第81話 イケメンの義務
あまてらす鍼灸整骨院。治療師イケメン佐藤こと佐藤
初体験は小学5年の夏休み。相手は友達のお姉さん。高校1年生だった。
勉強も運動もトップクラス。
校内では芸能界入りを噂される程の人気ぶりだった。もちろんファンクラブも勝手に作られていた。
だが、彼は学生時代、芸能界入りどころか特定の彼女も作りはしなかった。周囲が勝手にちやほやしているだけで、彼は自分を見失わなかったのだ。
『完全なるナルシスト』
彼、佐藤久遠は女よりも自分が好きだった。自分よりも美しい女以外と付きあう気はなかったのだ。
『それ以外の女は単なる遊びで抱いてやる。オナニーの延長に過ぎない。そこに恋心など存在はしない』
これが佐藤久遠の女に対するスタンスであった。付き合うレベル、いわゆる自分より美しいと思える女には、今まで出会ったことがなかったのである。
そんなイケメン佐藤だったが、実は影山映莉には自分を超える美しさを感じていたのだった。
「で、どうしたのかな?」
佐藤は心配そうに美化に声をかけた。
「あのっ、昨日って、影山、影山映莉って、来ましたか?」
「影山さん? 来てくれたよ! 僕が押させてもらったけど」
(映莉ちゃん。顔も可愛いけど体つきがやたらエロいんだよな♡)
「で、それだけですか?」
「ん? それだけ?」
(なにが言いたいのかな? 美化ちゃんは?)
佐藤は首を傾げた。
「えっと、告白とか、されてないです? 影山に?」
「告白? 影山さんに? ははっ。されてたら嬉しいけど、まだ、されてないなあ」
(そういうことか! 映莉ちゃん、俺のこと好きなの? マジで? や、やりてえっ! あの美少女と♡)
「やっぱりそうですか……」
「やっぱり?」
「いえっ、ありがとうございました。それが聞きたかっただけなので!」
「そうなんだ。了解」
「すみませんでしたー! 失礼しまーす!」
美化は自転車に乗って佐藤に謝りながら頭を下げて帰って行った。
「気をつけてねー!」
佐藤は爽やかな笑顔で美化を見送った。
「へっ、へへへ!」
(2人とも僕のことが好きなんだね。あんまり僕のことでもめてほしくないなぁ。なんなら、2人まとめて相手しちゃってもいいよぉ♡ そうっ! それがイケメンの宿命、義務なのだから! はあ♡ 美化ちゃんも少しぽっちゃりだけど顔は可愛いしな♡ 3Pしてぇ〜!)
これがイケメンの裏の顔。
そして、外の2人を見て是露はすこーしだけ嫉妬していた。
「はあっ! はぁっ!」
(任務完了。結局、予想通り。影山は誰にも告ってないっ! この件と鳩殺し! どう説明すんの? 影山!)
家に向かう自転車のスピードは整骨院に行く時よりも、だいぶ早かった。帰宅し、遅くなってしまった夕飯を食べる。
「どうよ? 具合は?」
母が美化の頭にポンッと手を置いて聞いてきた。
「あげぽよ」
「あっそう。よかったね」
「肩、だいぶヤバかったけど」
「またゲーム夜中までやってるわけじゃあないわよねえ?」
「ゲームばかりではないのですよ。私が肩こる原因はさ」
「ふ〜ん。JKも大変なわけだ」
「そーゆーことっ!」
いろんな思いを込めてそう言うと、夕飯の焼きうどんをなんとか全部胃に収め、こたつに寝っ転がった。
(や、やばっ、めちゃ眠く……マッサージで血行がよく……なったか……ら……だ……)
こたつの優しいぬくもりに抱かれ、美化はそのまま眠った。
「ヤバい、全然返事が来ないっ」
その頃、ちょっとやきもちを焼いた内容をLINEしてしまった是露は、美化からの返事がこない事に焦っていた。
「年上のくせに……なんてダサい事をしてしまったんだぁ! うぅ」
この後、是露は爆睡の美化に……4時間、放置されるのであった。
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