第42話 スーパーKITAURA

 美化の家からスーパーKITAURAは自転車でも10分ほど。このあたりの住人の大半はお世話になっている老舗スーパー。


 それがKITAURAである。


 お値打ち価格で品数が豊富。スーパー内で作られているお惣菜やパンは大人気で、それこそ今日のような休日にはあっという間に売り切れてしまう商品も多数ある。


 KITAURAへは先月、母とも来ている。その時の美化のお目当てはKITAURAのカレーパン。ラスト1個をギリギリでゲットできた。


「KITAURAで待ち合わせって事は、是露先生……買い物でもしてるのかなぁ?」

(料理とかもうまかったりしてっ♡「晩ご飯食べてく?」みたいなっ♡)


 とか、考えながら着々とKITAURAへと近づいていく。


(本当にどんな家……どんな部屋に住んでるんだろう……?)


 美化の妄想の中での是露の部屋は、モノトーンで統一された家具、大きいソファにガラスのローテーブル。


 並ぶ世代別のゲーム機。50インチはあるテレビ。そして、大人エロい香りがただよう。そんな感じだった。


(ゲームに疲れたら、おやつにかわいいケーキと紅茶を出してくれて♡……う〜ん、かっこよさげ♡)


 美化の期待は高まるばかり。


 ついに、スーパーKITAURAが見えてきた。少しスピードを落として徐々に店の正面にまわる。


「ついに来たし……」


 美化は入り口に目を向けた。


 するとそこには、グレーのダウンに黒のズボン。白いスニーカーを履いて、荷物の入った黒のマイバッグを持った男性が立っていた。


「あっ、是露先生だっ♡」


 美化は自転車から降りた。


 そして自転車を押しながら、ゆっくり是露に向かって歩いていく。


 すると、


「あっ! 渕山さんっ! どうも!」


 美化に気づいた椿原是露が声をかけてきた。


「ど〜も〜! 昨日ぶりです♪」


 美化は自然とすっごい作り笑顔になってる自分に、びっくりするのと同時になんか気持ち悪かった。


(こんな顔の筋肉使った事ないしっ! やぱし緊張する……!)


「じゃあ、行きましょう。俺も自転車なんでっ」


 そう言って是露は駐輪スペースをゆびさしてから歩き出した。


「はいっ! 自転車って事は先生のお家も近所なんですねっ!」


「えぇ。4年ぐらい前ですかね……引っ越してきたんですよ……」


「そうなんですか」


「よっと!」


 是露は自転車のカゴにマイバッグを入れてから、美化を見た。


「なんか……いきなり家に誘っちゃう形になってしまって……嫌じゃなかったかな……?」


「えっ……?」


「俺も、残ネルでつい、盛り上がっちゃって……嬉しくなっちゃって……だから……」


「嫌じゃないです! 大丈夫ですっ。本当に来たくて来ましたよ。私」


「ほんと? よかった〜」


 是露は安心して笑顔になった。


(なにこの人! めっちゃいい人じゃん! そして、笑顔もかわいい……♡)


「よしっ! じゃあ、着いて来てね! 10分ぐらいで着くから!」


「はぁ〜い♪」


 こうして2人は是露の家に向かって出発した。

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