第64話 ヤバまる
美化は是露にメッセージ送り、返事を待つのみだった。
「是露先生の推しメン……
美化は桜のKIRIKABUの新しいグッズが発売されれば必ず購入していた。
中には物が届くまで、どのメンバーのグッズが入っているのか分からない、といったサプライズ方式のグッズもあるのだ。
美化の推しメン
もちろんその中に、是露の推しメン
サプライズ方式のグッズの中にはたまにサイン入りの物があるので、ファンは中身が分からなくてもどうしても買ってしまうのだ。
シュパッ!
「ジャーンっ! 邪羅様のサイン入りチェキじゃ♡」
美化はそれを引き出しから取り出した。
押しメンではないものの、桜のKIRIKABUのメンバーは全員好きなので、弾劾邪羅のサイン入りチェキも、美化にとって宝物であることに変わりはない。
「是露先生にならあげても惜しくないなりっ! 邪羅愛すごいし。愛朱たんのと交換してくれるみたいだし♡」
少なくても是露からの返信は、午前の診療が終わる12時30分以降。それまでまだ時間がある。
「返事がいつ来るか分からないし、アニメでも見ようっと」
美化は見れずに溜まっていた深夜アニメ『チェンソーマン』を見始めた。
「やばい……最高っ。神回だわ!」
「えーっ!? そりゃないよー!」
「あーよかった……」
「どうなんの! これ〜?」
美化はアニメを見ながら独り言を言うタイプである。
1話、2話、3話……
続けざまに見ていると、時刻は12時30分になろうとしていた。
「お昼……食べよっ!」
1階に降り、祖母が作ってくれてあった朝食を温め、お昼ご飯として頂く事にした。
「今朝は豚汁だったんだ♡」
バッチリ温めていただくことにした。
そして、ガスレンジの火を止める。
「うわぁ♡ おいしそぉ〜!」
本来、朝食だった豚汁とご飯をテーブルにのせ、いつもの席に腰かけた。
するとテレビから素人の『のど自慢』番組が聞こえてきた。
「好きだね〜おばあちゃん。のど自慢」
「私も本当は出てみたいけど、絶対緊張してうまく歌えないからね〜。見てるだけで満足よ。出ている気分は味わえるから」
祖母は歌がうまかった。
それは近所のカラオケに一緒に行ったこともあるのでよく知っていた。
「豚汁おいし……」
(是露先生もいい声だし、歌うまそうだよね♡ いやいや……今はそれどころではないのだ)
美化は昼食を済ませ、祖母と一緒にのど自慢を見てから部屋に戻った。
「返事来てるかなぁ〜」
ゆっくりスマホを見ると……
「あっ! 来てるしっ!」
是露からの返事が来ていた。
「なになに……?」
[明日は出かける予定があるんだけど、その前でよければ俺も美化ちゃんに会いたいです]
「よし……会えるね……」
[何時ごろ行っていいですか?]ピコッ☆
ピコッ☆[朝の10時頃でもいいかなぁ?]
(10時か。何の用事があるんだろう? そっちの方が気になるし……女? いやいや、そんなはずない!……よね?)
美化は是露の用事が非常に気にはなったが、そこは聞かない事に決めた。それが大人というものだと思ったからだった。
[大丈夫です。じゃぁ明日10時に伺います]ピコッ☆
ピコッ☆[わかった♪待ってるね!]
「決まった……決まってしまった。明日の10時……っ!」
[午後のお仕事も頑張ってくださいね!]ピコッ☆
ピコッ☆[ありがとう!明日を楽しみにがんばります♪」
「任務完了! おいおいっ……任務ってっ! 私はカルチェ軍団のエージェントじゃないっての! もうっ!」
自分で自分にツッコミを入れてベッドに倒れ込んだ。
「はあ……明日、是露先生に……これ今、世間で騒がれてる品種改良大麻……Zなんじゃないですか? なんて聞くの? まじでヤバまるなんだけど」
『好きな人に会えるのに怖い』
こんな感覚できれば味わいたくない。しかも初恋で。
「それ聞いた途端、是露先生が豹変したらどうする? しかもカルチェさん嘘をつくかもしれないから葉っぱ取って来いって……普通に本当のZだったら、それを少し持ってるだけでも確か犯罪なんじゃないの? 大麻取締法違反的な? もう無理無理無理ッ! 無理だってばっ……ヤバまる過ぎだよ……」
ちなみに、美化が前からよく使用しているJK用語『ヤバまる』だが『ヤバさ極まる』の略なのであーる。
「ヤバまる……ヤバま……る」
美化は明日の事を考えすぎて、ぐったりと疲れてしまった。
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