第110話 訪問者
「あはははッ! 絶対に逃がさないからね。ちょっと痛いかも知れないけど、すぐに気持ち良く天国に行けるからね♡」
「はあっ! はぁ!」
美化は恐怖で呼吸が苦しくなる。ここで殺されて犯される。しかも、友達だと思っていた女の子に。
ここに来るまで楽しいことしか考えていなかった。井戸上ミサが自分のことを心配する数々の言葉の意味が、今なら嫌という程に理解できる。
「下手に抵抗をすると苦しいよ。僕はね、気持ち良く死ねる殺し方を勉強したんだ。だから……」
その時!
ピンポー……ビビビビィッ!!
壊れたインターホンが鳴ったッ!
「ちっ! 誰だよっ!? いいとこなのにさあっ!!」
チラッと影山映莉の視線が美化から出入り口の方に
『今しかないッ!』
美化は手に持っていた将棋盤を思い切り影山映莉の顔面に投げつけたッ!
ガンッ!!
「痛っ!!」
目を
「わぁぁああ──────ッ!」
泣きそうな悲鳴をあげて玄関へと走るッ!
「待てよぉおっ!!」
すかさず影山映莉も部屋を飛び出して美化を追うッ!!
「だっ、誰かいるっ!!」
靴もはかずに美化は玄関を開けたッ!
ガチャンッッ!!
すると、そこに立っていたのは椿原是露だったっ!
「おっと! あっ、美化ちゃん♡ どしたの? 慌てちゃって」
「はぁ! はぁ! な、なんでっ!?
先生がっ……なんでここにいるのっ!? で、でもっ、逃げないとっ!!」
「えっ? なになに? なにがっ?」
是露は全く事態が飲み込めなかったが、その3秒後、美化の慌てふためく理由が分かった。
「はいはい。そういうことね」
サバイバルナイフを持った丸坊主の影山映莉。その目は異常者のそれだった。それに反して笑顔はとても可愛かった。
「あれ? 椿原先生、こんにちは♡ なんで私のうちに先生が? 超不思議なんですど。イミフですぅ!」
美化は是露の後ろに隠れて震えていた。その美化の尋常じゃない怯え方と、変貌した影山映莉の姿。
只事ではないと是露は警戒をさらに強める。
「で、でも、なんで、ぜ、是露先生がっ、こ、こ、ここにっ!?」
美化は唇を震わせながら聞いた。
「宮古田さんから連絡が入ってね」
「カ、カルチェさんが?」
「影山さんの家の場所を教えるから様子を見てきて欲しいって。昼休みになったから来てみたんだけど。まさかこんなことになってるとは思わなかった。危なかったね、美化ちゃん」
「た、助かったあ……」
美化は完全に体の力が抜けた。ずっと気合いだけで影山映莉と対峙していたのだから無理もない。
「今に宮古田さんたち来る。なんか車の調子が悪いみたいでね。だから先に俺に行くように連絡が入ったんだ。宮古田さんもこの状況には驚くな」
それを聞いていた影山映莉は、ヤヴァい瞳でサバイバルナイフを見つめながら、静かに怒りを膨らませていた。
「ふ〜ん。宮古田カルチェも来るんだ。みーちゃん、いちいち僕の家の場所を教えたの? でもどうやって? まぁ、そんなことはもう、どうでもいいことなんだけどね……」
ザッ
影山映莉は靴を履き、ゆっくりと玄関から外へ出た。
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