第23話 是露先生との残ネルトーク

「じゃあ、奥のベッドいきますね」


 伏し目がちな椿原是露を見て、美化は一気に不安になった。


「はい……」

(いきなり指名してキモがられたJKがいたんですよ〜。なぁーにー? やっちまったなっ!)


(いきなり指名してキモがられたJKがいたんですよ〜。なぁーにー? やっちまったなっ!) 


(いきなり指名してキモがられたJKがいたんですよ〜。なぁーにー? やっちまったなっ!)


 マッサージのベッドに向かう美化の頭の中では、哀れな自分をネタにしているクールポコがループしていた。


 そしてそのまま、是露にうながされ、ベッドにうつ伏せに寝る。


 ファサ……


 マッサージ用の大きなタオルが美化にかけられた。


 そのタオルからは、より濃いblack holeの香りが漂っていた。


「どう? 肩の具合? 少しはよくなったのかな?」


 是露は自然に質問をしながらマッサージを始めた。美化もクールポコを消去して会話に集中する事にした。


「はい。すごくよくなって、でもゲームよくするんで定期的に診てもらおうと思いまして」


「うん、そうね! いい心がけですよ。あはははっ!」


「あは……」

(笑った? 大丈夫? あたしキモがられてない?)


「でも、それなら指名、佐藤先生じゃなくてよかったの? いきなり自分の指名になってたから間違えてるのかと思ったよ」


 是露はふくらはぎを押さえながら言った。


(是露せんせっ! ナイスふり! 今、言うしかないっ!!)


「あの、私ゲームやるって言ったじゃないですか?」


「ええ、えぇ」


「で、最近やってたのが、残酷のネル・フィードでして。はい」


「えぇー!? 渕山さんも残ネルやってんのー!? 意外すぎっ!」


 是露の声のトーンが上がった。


「で、前回来た時に、先生が患者さんと残ネルの話をしてるのを聞いてしまいまして。なかなか残ネルの話ができる人なんていないので、つい、椿原先生を指名してしまいました次第であります。はい」


「そういう事かー。してたね、残ネルの話! それでね、ははっ。納得!」


 マッサージの手を休める事なく、是露は楽しげに答えた。


(おー! 超テンション上がってる! やっぱりそうですよねっ! 残ネルはテンション上がりますよねっ!? 是露先生っ!)


「実は私、昨日クリアしたんですっ!」


「おー! すごいっ! 残ネルは隠れた名作だけど、ゲームバランスという点で多少 難があるから、クリアは相当がんばらないとできないからねっ!」


「がんばりました!」

(さすが、分かってらっしゃる!)


「最後の方ヤヴァいよね?」


「はい。それはもう鬼畜でしたよ」


「自分も今レベル上げて地底魔城に行くとこなんだ。渕山さんはレベルいくつでクリアした?」


「レベル97です。それでもギリギリでー、信じられなかったですよ」


「レベル97でギリギリ?」


「はい。でしたよ」


「んー?」


 是露はマッサージの手を止め、すごく不思議そうな声を出した。

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