第77話 全部、嘘?

 暫く公園のベンチでぐったりしていた美化だったが、家に帰り、夕食とお風呂を済ませた。



 そして、ZERO WORLDの電源を入れて、シューティングゲームの髑髏どくろで敵を撃ちまくってストレス解消する事にした。



 ビシュン! ビシュン!


 ビシュン! ビシュン! 


 バババババババババンッ!!

 

 ドーンッ!!

 

「もうっ! もうっ! もうっ! バカッ! バカッ! バカッ!」


 朝、あれだけ意気込んでいたのに、何も鳩殺しの話はできなかった。完全に影山映莉のペースに飲み込まれてしまった。


(イライラするッ! なんかイライラするッ!)


 そんな気持ちのまま将棋の勉強をしている時だった。


 影山映莉からの連絡が入った。



 美化はスマホを手に取った。



[今回は絶対大丈夫だと思ったのに。ダメでした。残念。でも心配しないでね。みーちゃんが羨ましいよ]


「影山……佐藤先生にもフラれちゃったか……」


 不思議と驚きはなかった。


 なんとなく、うまくいかないんじゃないかと思っていのだ。美化はとりあえずの返事を送る。


[佐藤先生も、見る目がないな。なんでダメだった? 彼女いるって?]ピコッ☆


 


 ピコッ☆[彼女はいないんだけど好きな人がいるんだって。誰だろうね。いいなぁ……]



「佐藤先生、好きな人か……」

(影山の好きになった人……1人目は冴えないオタク系の望月先輩。2人目はクラスメイトの万亀君……そして、3人目、あまてらす鍼灸整骨院治療師、イケメン佐藤……仮に他に好きな人がいてもだよ? あの美少女が告白してきたら少しは心が揺らがないわけ? どゆことっ!? どんな気持ちであのパーフェクトな影山映莉を振るわけっ!? 頭おかしくないっ!?)


 友の恋の3連敗……美化は男達の神経が分からなかった。かわいい影山映莉を振る要因が何か他にあったのか?美化は確かめたくなった。


(影山に気づかれないように全員に聞いちゃうもんね……! 鳩殺しの件はその後……別にビビってるわけじゃないしっ!)






 美化よ。君は決して臆病者ではない。誰だって友達に『あの鳩殺しやったのってあんたでしょ?』なんて問い詰める事は容易ではないのだから。











 翌日。



 美化は部活を休み校門にいた。


「まずは最初に影山を振った望月先輩から……」

(確か影山の話では、望月先輩は家が近いから歩き通学だったはず!)







 5分程すると、のそのそ歩いきた男子生徒。その風貌、髪はサラサラのマッシュルームカット。銀縁の眼鏡。鼻の横のほくろが少し目立っている


(キタキタ───! 望月先輩に間違いなしッ!)


 難しい事を考えているような、なんにも考えてないような、なんとも言えない表情をしている。


 体つきは「運動はしていません」といった感じだ。


(あれで影山を振るとはッ! 許せんッ! では突撃ッ!!)


 美化は小走りで望月先輩に近づいて行った。


「すみません! 望月先輩……ですよね?」


「えっ? 望月もちづききょう四郎しろうは間違いなく拙者せっしゃだが。何か用かな? プリティーガール」


(望月京四郎? 無駄にカッコいい名前だな。いやいや、今この人をディスってる場合じゃないんだよ)


「あのぉ〜望月先輩ってぇ去年の夏に影山映莉って子に告られて、そして振っちゃったじゃないですかぁ? 是非ともその時の気持ちをですね……」


 美化ができるだけかわいく話している最中に、望月京四郎は不思議そうな顔で言った。


「影山映莉? 確か……2年のかわいこちゃんだよね? その影山ちゃんが拙者に告白? ないないないないないないっ!」


「ないない……? ええっ!?」

(い、いきなり何を言い出すわけっ? 京四郎はボケてんの? ボケてるよ。うん)


「先輩ー! ちゃんと思い出して下さいってばぁ〜もうっ」




「え? だって、されてたら、拙者……絶対に付き合うしっ!」




 望月京四郎のその一言を聞いて美化はハッとした。


「そ、そう……ですよ……ね」


「えっ? なんなんだよぉ。話はそれだけ? 君が拙者に告白してくれるわけではないのですな?」


「あっ、はい。ちゃいます……」


「な、な、なんだ……ホントに違うのか……がくしっ! じゃあ、拙者は帰るとしませう」


「あ、ありがとう……ございました」


 望月京四郎は何かをぶつぶつ言いながら帰って行った。


 美化は混乱していた。


(影山が告白してないっ? どおゆう事っ!? な、なん、なんでっ!?)


 去年の夏には望月先輩……


 今年に入ってからは万亀君……



(恋の相談……あれはなんだったの? まさかっ……万亀君もっ!? 嘘ッ!?)


 美化は卓球部の万亀君に会うべく、体育館へ走った。


「勘弁してよッ! 影山ッ!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る