第21話 宮古田カルチェ
チュンチュン
チュン、チュン
翌朝。モーニングルーティーンを終え1階へ。
「あ、おはよう。美化」
「おはようございます。お婆様」
「なによそれっ?」
祖母は味噌汁をよそいながらニッコリ笑った。
「あははっ!」
「どうしたの? ご機嫌ねー」
「別に。今朝の味噌汁なーに?」
「豆腐と
「わお。最強タッグ♡」
ついに
「ふぅ〜……ずずっ、味噌汁うまーっ!」
もぐっ、もぐっ!
「たまごやき、うまーっ!」
朝ご飯がいつもよりおいしい。もはや吸う空気すらおいしい。
楽しみがあるというのは、こんなにも日常が輝いてしまうのかと久しぶりに美化は感じていた。
「いってきまーす!」
今朝は割と寒かったが、その寒さを跳ね除けるほどに体は熱かった。
「気味の〜悪い〜念仏みたいな〜♪」
最近お気に入りの歌まで口ずさんでしまう。向かい風もなんのその。信号も全部青。でも、今朝は影山映莉の姿を見ることはなかった。
授業も真面目に受けて、部活は月曜日オフ。美化はあまてらす鍼灸整骨院へと自転車を走らせていた。
「予約あいてるかなー」
ここにきて朝の楽しい気分よりも緊張の方が少し増してきていた。
「はぁー」
(うまく話せるかな? そもそもJKなんかとまともに話してくれるのかな? 適当にあしらわれたりしないかな?)
自転車をこぐ足の力が弱まる。
向かい風が「行くな」と言ってる気がする。でも美化はそんな不安に負けるもんかと再びペダルに力を込める。
「うんしょ! うんしょ!」
整骨院が見えてきた。それと同時に風向きが変わり、追い風が美化の背中を強く押した。
ビューウウウッ!
キイ!
「つ、着いちゃった……」
駐車場には車が3台止まっていた。
駐輪スペースに自転車を止め、鍵をかける。ふぅっと息と一緒に緊張も吐き出した。いざ院内へ。
「こんにちは。あっ! この前の」
受付のお姉さんは美化を覚えていた。
「はい。こんにちは」
「指名するって言ってたもんね!」
「はい、椿原先生で」
「じゃあ、ここに名前で、こっちに椿原先生って書いてね〜」
「はい!」
名前を書きながら予約表をよく見ると、自分の前に1人、
(
「マッサージお待ち頂く間に電気かけますので、中にどうぞー」
「は、はい……」
なんとも言えない残り香の中を治療室に向かう。
「こんにちはー!」
先生たちの一斉の挨拶。美化は会釈をしてカーテンのあるベッドへ。
「やっぱり首と肩?」
「はい。だいぶよくはなったんですけど」
「じゃあ、付けますね」
吸盤が美化の首肩まわりに付けられ、電気が流れた。
「あっ、そのぐらいでOKです」
「は〜い。じゃあ、また楽にしてて下さいね」
お姉さんはカーテンを閉めて受付に戻って行った。美化は椿原是露の会話に耳を傾けた。
「宮古田さん、この香水は初めてじゃないっすか?」
「分かるぅ〜? 新作の香水に変えたの!
(げろげろ! やっぱりこないだの香水女じゃん!!)
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