第28話 宇宙
美化は帰宅し部屋に入ると、ZERO WORLDにささった残酷のネル・フィードのカセットをじっと見つめた。
「はぁ」
(人生たった『1日』で変わる。たった『一瞬』で変わる。『出会い』で変わる。1年以上前から残酷のネル・フィードを手に入れる為にしてきたことは、是露先生に出会う為にしてきたことだったと今では思う)
美化は残酷のネル・フィードのカセットをZERO WORLDから抜き、ゲームソフトのBOXにしまうのではなく、机の上に飾った。
「ありがとう。楽しかったよ」
自分と是露を引き寄せてくれた残ネルのカセットが、美化はとても愛しく見えた。
「ふう」
(バレンタインチョコか。マジで父ちゃんにしかあげたことない。影山はリサーチするとか言ってたけど、あんまり気合いが入ってるのを渡すのは正直恥ずい。好きなのバレちゃうし)
夕食を済ませ、将棋の勉強をしていると影山映莉からLINEが入った。
[街中に最近できたチョコ専門店を発見! そこで探すよー]
「え?」
(チョコ専門店? 今なんて女子だらけのはず。気が重い。とりあえず返事しとこ)
[わかった。ありがと影山!]ピコッ☆
ピコッ☆[じゃあ、明日13時に駅でいい?]
[OK!]ピコッ☆
あっさり影山とチョコを買いに行くことが決定してしまった。
「これが『まな板の上の恋』ってヤツか……」
まな板の上の『恋』ではなく『
翌日、最寄り駅に美化到着。
時刻は13時になろうとしていた。
「おまたせっ!」
5分程して影山がやってきた。
「じゃあ、行こっ!」
「お願いします。影山さん』
ペコリッ
街中へは最寄り駅から25分。電車に乗り座席に座ると、影山が話し始めた。
「そのチョコ専門店『ユニヴェール』って名前なの。種類が豊富で、すごくおいしいって評判みたいっ」
「ゆ、ゆにべーる?」
「フランス語で『宇宙』って意味らしいよ。宇宙の星みたいにキラキラでかわいいチョコが沢山あるんだろうね」
「なるほど」
「私も自分用に買うよ」
「チョコって、おいしいもんね」
「だから、あげたら絶対喜んでくれるよ。椿原先生」
「だといいんだけど」
「みーちゃんからチョコ貰って喜ばない男はいないってばっ!」
「そ、そう?」
「ちなみに椿原先生って何歳ぐらいなの?」
「25から30の間ぐらいかなぁ?」
「おおっ。結構上だ」
「イケメン佐藤よりは上に見えた」
「例のイケメンの佐藤先生は20代前半ってわけね。早く見てみたいな。2人ともっ」
「マッサージはホント神だよ。影山は佐藤先生指名してもいいかもねっ!」
「神。それは楽しみですね」
そんな話をしながらユニヴェールのホームページを見ていると、あっという間に終点の駅に到着した。
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