうせ返り討ちにあって無駄死にするのが関の山でしょう!!……にもかかわらずあなた達は何も恐れずむしろやる気に満ち溢れているではないですか!!……一体どうしてそんな無謀な考えに至ってしまったのか私にはさっぱり分かりません……!私はこれまで長い間あなた方のことを見守ってきました……!だからこそ思うのです!あなたのような方たちこそが真の勇者なのだと!!……そしてあなた方こそが世界を救う救世主となるべき存在で、私ごとき小物など必要なかったことを今更ながら理解したのですよ……!だからこそ私はこれ以上貴方達を巻き込むつもりはありません!!ですからお願いです!今すぐここから逃げて下さいッ!!」「……ど、どうしちゃったんですか!?いきなりそんなことを言われても困りますよぉ〜!!だって私たちはあなたがいたからこそ今まで頑張ってこれたんですから!!そのあなたにそんなことを言われたら私達が困っちゃうじゃあないですか!?」「……。」「……はぁ、もうこうなったら仕方ないわねぇ〜!それじゃあ皆んなで一斉に突撃するわよ!!ほら、あんた達もぼさっとしてないでさっさと立ちなさい!!」「「は、はいっ!!」」「それでは行きましょうか……!」(……あぁ、遂に来てしまいましたか……)

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第3章終わり 次章へ続く……

次回、第4章開幕 -とある洞窟内-

(さて、今日も今日とて元気にスライム狩りに出かけるとしますかねぇ〜♪)そう思いながら意気揚々と洞窟の入り口に向かう男の姿がある……しかし彼は気づいていないようだが既に彼を狙う影の存在があったようで、その影は次第に大きくなっていきやがてその姿を現した!!その正体とは何と『黒炎竜』ことベルフェゴールさんだったのだ!! 何故そのようなことになったのかと言うと話は前日に遡る……--

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「そ、それじゃあ話を始めさせていただきます……。まずは、お忙しい中わざわざ時間を取っていただきありがとうございます!それと本日はよろしくお願い致します!」

と、そんな挨拶から始まったこの会議には総勢15名ほどの人々が集まっており、その中の一人として私の姿もあったのだ!そして今回の集まりの主旨というのは言うまでもなく『今後についてどうするか?』という話し合いである……要するに女神様より与えられたチート能力をフル活用して世界を征服するための相談をしているというわけだ!そこでまず最初の意見としては『そもそも女神様に貰った能力ってどうやって使うんだよ!?』ということらしく、 それを私に尋ねられたので取り敢えず試しにやってみることにした私は、自分の持つ能力を頭の中で念じてみることにした!するとその直後に私の脳内にはある映像が浮かんできた!そしてその映像の中には、私や勇者たちが魔王討伐の際に戦っていた様子がはっきりと記録されていて、更にそこから推測されることなのだがおそらく私が見ているものが実際に起きた過去の出来事で間違いないのだろうということが何となく分かったのだ!だがそれと同時に一つ疑問が生じたのだが……というのも、実はこの時の記録の映像というのが明らかに時系列を無視していたのだ!しかもそれは、まるでビデオカメラのように一定の間隔を開けて延々と流れ続けているようでもあったのでとても不思議な気分になっていたところだったのだ……。

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