第32話 魔王俺、魔王城を登記する
「……は?」
「このお城を王国に登録した?」
カレーうどん騒ぎの数日後、汚れたメイド服を綺麗に洗濯し、新しい服を買ってくれたガイを許してあげたあたし。
(ちょ、ちょろくないんだからっ!?)
日課のおそーじを終えたあたしとレナ姉がお部屋でのんびりとしていると、やけにウキウキとしたガイが訪ねてきたのだ。
*** ***
「えーっと、確かジール王国の法律では3階建て以上の建物を建てるときは、国に報告する必要があるんだよね?」
伊達眼鏡をかけたレナが
「……そうなの?」
「も~、こないだの授業で習ったでしょ?」
「うっ、居眠りしてたかも」
そう!
次に俺様がひねり出した虐待は、勉強虐待である!!
ここは平和なGランク世界。
食べることにしか興味がないレナノナは、勉強などしたことがないはずだ。
そのほわほわお気楽な頭に大量の知識をぶっこんでやることにしたのだ!
魔界もそうだが、世界ってのは深く知れば知るほど汚く理不尽なことも多い。
穢れを知らぬコイツらの頭を、大量の知識でどす黒く塗りつぶしてやるぜ!!
最初そう宣言した時、ノナなどは……。
「ホント!? あたし、学校に憧れてたから……とっても楽しみね!」
などど目をキラキラさせて強がっていたが、体術や剣術の授業はともかく、座学の授業になると居眠りをするという反抗的な態度を取ってきやがる。
くくっ、さすが俺の見込んだ女だぜ。
その図太い反骨精神に免じてもっと知識を詰め込んでやる。
せいぜい将来に生かすがいい!!
コイツは自分の未来の選択肢が多すぎて頭を抱えることになるのだ。
いい気味だ。
「ねえねえガイおにーさん!
次はわたし、格闘技を勉強してみたい!」
「おっ、いいじゃねぇか!」
妹とは逆に勉強に意欲的なのがレナだ。
コイツは俺の勉強虐待を、反抗せず受け流す作戦にしたらしい。
これも一つの対策だろう……よし、ふわふわレナに扱いきれないだろうすげぇ技を授けてやる。
おのれの力に慄くがいいぜぇ!
「やったぁ!」
嬉しそうにぴょんっと飛び上がるレナ。
……おっと、だいぶ話がそれてしまったが、ようやく完成なった俺の魔王城。
その立地と使用目的。
敷地面積と不動産評価額を1ミリの狂いもなく算出し、ジール王国とやらの税務局に登録してやったぜ!
俺がこの世界を征服した後の事を考えても重要な手続きである。
支配者である俺様がきっちり法律を守ることで、領民共の模範になるのだ!
「ま、魔王様も法律を守っているのか」
「くそっ! それじゃ俺たちが税金をごまかすのは難しいか!」
という感じで、あくどい仕事で金を稼いでいる連中も悪のトップである俺様が法律を守っているなら従うという寸法よ。
くくっ、残念だったな。
財政赤字を出す魔王はB級だとオヤジも言っていたしな!!
それに、急に降ってきた大量の事務作業に悶絶する職員共の姿が浮かぶぜ。
いい気味だ!
もちろん固定資産税は毎年払うぜ?
予定しない莫大な税収のせいで (適度な)インフレに苦しむがいい!!
「……今回の虐待は理解が難しいわね」
「ノナちゃんがちゃんと勉強しないからです!
食らえ、教科書アタック!! 政治経済の教科書、37ページをひらけ~!」
「おお、いいじゃねえかレナ! 午後の仕事は全部キャンセルだ!
ノナは今から勉強漬けだぜ!!」
「らじゃーですおにーさん!!」
どたんどたん!
「ぎゃ~~~っ!?」
魔王城の主塔から賑やかな音が響く。
「ふふっ、またやってるわね」
「すっかり村の風物詩だな」
中庭のオープンテラスで寛いでいた村人たちは、ほっこりとした表情で主塔を見上げる。
今日もレンド村は平和?であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます