第63話 美化始動

「ごめんね〜! おばあちゃんっ」


 帰宅してすぐに美化は祖母に謝った。


「あ〜、おかえり。しょうがないよ、お腹は?」


「あー……友達とハンバーガー食べてきたから、その朝ご飯はお昼にありがたく頂きます」


「そう」


 美化は2階の部屋に行き、コートのポケットから『自分』と『影山映莉』のスマホを取り出して机の上に置いた。



 コト……



 よく見ると影山映莉のキャラメル色のスマホカバーには、赤いすじがついていた。


「鳩の血なわけ……?」


 美しい影山映莉が使っていたスマホ。美化にとっても愛着のあった可愛いスマホ。それが今、禍々まがまがしいオーラをまとい机に横たわっている。


「同じものには見えんし……」


 それが正直な感想だった。


『物にも魂がある』


 なんて言うが、この影山映莉のスマホからは邪念、怨念おんねん、そのたぐいのものが霊感など微塵みじんもないはずの美化にすら感じ取れたのだ。


「言っちゃ悪いけど、よくミサさんは平気な顔してこれを『コレクション』とか言っていられるよね……私はちょっとこわいよ」


 改めて井戸上いどがみミサの変人っぶりに感心した。


「よしっ! まずは是露先生に明日会えるか確認しなきゃ……」


 コートを脱ぎ、自分のスマホを手に取って美化はベッドに横になった。


「ふぅっ」


 そして息を吐き、是露にメッセージを送った。


[是露先生お疲れ様です。もし都合と体調が悪くなければ、明日会えませんか?この前みたいに長居はしませんのでよければ是露先生の家で会いたいです。邪羅様のグッズ、私が持っているより是露先生にあげたほうがいいな♪と思うものがあったので会えるなら持っていきます♪ではお返事お待ちしています♡]


「Zじゃ……ないよね、先生」



 是露の返事や如何いかに?

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