第19話 ネル・フィードの本性


 聖なる神の化身『ネル・フィード』



 これまで行く先々の教会などでセーブする時に登場していた可憐かれんな彼女であったが、こんなおぞましい地底魔城で現れると、逆に不気味に感じる。


【私がここにいるのは冒険をセーブしてもらう為です。最後の戦いの、前にね……】


「それはありがたいんだけど、本当にあなたがラスボスなの? ネル・フィード」


 キュピーン☆


 セーブ完了の音がした。


 すると、画面上の骸骨キャラ、バミューダがネル・フィードに近づいた。


【ネル・フィード! 頼む! 人間、悪魔、そして神。うまく折り合いをつけないか?】


「バミューダちゃん、人格者やわ♡」


【あ──っはっはっはっはっ!】


【 悪魔風情ふぜいが私に話しかけるんじゃないよっ!】


【貴様らなど食えもしないその辺の石ころと同等、それ以下の存在に過ぎない!】


【じわじわと苦しめながらこの世から蒸発させてやる!】


「ヤバいヤバい! ネルちゃん人格変わっちゃってんじゃん! マジでヤバまる!」


【お前はこの場に不要だ……】


 ネル・フィードがバミューダに向け手をかざす。


【ごきげんよう】


 そう言うと、ネル・フィードのてのひらから赤黒い光が出て、バミューダを貫いた。


 ビッ!!


【ぎゃあああっ───!!】


「あっ、バミューダちゃんッ!!」


 美化は大一番を前に深呼吸をし、心を落ち着かせた。それと同時に強い怒りが込み上げる。


「許せないっ! 罪のない邪忍に続き、人格者のバミューダちゃんまでッ! ネル・フィード、お前はこの勇者ミケが必ず倒すっ!」


 バッ! 


 ビシッ!


 美化は立ち上がりポーズを決めた。


 みなさんお気づきの通り、美化は完全にゲームに入り込むタイプである。ちょっとイタい女子高生なのだ。


【さあ、勇者ミケ】


【果たしてあなたのような人間を超越ちょうえつした人間とはどのような味なのでしょうか?】


【もう人間をしょくす事での私の様々な能力の向上は上限を迎えたようです】


【とても素晴らしい高揚感こうようかんを得る事ができました】


【非力だった私が悪魔の王を仕留めるに至った……】


【さっさと食えばよかった……】


【人間の信仰から得られる力など、ごくわずかに過ぎなかった!】


【やっと邪魔でみにくく不愉快な悪魔どもを痛ぶりながら消す事ができる!】


【役目を終えた人間たちは、新世界で私がさらにおいしく食べられるように『品種改良』してあげますよ……】


 ゴクッ


 美化は唾を飲んだ。


【それでは………………】


【いっただっきま─────す!!】


 画面は戦闘に突入した!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る